5章 弓使いの村で
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大森林の中を少女に案内されルミザは進む。
緑色の髪をしたお下げの少女はレベッカと名乗り、この深い森の中を身軽に駆けて行く。
毒を受けたエリウッドは意識が無いのか、目を瞑って愛馬のウィアに寄りかかっていた。
ぐったりとしている彼を見て浮かぶのは、彼が死んだらどうしようと言う不安。
……つまりは、独りになるのが不安で仕方ないのだ。
こんな時まで己の心配をする自分に、ルミザはどうしようもない自己嫌悪に陥る。
エリウッドの身よりも、独りになった自分を心配するなんて……。
「ルミザさん、あれが私達の村です!」
レベッカの声にハッとして確認すると、前方に森が切れ、開けた空間が広がっていた。
森を抜けたのかと思ったのだが、よく前方を見ればずっと向こうから再び森が始まっている。
ここだけちょっとした草原のようになっているようだ。
今までの森の中は上方も木々に覆われていた為、久し振りの開けた大空が眩しく感じた。
近付いてみるとそれなりに大きな村で、周りをしっかりと塀で囲まれ、入り口には大きな門と見張り台がついていた。
近付いて行くと誰かがこちらへ向かって来る。
緑色の髪で、なかなかガッシリとした体つきの男。
手には斧を持っているが背中に弓を背負っていた。
「レベッカ! お前っ、みんな心配してたんだぞ!」
「ごめんねボーレ、居ても立ってもいられなくて……」
「ネイミーなんかさっきから泣き止まねえんだ、早く行って安心させ……ん?」
ボーレ、と言う名前らしい男がルミザに気付いたが、何かを尋ねられる前にレベッカが手短に説明した為、会話は無い。
門を開けて貰うと、急いで村に入る。
「レベッカちゃん!」
すると、また誰かが来た。
見れば黄緑色の髪をした可愛らしい少年と、紫色の髪を少し短めに切り揃えた愛らしい少女。
どちらも、レベッカやボーレと同じように弓を手にしていた。
「ヨファ、ネイミー!」
「よかった、心配してたんだ! ネイミーちゃん、レベッカちゃん無事だよ」
ヨファと言う名の少年は隣で泣いている少女の背中を優しく押す。
泣いている少女の名はネイミーと言うようだ。
先に行って村長に話して毒消しとかの用意しとくからと、ボーレがそう言って駆けて行った後、泣いていたネイミーがようやく口を開いた。
「レベッカ、ごめんね……。私、が……ちゃんと……してなかったから……」
「大丈夫よ、このルミザさんとエリウッドさんに助けて貰ったから。手鏡は見つからなかったけど……」
「もう、いいの。レベッカが無事だったなら。えっと、ルミザさん、と……エリウッドさん? レベッカを助けて下さって、有難うございます」
自分達の方へ頭を下げるネイミーにルミザは、彼女を助けたのはエリウッドよ、と馬上の彼を示した。
その動作にネイミーと隣に居たヨファがエリウッドを見るが、瞬間、2人とも驚いたように小さく声を上げる。
ヨファが慌てて口を開いた。
「ね、ねぇレベッカちゃん。この人ってまさか……」
「うん。私もそう思った」
彼女達が何を言っているのかが分からず、ルミザは首を傾げる。
言葉の意味を尋ねようとした瞬間、毒消しと治療の用意が出来たらしく、招かれたルミザはエリウッドが乗ったウィアを連れて足を進めた。
++++++
案内されて来た部屋には更に2人の人物が居た。
17、8歳くらいの茶髪の青年と、彼にどことなく似た黄緑色の髪の少年。
黄緑色の髪の少年はヨファと髪の色がソックリだが、こちらが少々年上に見える。
やはり2人とも弓を傍らに置いていて、エリウッドをベッドに寝かせ処置を施してくれた。
「エリウッドは……彼は大丈夫ですか?」
「あー、大丈夫ッス、毒消しが効いたから、1日も休めば全快しますよ」
軽い調子で答えた茶髪の青年に、レベッカが「軽く言い過ぎよ、ウィル」と横槍を入れる。
ウィルと呼ばれた茶髪の青年は軽く笑って肩を竦め、ルミザに謝った。
ルミザとしては、助かるのなら深刻に言わず、今のような軽い調子で言って貰った方が有難いが。
だがルミザがそれを言う前に、どことなくウィルに似た黄緑色の髪の少年がエリウッドを見ながら口を開いた。
「あの兄さん、この人はもしかして……」
「あ? ……あ、あぁ! そうだなウォルト、どっかで見た顔だと思ったら」
黄緑色の髪の少年の名はウォルト。
似ていると思っていたらウィルの弟だったようだ。
それにしても、先程から意味深な反応ばかりをされてルミザは疑問符を浮かべてばかり。
ルネス軍からの手配書が回っていて、それで見た、なんて事じゃなければいいが。
たまらずエリウッドがどうかしましたか、と訊ねるルミザ。
すぐに答えてくれたのはレベッカで、彼女の口から紡がれた言葉は……。
「あの、ルミザさん。エリウッドさんに弟さんって居ませんか? ……ロイと言う名前の……」
「え……!?」
ロイ。
ラエティアの王城を脱出する際に囮となってくれて以来、行方の知れない大切な友人だ。
そして彼女の言う通りエリウッドの弟でもある。
しかし何故、彼女達がそれを知っているのか。
「ロイと言う名の弟なら確かに居ます。今は行方知れずですが……」
「やっぱり! よかった、彼はこの村に居ます!」
ルミザの心臓がドクンと跳ね上がった。
……ロイがこの村に?
