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※拙作の時のオカリナ長編夢【See you again】の番外編的内容です。これ単体でも一応読めますが少々のネタバレ注意。
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ゼルダ姫に残りの精霊石を渡す為、ハイラルを旅する一行。
ひょんな事から仲間になったダークの存在にカヤノは戸惑っていた。
彼は、ハイラルを救う宿命にあるリンクに大切な者が出来て、万一の時ハイラルよりその者を優先する事が決して無いよう、“リンクがその者に抱いた好意を分散する為”に生まれて来た。
リンクがハイラルより優先してしまいかねない程の好意を抱いた相手はカヤノ。その事をリンクは知らないがカヤノとナビィは知っていて。まだ子供なので はっきり意識している訳ではないにしても、このまま育てば国より優先されかねないと判断される程の好意を。
またリンクが抱いたカヤノへの好意が分散されて生まれたダークも、当然のようにカヤノに好意を抱いている。それだけが存在意義と理由のため、リンクよりだいぶ直接的だ。
「ねえダーク、近い」
「駄目なのか?」
ダークは今、カヤノにぴたりと密着している。
髪は灰色、瞳は赤く肌の血色はやや悪く、服は黒。容姿は完全にリンクと同じでリンクの色違いといった様相なのに、感情豊かで表情がくるくる変わるリンクと違い、ダークは実に静か。表情は無表情のまま一切変わらず、声に抑揚は少なく淡々としている。
容姿は子供なのに態度などが成熟した大人のようで、そんな彼が臆面も無く くっ付いて来るものだから、中身は18歳のカヤノとて心の平穏は危機を迎える。そしてそれを面白くない顔で引き剥がしたのはリンク。
「ダーク、カヤノにくっ付きすぎだって!」
「カヤノはまだ、駄目だとは言ってない」
険悪……までは行っていないものの、未自覚だが国よりカヤノを優先してしまいかねない程の好意を持っていたリンクにとって、ダークは何故か頭に来る事ばかりする意味の分からない相手。好意は分散されても消える訳ではないようで、なぜ苛つくのかすら分からず余計に苛々する。
そんな二人を見たナビィが心底嬉しそうに。
「うふふふふ、争う二人の男、取り合われる女。やめて! 私の為に争わないで!」
「あなたがやめてナビィ」
いくら何でもそれは恥ずかし過ぎる。
ナビィの恋愛脳はともかく、一緒に国を救うため旅する仲間として仲良くなって欲しい。
さてどうしようかとカヤノが頭を悩ませていると、ふと視界の先にあるものが目に入った。
今 一行が居るのはハイリア湖。カヤノが見つけたのは釣り堀の入り口。一緒に遊べば少しは打ち解けてくれるかもしれない。
「ねえリンク、ダーク。あそこに釣り堀があるわ」
「あるね」
「あるな」
「……」
ほぼ同時に放たれた言葉に、実は気を揉む必要など無いのではないかと思うカヤノ。“喧嘩するほど仲が良い”を地で行ってくれているのであれば問題ないが、言い出してしまったからには保険として行動に移すのも悪くない。
「最近 戦いずくめだったし、休憩がてら少し遊ばない?」
「うんうん、ワタシもカヤノにさんせーい」
カヤノの心を知ってか知らずか、ナビィも賛同してくれる。リンクと、ひょっとしたらダークも同じだったのか、話はとんとん拍子で決まり釣り堀へ行く事に。
自然あふれる景色の中で魚釣りが出来る釣り堀。
何とか打ち解けてくれればとやって来た訳だが、カヤノ自身は魚釣りなどやった事が無い。しかもここは餌による浮き釣りではなくルアーでの釣り……難しそうだ。
そうやって借りた釣り竿を手に途方に暮れるカヤノをよそに、リンクとダークは……。
「来た来た来た来た、次こそ大物だよこれ!」
「……」
「ちょっとダーク、こっちに投げるなよ!」
少し説明を受けて何度かやってみただけですぐ物にしてしまった。元々は彼らに仲良くなって欲しいから来てみただけなので、彼らが楽しく遊んでいるならそれで良いのだが。
一緒にではないものの楽しそうに遊ぶリンク達を遠巻きに眺めていたカヤノに、ふとダークが気付き近付いて来た。
「釣らないのかカヤノ」
