キバナの幼い娘がダンデに初恋する話
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かつて無敗のチャンピオンだったダンデを打ち負かしたアイツがつい先日、ダンデのチャンピオン在籍期間を超えたので、(ダンデへの)揶揄いついでに何か祝いでもしてやらないかと相談に行く事にした。
そうしたらオレの可愛いお姫様のサクラが、パパに付いて行きたいと珍しく可愛い駄々を捏ねたもんだから、仕事の話でもないからいっかと気楽に同行させたんだけど。
「こんにちは、サクラ。キミがもっと小さい時に会っているんだが……さすがに覚えてないか」
なあ、オレのお姫様よ。
どうして紳士然と挨拶するダンデをそんなにもキラキラした目で見てるんだ。
ちょっと頬が上気してるのは何なんだ、パパお前のそんな顔 初めて見たぞ。
5歳になったばかりのサクラはまだまだお子様で、パパが一番、大きくなったらパパと結婚するなんて、それはそれは目にも痛くない姿で突撃して来る。
……して来てたんだよ、今朝までは!!
「パパ……王子さまがいる……」
「サクラ、騙されるな。ダンデは王子様じゃなくてオジサマだ」
「オジサマはキバナもだろ」
バトルタワーのオーナーになってから着始めた衣装はチャンピオン時とは打って変わって、落ち着いた雰囲気を纏っている。
躾けられたいとか鞭で打ち据えて欲しいとか変なファンも増加したその装いは確かに高貴に見えて、恋に恋する年頃の少女達の初恋ゲッターと化しているのは周知だ。
オレからしたら王子様どころか悪の帝王様にしか見えないんだが。
「は、初めまして王子さま。サクラです」
「ダンデだぜ。よろしく、竜のお姫様」
「……!」
おいやめろダンデ!! 今ので完ッッ全にサクラが落ちたぞ、パパには分かるんだ!!
そりゃサクラはオレの可愛い可愛いお姫様だよ、オレの手持ち達にもすーぐ懐かれてまさしくドラゴンプリンセスだな、こりゃ将来はジムリーダーだないやチャンピオンだなとか悦ってたけど、お前のお姫様じゃねえ!!
「ダンデてめぇペドオーナーって拡散するぞ!」
「それやったら炎上するのはキミだと思うが」
「……お前ほんと人心掌握すんの上手いよな……」
SNS時代のチャンピオン生活を10年もの間、一切の炎上無く切り抜けた猛者だ。面構えが違う。
現チャンピオンのアイツだって多少の炎上はしてるからな(※本人は特に悪くない)。
いや、今はそんな事はどうでもいい! 問題はサクラだ!
オレはサクラを優しく抱き上げて、さり気なくダンデから引き離した。
「なあサクラ、パパがサクラの王子様じゃなかったか?」
「どうして? パパはパパだよ、王子さまじゃないよ」
「うぐ……」
「正論が返って来たな」
「お前は黙ってろ」
面白そうにニコニコしてんじゃねえ、こっちは修羅場なんだ。
そりゃいつかサクラが素敵な相手を見つけたら、その人と人生を歩んでくれればとは思ってる、が、それは今じゃないんだよ今じゃ!
今はまだパパ大好きパパが一番大きくなったらパパと結婚するー、って時期だろ……いや今朝まではそうだったんだよなァァ……。
サクラは相変わらず、見せるのはまだ何年も後だと思っていた恋する少女の顔でダンデを見ている。
「ダンデさまは、どんな人が好きですか?」
「“さま”!?」
「そうだな、ポケモンバトルを共に楽しんで、熱いバトルをしてくれる人かな」
「真面目に答えてんじゃねぇよ」
「こんな小さなレディが真剣に訊いてくれてるんだから、真剣に答えるべきだろ?」
「ダンデさま、やさしい……」
「おーい、サクラちゃーん?」
マズイマズイ、どんどん深みにハマってる気がする……!
これ以上は、サクラの一番だとつい今さっきまで自負していたプライドがズタズタにされる気がして、慌てて話題を本来の要件に戻してソファーに座り、話を始める事にした。
オレの隣に座っているサクラは相変わらずの恋する瞳でダンデを見ているが、ここは放置。
話も纏まって、さあさっさと帰ろうとサクラを促すが、動きそうにない。
「パパ、わたしもうちょっとダンデさまといっしょにいたい!」
「こら、ダンデは仕事があるんだから、迷惑かけちゃダメだろ」
「構わないぜ、元々今日は休日だったし、ついでに仕事してただけなんだ」
「……おい。今日は忙しくないからって休憩ついでに相談に乗ってくれたんじゃなかったのかよ。もしかしてまた無茶な仕事量こなしてんじゃねえだろうな」
こいつは仕事を一人で抱え込み、休日も返上で無茶する事がある。今はだいぶマシになったが、チャンピオンの頃から忙しないスケジュールだった癖が抜けないらしい。
それでもチャンピオン時は周囲の大人達が適度に休ませていたし、バトルタワーのオーナーになったばかりの頃はやる事があまりに多かったから仕方ない面もある。
だが今は全てが落ち着いて安定してるんだから、そんな無茶をする必要は無い筈なんだ。
オレが睨んでる事に気付いたか、ダンデは少し慌てた様子を見せながら弁明を始める。
「いや……違う、キミから相談があるって言われただろ。それならついでにと思って……」
「何のついでだよ、オレが言った相談内容と仕事に何の関係もねえだろうが。お前はほんと、近年落ち着いたかと思えば……」
「……パパ、ダンデさまと仲よしだね」
軽く言い合いになりそうな雰囲気だった所にサクラが割り込んだ。
話題を変えようと思ったらしいダンデが渡りに船とばかりに飛び付き、サクラに答える。
「そうだぜ、オレとキミのパパは昔からライバルなんだ」
「ライバル……ポケモンバトルの?」
「ああ。オレがリーグチャンピオンだった頃の試合とかは見せてもらってないか?」
「あるの!?」
「ある筈だぜ、キバナが記録してない訳がない」
サクラが期待に満ちた目を向けて来る……これ見せなきゃダメなやつだな……。
基本的にオレが負ける試合だからあんまりサクラには見せたくないんだけど、なんて思ってたら渋い顔をしていたのか、ダンデが。
「ああ、キミとしては見せたくないかな、基本的に負けバトルだから」
「おいダンデ表出ろ久々にオレ様の力を見せてやる」
「キミがオレ様なんて言うの久しいな」
「そりゃサクラの優しいパパとして相応しい振る舞いをしようって考えてたからな。でもテメェにそれをする必要はねえ」
「そうだな、そろそろキミとバトルしたいと思っていた所だ。じゃあフィールドに……」
「……やっぱりパパ、ダンデさまと仲よしだ……!」
突然サクラから発せられたのは、どこか怒りも含んだように聞こえる声音。
……あれ、えっと、サクラさん??
