お出掛け以上デート未満
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※拙作のスマブラ長編夢【グランドホープ】の番外編的内容ですが、これ単体でも一応読めます。
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スマブラキャラ達も暮らしている近未来都市・グランドホープ。
そこへ夢小説みたいに異世界転移して、夢小説とは程遠い平凡な日常を過ごしていたある日。バイトで同じシフトに入っていたリンクにあるお願いをされた。
「なあコノハ。今度の休み、ちょっと付き合ってくれないか?」
「え? どっか出掛けるんですか?」
「まあ……礼はするからさ、頼むよ」
何事かと思ったけどリンクが危険な事を頼んで来るとは思えないし、何より大好きなキャラである上にイケメン君にお願いなどされては断れない。詳しく話してくれなかったけどまあ命に関わる事じゃないよね。
個人的に歴代リンクで一番イケメンだと思っているトワプリ仕様のリンクと出掛けられるなんて、凡人の私にとっては身に余る光栄だ。
……なんて楽観してたんだけど。
後日 割とすぐ、せめて内容を聞けば良かったと後悔する羽目になった……。
次の休日。
グランドホープは円形の広大な土地を、巨大な壁で×印状に区切った形をしている(更に真ん中には私が住んでいる、〇で区切られたエリアがある)。リンクと待ち合わせて向かったのは南の区画のその名もズバリ・サウスエリア。商業がメインの区画で、グランドホープで一番の買い物天国だ。
ちなみに同居しているピカチュウはニヤニヤしながら留守番を申し出て来た。あれ絶対リンクと進展があったって勘違いしてるやつだよね。
何か買い物でもするのかなぁと思っていたら、一枚のパンフレットを手渡される。
「何ですかこれ?」
「印付けてる店を回るから。コノハの分の代金は全部俺が払うよ」
「はあ、太っ腹で……す、ね……」
何気なく読みながら、目に飛び込んで来た単語が体を硬直させる。
リンクも騙し討ちで連れて来た事を申し訳なく思ってるのかもしれないけど、これもう手遅れじゃないのかな。
パンフレットのそこかしこに踊る文字。それは……。
「……カップル、限定、イベント……?」
「そうこれ、サウスエリアのイベント加盟店でやってるフェアなんだ。カップルで来店した人だけ割引とか限定品とか諸々あるんだよ! それでコノハに頼んだってワケ」
何そのリア充専用イベント非リアへの挑戦状? なんて言ってる場合じゃない。そもそもカップル限定なんて珍しくない。
問題はこの超イケメン君の恋人役を私にやれと言っている所だ。
「ちょちょちょ、待って下さい何で私!?」
「黙って連れて来たのは悪かったよ。でもこうでもしないと来てくれないだろ」
「他に頼めそうな人とか居なかったんですか!?」
「実を言うと女で友人らしい友人なんてコノハくらいなんだ」
あ、ひょっとしてイケメン過ぎて仲良くなった子がみんな惚れちゃうとか? 女の子同士で喧嘩始めちゃうとか? 有り得そう……。
「むむむ無理です無理ですアッこれはリンクさんが守備範囲外とかそういう意味じゃなくて私ごときが上位数パーセントの男の隣で恋人面とかおこがましいにも程があるという意味で」
「上位数パーセントなんて大袈裟だな。大丈夫だよ、俺がついてるから」
何そのイケメン台詞うっかり惚れそうって言うか違うんだよアナタがついてるから駄目なんだよこの人 自分のいい男っぷり分かってないの本当に!?
