姉弟英雄の伝説
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自分が目覚めようとしている事だけは分かった。
しかし覚醒を拒否する頭は痛むばかりで、眼前には闇が広がるのみ。
やがて何とか目を覚ましたマキアートはそこが見慣れない場所と言う事に気付く。
所々崩れているが立派な建物。何かの遺跡のように思えた。
「気が付いたか? 姉貴」
「アイク……」
側には弟のアイクが居て安心しホッと息を吐いた。
しかし彼の隣には見知らぬ少年の姿。
青緑の髪をした幼さの残る少年は、気が付いて良かった、と安堵の息を漏らす。
誰、と尋ねる言葉も出ずに弟の顔を見ると、教えてくれた。
「姉貴、こいつはニルスという名らしい。俺達はこの遺跡に倒れていたんだと」
「遺跡……みたいね、確かに。テリウスにこんな場所があったなんて」
「それが、ここはテリウス大陸じゃないらしいんだ」
「えっ……!?」
「ここはエレブっていう大陸なんだ。マキアートさん達は違う大陸から来たんだよね」
少年、ニルスが明るい顔をして告げる。
何だか訳が分からない。
テリウス以外に大陸など残っていたのだろうか。
そんな話は聞いた事がないし書物でも読んだ事は無く、ただ困惑する。
だがマキアートは確かに、テリウスで感じた事のない空気を感じていた。
ニルスは、きっと世界が違うんじゃないかな、と小さく言う。
世界が違うだなんて言われてもそれで納得なんて出来ない。
だがテリウスと雰囲気が違うのも確かだし………。
「ニルス君、だっけ。何で世界が違うなんて言えるの?」
「だって……僕も……」
「え?」
何か言えない事でもあるのか、ニルスはそれ以上は話さなかった。
取り敢えず大陸がどうのは置いておくとして、この遺跡がどんな場所なのか理解しなければ。
ここはどんな場所なんだと尋ねるアイクにニルスが応えようとした瞬間、遺跡全体に不穏な空気が広がり始めた。
不安を煽るような禍々しい空気と共に微妙な衝撃まで感じられる。
ニルスは急にハッとしたように顔を上げ、どこか遠くへ視線を向けた。
「まさか竜の門……? ニニアン!」
「ちょ、っと、ニルス君!?」
ニルスは遺跡の奥へ走り去ってしまう。
次の瞬間、大地が裂けるような強い揺れが起きた。
突然の事に倒れかけたマキアートを支えつつ、ニルスが去った方を見るアイク。
何が起きたのか、良くない事だろうという漠然とした物だけは分かった。
だが此処でこのまま結果が向こうからやって来るのを待つだけなんていうのは、この姉弟にとって全くもってらしくない、似合わない行動。
2人はニルスを追いかけて遺跡の奥へ向かった。
++++++
2人が奥へ着くと、そこには沢山の人が居た。
しかしそれより2人の視線を奪ったのは、巨大な門と、火竜。
竜鱗族かと思う2人だったが明らかに様子がおかしい。
炎を纏ったその竜は何故か実態が崩れようとしていて、膨大なエネルギーの塊が中から溢れようとしていた。
やがて奥の方に居た人達が、逃げるようにこちらへ向かって来る。
火竜は今まさに体が崩れかけている所だった。
そして人ごみの中にニルスを発見し、彼が数人の人と共に少女を引っ張って走って来るのを確認した。
「あ、マキアートさんにアイクさん!」
「ニルス、あの人達は……知り合い?」
「リン、今はそれどころじゃねぇ!逃げるぞ!」
「分かってるわよヘクトル!」
「ここは危ないよ! 早く逃げて!!」
赤い髪の青年に逃げてと言われるが、言われなくとも危険なのは分かる。
ここから離れた方がいいだろうと人々について門から離れ、同時に火竜の実体が崩れると地獄のような炎が溢れ出た。
2人が呆然としていると突然、黒いローブを纏った怪しげな男が現れる。
そのままニルスと、横に居た少女を連れ去ろうとした。
「くっ……! 失敗か!! おのれニルス、お前さえ邪魔しなければ……! 来い!」
「やめろ、ネルガル!!」
「ねえアイク……!」
「止めた方が良さそうだな」
ぱっと見た限り、黒いローブの……ネルガルとか言う男が悪人に見えた。
しかし助けようと剣を抜こうとしたアイクは、武器が無い事に気付く。
「武器が……!」
「え、無いの!?」
「父上!」
突然の叫び声は、赤髪の青年が発したものだった。
見ればその青年に良く似た男が、ネルガルと呼ばれた黒ローブの男を剣で刺していた。