「レベッカ、ロイの奴はいま兄貴達と人捜しに出てる筈だぜ。なぁウィル」
「あぁ、そうそう。ボーレの言う通り、今オスカー達とプリシラさん達連れて人捜ししてるから……」
話を聞けば四日前、サルトゥス大森林のラエティアに近い方で、行き倒れていたロイを助けたらしい。
一宿一飯の恩とばかりに色々村の事を手伝っているそうだ。
ロイは詳しい事は話さず、兄と友人を探しているとだけ言っていたらしい。
あの襲撃に1人で向かって行って、よく無事で居てくれたものだ。
ホッとしたら泣きたくなって来たが、ある事が気になってしまった。
「あの、ロイはどこか大怪我をしたりはしていませんでしたか?」
村人達を手伝って共に人捜しへ行くぐらいなので、別に大した怪我はしていないのだろうが…。
どうしても不安で、直接聞かないと気が済まない。
兄と共にロイを連れて来てくれたと言うボーレが答えてくれた。
「いいや、怪我は殆どしてなかったな。ラエティアに居たとは聞いたけど、何でカネレに居たかは分からないらしい」
「それは、自分の足でカネレに来た訳ではないと言う事ですか?」
「だな。まぁ、詳しい事は本人に訊いた方がいいぜ」
確かにその通りだ。
今はエリウッドの全快とロイの帰りを待とう。
あとはヘクトルが無事に見つかってくれるといいのだが……。
「あ、あの……」
突然少女の声がして、見るとネイミーが部屋の入り口に立っていた。
「人捜しに行っていた皆が戻って来たみたい……」
再会の時が来る。
++++++
全く、何の期待も予測もしていなかった。
これから何週間も何ヶ月もかかると思っていたし、第一、ルミザと兄達を探そうと思い立って4日しか経っていない。
世話になったこの村で暫く手伝い等をしたら、それから探しに行こうと思っていたのに。
「ロイっ!!」
ついに幻聴が聴こえたのかと思った。
そちらを見れば、無事でいてくれと必死な想いで願っていた少女が、嬉しそうな、どこか泣きそうな顔で走って来る。
「ルミザ様っ……! どうしてここに!」
「理由があって旅をしているの。無事で良かった……本当に……!」
感極まって胸に飛び込んで来たルミザをしっかりと抱きしめ、ロイの心は喜びに震えた。
まさか、こんなに早く再会出来るなんて……。
しかしある事が気になり、嫌な予感を抱きながらもロイは訊ねる。
「な、なぁルミザ様。兄貴とヘクトルは?」
考えたくはないのだが、あの襲撃では犠牲になった可能性もあるのだ。
ルミザが黙り込んだので、本当にそうなってしまったのかと血の気が引いたが……。
「エリウッドは無事よ。ただ毒にやられて、今治療して貰っているの。心配はいらないらしいわ」
「……じゃあヘクトルは、どうしたんだ」
エリウッド“は”無事。
じゃあ、ヘクトルは?
「……分からないの。王城を脱出する時に、彼も囮になってくれて……」
「……そうか。きっと無事だよ、アイツはオレよりずっと頑丈に出来てるんだ」
抱きしめていたルミザを離すと力強く励ますロイ。
気休めかもしれないが、確かに、ロイと無事に再会出来たのだから、ヘクトルともそのうち再会出来るんじゃないかと希望が湧いてきた。
ロイにも虹の巫女達の事を話して、一緒に旅を手伝って貰おう。
きっとそのうち、ヘクトルにも会える。
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