「え? ああ、その、やり方がよく分からなくて……」
「なら俺が教えてやる。こっちに来てみろ」
断る理由も無いので素直に付いて行く。
岸辺に釣り竿を持ったまま立つと、突然ダークが背後に回り、まるで後ろから抱きしめるように腕を回してカヤノの手を掴んで来た。
「えっ……! あ、あの、ダーク?」
「俺が一緒にやってやる。一度覚えればすぐ出来る」
「あり、が、とう……」
カヤノの背中とダークの体がぴったり密着している。ダークに他意は無いのかもしれないが、あまりにも心臓に悪い。体格は子供でも中身が大人のようだから尚更。
「あまり腕を大きく振らずに手首を……、おい、聞いているかカヤノ」
「き、聞いてるわ」
聞いている、が、頭には碌に入って来ない。後ろから手を握られている関係で腕もぴったり密着。きっとナビィが内心でニヤニヤしているだろうが抗議する余裕は無い。ダークは相変わらずの完全無表情と抑揚の少ない平坦な声なので、下心が有るのか無いのか全く判断がつかなかった。
……カヤノは判断がつかなかったが、その他一名は完全に下心有りと判断したらしい。カヤノの視界に映ったのは、離れた所に居たリンクがこちらに歩いて来る姿。怒ったように睨み付ける顔のまま動作も荒く歩んで来て、ぴったり密着していたカヤノとダークを無理やり引き剥がす。
「……何だ、リンク」
「何だじゃない! 何でそんなにカヤノとくっ付いてるんだよ!」
「俺は釣りを教えてやっていただけだ」
「釣りを教えるのにあんなぴったりする必要あるか!?」
「カヤノは完全に初心者で自信も無いようだった。ああして丁寧に教えるのに何の問題がある」
変わらない淡々とした表情と声音が更にリンクを苛つかせたようだ。
苛ついている理由は相変わらず自分でも理解していないのだろうが、カヤノへの想いを完全に自分の物にしているダークはリンクの行動の意味も完全に把握しているらしく、引き剥がされて少し離れたカヤノとの間をさり気なく詰める。
「……ダーク、今カヤノに近付いたよな」
「近付いた。何かいけないか?」
「そんなに近付く必要ないだろ」
「それを判断するのはお前じゃない。俺とカヤノだ」
少しは仲良くなって欲しくて釣り堀に来たのに、またも一触即発。カヤノは慌ててリンクとダークの間に割り込む。
「ちょ、ちょっとリンク、ダーク」
「やめて! 私の為に争わないで!」
「やめてナビィ」
高みの見物をしていたナビィに心底楽しそうに言われ、カヤノは静かに制した。
間にカヤノが来た事でリンクとダークの睨み合いは中断されたが、そうなると次は二人の矛先がカヤノに向くのは必然。
「カヤノ、釣りならオレが教えてあげるから、こっちおいで」
「え」
「今まさに俺が教えていたのに邪魔するな。カヤノ、続きをやろう」
「え」
「オレの方が上手いよ、さっき釣り堀の記録を塗り替えたんだ」
「そうなの? 凄いじゃないリンク」
「残念だがそれより後に俺が更に塗り替えておいた」
「はあぁ!? いつの間にコイツ!」
全くもって埒が明かない。
どうして仲良く出来ないのかと悩んでも、その理由をリンク以外の全員が知っているので悩み損。そして自分が理由なので、カヤノにはどうにも出来ない。出来る事はキッカケを作るだけで後は二人次第でしかない。
「リンク、ダーク。せっかく遊びに来たんだから仲良くしない?」
「……カヤノが言うならそうしたいけど」
「そもそも協力する訳でもない釣りでどう仲良くするんだ」
「……」
言われてみれば。
この釣り堀に二人で引っ張るような大物は居ないだろう。それなら後は個人個人で好き勝手に釣って遊ぶしかない訳で。“仲良く釣り”なんて元から仲の良い者同士がやる事だ。休憩がてら息抜きの為に遊ぶ、という目的は達成できるが、リンクとダークがそれだけで仲良くなれるかと言うと……。
そうしてカヤノが悩んでいると、リンクが突然。
「それなら勝負しようダーク。次に釣り堀の記録を塗り替えた方が勝ち」
「どちらも塗り替えられなかったら?」
「その時は今からの釣りで一番大きい魚を釣った方が勝ちな。そして勝った方がカヤノに釣りを教える!」
「乗った」
「え」
一方的に言い始めて一方的に両者納得の雰囲気。当のカヤノを差し置いて勝手に燃え上がったリンクとダークは、再び各々釣り竿を手に釣り堀の中でバラけてしまった。