死に損ないが、と苦しげに悪態を吐いたネルガルは手に魔力を集め、自分を刺している男にぶつけようとする。
魔道書を取り出す暇も無いと判断したマキアートはアイクの止める声も聞かず、間一髪で赤髪の男の前に飛び出し、代わりにネルガルの魔力を受けてしまう。
刺された事で力が減っていたのか致命傷にはならなかったものの、それでもダメージを受けてしまったマキアートはその場に倒れた。
怒りの対象を奪われたネルガルはまだ体に刺さっていた剣を引き抜き、邪魔をしたマキアートを刺そうとしている。
庇おうと飛び出したアイクだが間に合わない。
代わりに飛び出したのは先程マキアートが庇った赤髪の男。
その体に剣を受け、彼もまた倒れる。
ネルガルはこれ以上力を使えなかったのか、そこで消えた。
「父上!」
「姉貴!」
アイクと、赤髪の青年が駆け寄って来る。
マキアートの意識は、そこで途切れた。
++++++
「……姉貴?」
目を覚ましたマキアートは再び弟の顔を見つけた。
周りにはニルス、そして知らない4人の男女が居る。
どうやらどこかの宿屋のようだ。
「よかった、大丈夫みたいね。……私はリン。こっちの青い髪がヘクトルで、赤い髪がエリウッド。そしてこの子が、ニルスのお姉さんのニニアンよ」
「マキアート、です……」
「別に取って食おうってんじゃねぇからよ、そんな遠慮すんな」
ヘクトルと言う青年が豪快に笑い、マキアートの緊張も自然とほぐれた。
そんなマキアートの前に、赤髪の青年エリウッドが進み出る。
「父を庇ってくれて有難う。見も知らないのに、危険な目に遭ってまで……」
「父?」
「姉貴が庇った、赤髪の男が居ただろ? こいつの父親だったらしい」
そうだったのか。
しかし自分を庇って刺された彼はどうしただろうか?
訪ねようと口を開き掛けたマキアートだが、アイクが押しとどめた。
その行動に怪訝な顔をするマキアートは、エリウッド達の表情に全てを悟る。
衝撃に体が震え、声を出そうにも出す事が出来ない。
自分が余計な手出しをしてしまったから?
彼の……エリウッドの父親は、もう……。
「あ、あたしが、あたしが余計な手出しをしたせいで……!?」
「マキアート様のせいではありません……」
ニルスの姉・ニニアンが、悲しみと罪の意識に満ちた表情で口を挟んだ。
その表情は痛々しい程に沈んでいて、見ているこちらが辛くなりそうな程。
私が、私のせいで……と声を震わせ始めたニニアンを、エリウッドが優しく慰める。
そんな雰囲気を払拭しようとしてくれたのか、ヘクトルが進み出てマキアート達の事を尋ねて来た。
そう言えば話していなかった事に気付いて、テリウスと言う大陸に住んでいた事、気が付けばあの遺跡……ヴァロール島の竜の門がある遺跡に居た事を教える。
そしてエリウッド達からも、この旅の事や黒い牙、そしてネルガルや竜の話を聞いた。
「俺達の大陸にもラグズって種族が居るが、ずっと対立してたからな」
「え……? それって、まさか同じ大陸で過ごしてるって事?」
「そうよ。最近やっと歩み寄り出したんだ」
「……そんな……事が、そんな素晴らしい事が出来るのですね……」
「すごいや……」
妙に食い付いて来るニルスとニニアンに少々違和感を感じながらも、一同は話を終わらせる。
それにしてもこれからどうしたらいいのだろうか。
何とかして帰る方法を探るしかないのは分かるが、2人はこの世界の事すらわからない。
前途多難なのは目に見えている。
どうしようか考えていたマキアート達だが、ヘクトルが急に提案して来た。
「なぁ、俺達と一緒に行くってのはどうだ?」
「え?」
「どうせこの世界の事は分からないんだろ? 俺達も戦力が増えると助かるし。それに竜の門の近くに倒れてたんなら、ネルガルに対抗するうち何か分かるかもしれねぇ」
「ヘクトル、彼らをこんな危険な事に巻き込む訳には……」
エリウッドは抗議するが、ヘクトルの提案はアイクとマキアートにとって有り難い申し出だった。
危険はデイン王国との戦いで経験しているし、何にしてもこの世界の事はさっぱり分からないのだ。
この世界の住人と行動を共に出来るならそれが一番いいだろう。
エリウッド達は悪人でもなさそうだし、何となく他人とも思えない。
こうしてマキアートとアイクは、エリウッド達に同行する事になった。
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