なんて心の中で抵抗してみても、目の前でお願いされたら弱い。
先の事は考えられない、目先の事を優先してしまう私の精神が発動して、結局リンクの恋人役を買って出る事になってしまった。
まず初めに向かったのは家具店。
物によるけど家具って一つ一つがお高いからね、割引が効くならその間に買いたいってのも分かる。
「で、何を買うんですか?」
「ベッドを買おうと思ってさ。元々友達の兄貴から貰ったお下がりでいい加減に古いし、この機会に新しくしたいんだよな」
「ほ~、ベッドねえ」
それなら早速と、リンクと一緒に寝具売り場に向かう。通りすがる際にちらっと色々見てみたけど、さすがに家具は元の世界と大差ない。まあ木とかそういう自然のものを使った家具は無さそうだけど。
寝具売り場でベッドを物色していると店員さんが声を掛けて来た。だけどカップル限定イベントのパンフレットを手に持ったままだったのが災いして、とんでもない事を言われてしまう。
「お客様、あちらのベッドは如何でしょう。お二人でゆったりお休みになれますよ」
「えっ」
店員さんが示した先にあったのはダブル以上の大型ベッド。
っていうかお二人で、って……カップルならおかしい事でもないよねそうだよねぇ! ちくしょうパンフレット仕舞っておくんだった、どうせ会計の時に見せれば良いんだし!
私が何も言えずにアワアワしていると、リンクが爽やかイケメンスマイルを浮かべて。
「いいえ、セミダブルを探してるんです」
「まあ、仲がよろしい事で」
あぎゃあああすっごい勘違いされてるぅぅぅぅ!!
あれだよね店員さんのあの言葉の後でその言葉はちょっとマズイよね二人で使うには小さめのベッドでくっ付いて寝たいんだとか思われたよね絶対に!
私一人だけが焦っていてリンクは平然としてる。まあ意識されてる訳じゃないから当たり前か、ちょっと虚しいけどね。
お気に入りのベッドを見付けたらしいリンクは2割引きで購入して配達を手配した。
それなりのお値段する大型家具で2割引きってけっこう大きいねえ、まあ役に立てたならいいや。
次は靴を買うんだって。私は特に用事が無いから暇なんだけど、一応カップル扱いなので別行動も出来ない。
靴屋でも色々と選んでいるリンクと一緒に居ながらボーっとしてるだけ。当然メンズ物だから私には無用なんだよねえ。
「ごめんなコノハ」
「……へ、えっ?」
「付き合わせて。暇だろ」
「まあ暇っちゃ暇ですけど了承したのは私ですから」
「だけど騙し討ちで連れて来た」
「それはそうですね。でも絶対にお断りならとっくに帰ってますって」
「……コノハって良い奴だな」
良い奴認定されてしまった。
それって都合の良い奴とかそういう意味……いや、やめとこ。そんな考えに行き着くのはリンクにも失礼だしね。
それから数件のお店を回って、昼食時。奢ってくれるって言うから素直に甘えてご馳走になるとしよう。ちなみにここでもカップル限定のイベントが行われているらしく、折角こうして行動してるんだしと、それを頼む事に。
二人分の大きめなピザにサラダやらデザートやらも二人分ついたセット。まあその内容自体は良いんだけどさ、やっぱ名前がさ……。
「……恋人セット、ねえ」
「他のが良かったか?」
「いや食べ物自体は良いんですけど……まあ、いいや……。っていうかこのピザ、ハートの形してるじゃないですか。何を考えてるんだ」
「全くだよな」
全くもってカップルとは程遠い会話をしながら、仲良くピザを分け合う。
完全に友達って空気だけど、憧れの任天堂キャラと親しくなれたのが嬉しい。
「あ、あぁっ、これアカンやつや! 真ん中から切り分けられてる!」
「ちょっ、本当に何考えてるんだ店の人」
お互いに草を生やすと言った表現が正しい態度で笑い合う。うんうん、カップルなんて贅沢言わないよ、友達で十分だよ。
って言うか本当に何を考えてるんだこのメニュー考案した人。恋人セットなのにハートを真ん中から切るなよ、実はリア充を憎んでるんじゃなかろうな。
そうやって結構わいわい楽しく食事していると。
リンクの恋人役をやる事になった時から危惧していた反応が、広めの通路を挟んだ隣の席から聞こえて来た。