それを呆然と見送りながらカヤノはナビィに。
「……それで、私は二人を待つの?」
「いーいじゃない、将来有望の二人がアナタに夢中なのよ? こんな素敵な機会そうそう無いわよ、楽しんじゃえ!」
自分で言うのも何だが、毎日がこんな調子だ。いつもと変わらない日常風景なのに何を楽しめばいいのか。
カヤノは一つ溜息を吐いて釣り竿を手にすると水辺へ歩み出した。こうなったら一人で楽しんでやろうと、見よう見まねの釣り方を実践してみるしかない。
「えっと、腕よりも手首を……」
ダークに習った通りに竿を振ると、思ったより景気良く飛んで行く。それを見て少し胸が高鳴ったカヤノは、そのまま釣りを続行。
「ルアーを魚の動きに見せれば良いのよね?」
「ワタシはやった事ないからわかんないけど、多分そうよ。リンク達は何かこう……竿を左右に軽く振ってた気がする」
思い出しながらちまちま動かしてみるカヤノ。特に手応えは無く、本当にこれで良いのか、若干 妙な恥ずかしささえ覚えて来た時。
くんっ、と竿と糸が引っ張られた。
「あ、来た、かも……!」
「ほんと!? ガンバレカヤノ、リンク達よりおっきいの釣っちゃお!」
何も悪い事はされていないが、自分を無視して話を進めるリンク達に少し思い知らせてやりたいという妙な気持ちがカヤノにはあった。
ただし内容は、ここでリンク達より大きな魚を釣る、という遊びに毛が生えた程度のものではあるが。
そこそこ強力に引いて来る魚に対抗しようと、竿を思いっ切り引く為に足を踏ん張ろうとしたら力が入れ辛い。少し体勢を整える為に足を地面から浮かせて移動させ……ようとした、その時。
片足が地面から浮いた瞬間、狙ったようなタイミングで引っ張られる。ぐらりと前のめった体は支える事も出来ず……。
「カヤノっ!!」
「え……!」
ナビィの悲鳴、次いで聞こえる大きな水音。反射的にそちらを見たリンクとダークは、静かな釣り堀に不釣り合いな波立ちを確認する。
その中央では頭からずぶ濡れになったカヤノが、座り込んだ状態で胸まで水に浸かり呆然としていた。
++++++
結局釣りは中断となり、今はハイリア湖の畔、火を焚いてカヤノを暖めている所。
着替えがあって良かったが冷えた体はすぐには暖まらず、布にくるまって震えているカヤノは少々顔色が悪い。
「ごめんカヤノ。オレ達がほったらかしにしたから」
「迂闊だった」
「う、ううん、私が勝手に落ちたんだし……」
焚き火を前にカヤノを真ん中に座らせ、申し訳なさそうに謝るリンクとダーク(ダークは無表情だが雰囲気は伝わる)。
リンク達に思い知らせてやるという意味不明な意地を張った結果なので、そんな風に謝罪されると気まずい。
日は傾きかけており、これから夜にかけて少しずつ気温が下がる。凍えるほど低くはならないが、冷えているカヤノには辛い時間。
震えの止まらないカヤノを心配そうに見ていたリンク達だったが、ふとリンクが視線をカヤノから外してダークを見た。それに気付いたダークもリンクと視線を絡め、お互いに何も言っていないのに小さく頷き合う。
カヤノとナビィは疑問符を浮かべるばかりだったが、次の瞬間。リンクとダークが左右からカヤノを思い切り抱きしめた。
「っひゃ!」
間抜けな声が出てしまい密かに頬を赤らめるカヤノ。
痛くない程度にぎゅうぎゅう密着されている事に気付き、今度は違う理由で恥ずかしさが込み上げる。
「ど、どうしたの二人とも」
「だってカヤノ、寒そうだしさ」
「こうすれば体温で多少はマシだろう」
マシ、どころかだいぶ熱くなってしまった気がするのだが。
しかし完全に気遣いでやってくれているだろう二人を考えると、拒否も出来なくてされるがまま。それに本当に暖かくて、つい今までの寒さが嘘のように気持ちがいい。
「ありがとう、リンク、ダーク」
微笑んで礼を言うカヤノにリンクは笑顔、ダークもほんの少しだけ顔が緩んだ気がする。
まだまだ幼く可愛らしい三人のやりとりに、ナビィはクスリと笑ってリンクの帽子の中に引っ込んだ。
*END*
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