「きめた! わたし、いつかパパを倒す!!」
「え」
「そしてわたしがトップジムリーダーになるの! ううん、チャンピオンにだってなるんだから!! そしてダンデさまにふさわしいトレーナーになって、たくさんバトルするの!!」
堂々としたサクラの大宣言に、オレは呆気に取られるしかない。
待て待て待て待て、これサクラの一番の座から転落したその日に、ライバル認定されてねえか!?
「サクラはパパの味方してくれないのか……!?」
「味方? するよ、わたしはずっとパパの味方だよ」
「サクラ……!」
「でも、わたしもパパぐらいダンデさまと仲よくなりたい!」
「ダ、ダンデと仲良くなるのに、パパを倒す必要は無いんじゃないかな~……」
「……さしものドラゴンストームも娘には形無しだな」
まーた笑ってやがるこの野郎、こっちはさっきから修羅場なんだよ主にお前のせいで!
……しかし、これはサクラもバトルの道に進む事になるんだろうか。
オレの大事な大事なお姫様。バトルに進んでくれたら嬉しいとは思っていたが、強制する気は全く無かった。どんな道でも、望んで進むなら応援しようと決めていた。
いずれサクラと共闘したり対峙したりする日が来るのだろうかと考えると、喜びで顔がニヤケそうになる。
「パパ? なにかイイコトあった?」
……ニヤケてたみたいだ。
吹き出したダンデに一発かましてやりたいと思ったが、じゃれ合い程度とは言えまだ幼いサクラの前で暴力は良くない。命拾いしたな。
「なあサクラ。パパと戦うんじゃなくて、パパと一緒に! ダンデと戦わないか?」
「あ、それいいね! それも楽しそう!」
よっしゃああ! 好きランキングを追い抜かれたとはいえ、ダンデがオレの上を行ったってだけで、オレ自身の地位は揺らいでないみたいだな!
ダンデはというと、そんなオレ達 父娘を楽しそうに見ていて。
「手強いライバルが増えるのは大歓迎だぜ、キバナの子ならきっとバトルの実力も高められる筈だ」
「楽しそうだなお前……」
「楽しいからな」
コイツ、本気でオレ達 父娘がライバルになれば良いと思ってやがるな……。まあガラル民が強くなるのが嬉しいコイツらしいっちゃらしいけど。
しかし良い感じにサクラをこっち側に引き戻せたし、後はオレと共闘する方向に持って行けば、いずれダンデへの恋心がライバル心に変わるかもしれない。
いや多分 変わるだろ。覚悟しとけよサクラ、ダンデは真正面から全力で叩きのめして来るから、負けたのはお前の実力不足だって言われてるも同然でクソほど悔しいんだよ。パパはよく知ってる。
「キバナ、チャンピオンを目指すならジムチャレンジの推薦状は出してやるんだろ?」
「さすがにまだ早えよ、5歳だぞ」
「そうだな……サクラ、バトルタワーはいつでも挑戦できるよ」
「え、ダンデさまと戦えるの!?」
「ああ。キミが強くなって会いに来るのを待っている」
「わ、わかりました! がんばって強くなります!」
……なんかまた雲行きが怪しくなって来た気がする。
サクラ、今の“キミが来るのを待っている”をプロポーズ的に捉えてないか?
そりゃサクラが強くなりたいってんなら色々と教えてやれるけど、それがダンデの為だって思うとパパは胸中複雑です。
「わたし、帰ってうちのコたちと特訓する! 新しいコも捕まえなきゃ! ダンデさま、待っていてくださいね!」
「分かった。キミとのバトル、楽しみにしてるぜ」
「はい! さよならダンデさま! パパ、帰ろ!」
「はいはい。……ダンデ、オレ達のバトルはまた今度な」
「残念だが、お姫様の為なら仕方ない。キミを負かすのはお預けだな」
「おまっ……! ああもう、首洗って待ってろ! オレとオレのお姫様のタッグをな!」
「二人がかりで来る気か」
またも笑いそうになりながら言うダンデを無視して帰路に就く。
こんな形とはいえ、やっぱりサクラがバトルの道に進んでくれそうなのは嬉しい。
あれこれ教えたい事もあるし、こうしてサクラと共有できる時間が増えるのはこの上ない幸せだ。
オレの可愛いお姫様。
共有する時間は幾らでも欲しいんだから、もっとゆっくり大人になってくれて良いんだぜ。
「はあ……ダンデさま、カッコイイ……すてき……。ぜったいに強くなって、ダンデさまにみとめられなくちゃ!」
……ほんと、頼むから。
麻痺ったヌメラより低速で大人になってくれ……。
*END*
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