「見てよアレ、恋人セット食べてるけどカップルなわけ?」
「う~わ、彼氏の方すっごいイケメンなのに彼女の方ちょっと……」
「あの彼氏 女の趣味わっる」
……ああそうですよ、自分でもそう思ってますよ。だけどいくら自分で予防線を張っていても、実際に言われると惨めだ。
私は夢小説のヒロインのような美少女なんかじゃない。夢小説かよって言いたくなる異世界転移なんかしておいて、このザマ。
自分が惨めで、でもそう感じている事を認めたくなくて。一気に言葉数が少なくなった上に落ち込んだ表情をしているのが自分でも分かる。
リンクに気を使わせてしまう、早く元に戻らないと……なんて思っていたら、リンクが。
「ちょっと、って言われる程か?」
「え?」
「そりゃコノハは美少女じゃないけどさ……ああ怒るなよ、ごめん。だけど別に“ちょっと”とか言われるほど酷い容姿じゃないと思うんだけど」
絶世のイケメンと一緒に居たら大抵の人は“ちょっと……”だと思うよ。
だけどリンクはやっぱり自分のイケメン具合を分かっていないのか、本気で疑問に思っている様子で言葉を続ける。
「コノハは何て言うか……平凡だよな、凄く」
「おっしゃる通りで」
「悪い意味じゃないぞ。変に緊張せず自然体で付き合えるって良い事だし」
「ははは」
「何だその乾いた笑い。本気でそう思ってるんだけど。あと人間やっぱ中身だよ中身。どうせ皆いつかは年老いてシワシワになるんだから。俺はコノハの中身好きだよ」
「おぶっ」
あ、危ない。咽るかと思った。友達としての意味でも“好き”なんて言われると焦る。
しかしリンクは年老いてもナイスオールド? なイケ爺になりそうだね。それはそれでファンが居そうだし何だかんだモテそう。
「まあそりゃ、容姿も良いに越した事は無いけどさ……俺、コノハなら守備範囲内だなあ」
「……うん?」
最後の一言は、周囲に聞こえないようこっそりと小声で告げられた。
……何て? 守備範囲内? 誰が? 私が? 誰の? リンクの?
やべぇこの人 守備範囲広すぎ神選手かよ。
「……あんまり女をからかうと夜道で刺されますよ~」
「からかってなんかない。本気だって。と言うかコノハは刺さないだろ」
「そら刺しませんけどもね? 妄想甚だしいオタク女を舐めると怖いぞ」
「オタクだったのかコノハ」
あ、どうしよ思わずカミングアウトしちゃった。
そう言えば今まで私がオタクだってバレるような出来事が無かったね。っていうかこの世界にもオタクとかあるんだ。
「そ、そうですオタクですよキモイでしょ? だから冗談でもそういう事は……」
「俺は別にそういうの気にしないな」
「わ、罠だな? 間抜けな猪が引っ掛かるの待ってるんだな!?」
「引っ掛けた後は美味しく頂くのか」
「ちょぉっ……!」
いかんいかん冗談でもそういうこと言わないで妄想するから!
何その悪戯っぽい挑発的な笑顔そんなん見せられたら女の95%は落ちるわ!
はぁ、今日は何かすっごい経験してる気がする……。
何これ夢小説?
あれ? って事は異世界転移したのに夢小説みたいな経験してない私にとって、これは初の恋愛っぽいイベントなのではないか!?
まあでもこれは現実だし、リンクは友達だし。守備範囲内だってのが嘘じゃなくても友人関係からは動きそうにない。
だけどそれでも本当に私には十分なんだ。もちろん特別になれたら天にも昇るほど嬉しいけど、憧れの任天堂キャラと友達ってだけでも既に特別感あるしね。
ああ、話してたらディスられた嫌な気分も忘れちゃった。
そうそう折角リンクと出掛けてるのに落ち込んでちゃ勿体ないもんね。イケメン君との疑似デートを存分に楽しませて貰いましょう!
「じゃあコノハ、パンフレット見なよ。今度はお前の行きたい所に付き合うからさ」
「え、ほんとですか? じゃあえっと……」
その日は一日、リンクと一緒にあちこち買い物して回った。嘘でも偽物でもデートっぽい事が出来ただけで私としては上々。
家に帰って相変わらずニヤニヤ顔のピカチュウに出迎えられた事も、今日の幸福に比べると些細な事だった。
*END*
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