never mind
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あ、ライ。やっほー」
「マキアートか。何だ、やたら機嫌いいな」
スキップしそうな勢いで歩いていたマキアートに声を掛けられて、ライは軽い笑みを返した。
マキアートは、お得意の闇魔法の魔道書を片手にニコニコと機嫌が良い。
「ん? そう言えばお前……何か雰囲気変わったか?」
「分かる? なんと、ついにクラスチェンジしたのでしたー!」
「へぇ! そりゃおめでとうさん、よかったな」
一緒になって喜んでくれるライに、マキアートも更に機嫌が良くなったが……。
さすがにライが頭を撫でて来た時は笑顔が崩れた。
子供扱いされていると思ったマキアートは慌てて避ける。
寿命の長いラグズは年齢と見た目が釣り合わない。
ライも見た目の割には年が行っているようだった。
しかしライがマキアートの頭を撫でたのは、彼女を子供扱いしているからではなかった。
逆だ。マキアートを意識しているからこそ照れてしまい、それを悟られぬように、わざと軽く振る舞っているのだ。
「悪い悪い、別に子供扱いしてる訳じゃないさ」
「……ならいいけどね」
マキアートも本当に怒っている訳ではないのですぐ笑みを戻した。
ライはそんな彼女に、言いたい事があったのを思い出す。
「マキアートお前、果物好きか?」
「果物? 好きだけど」
ライが言うには、ガリアに自生していて獣牙族がよく口にする果物が、この近辺に実っているのを見つけたらしい。
かなり美味な果物のようで、是非マキアートにも味わって欲しいと言う。
わざわざ採って来てくれると言う嬉しい申し出に、マキアートは喜んで頷いた。
やっぱりライは優しいし親切だよねー、何て言って笑う彼女に苦笑するライ。
確かに世話を焼くのは嫌いではないが。
マキアートだから、ここまで親切にすると言う事を分かって欲しい所だ。
まぁマキアートの更なる笑顔が見られそうなので、ライも焦らなくていいかと思ったが……。
突然背後から、殺意に近いものが混じった声が聞こえてきた。
「姉貴、ライ。何を楽しそうに話してるんだ?」
出た。
マキアートの弟で団長で将軍なシスコン野郎アイク。
彼曰わく、“マキアートの弟”が1番に優先されるべき立場らしい。
少々機嫌が悪そうなのは気のせいではないだろう。
ライにとってかなり厄介な相手だ。
まるでマキアートの父親の如く、彼女に近付く男を払っていると聞く。
「お、アイク青年。ライがあたしの為に、果物取って来てくれるって!」
ライの好意に全く気付かないマキアートは何の躊躇いも無く答える。
瞬間、アイクの額にピクリと青筋が浮かんだのを見て、ライは本能的に命の危機を感じた。
「……そうか、俺も食ってみたいもんだな」
「ざーんねーんでーした、ライは“あたしの為”に取って来てくれるんだよ!」
本当にライの好意に気付かないらしい。
弟へのからかいのつもりで発している言葉が、どんどん周り……と言うかアイクの空気を険悪にしていく……。
しかしアイクが何かを言う前に用事を思い出したらしく、じゃあねー、と走り去るマキアート。
後にはアイクとライが残されて、非常に気まずい空気が漂っていた。
そんな空気に耐えかねたのだろう、ライはもう、思い切って率直な話をする事に。
「アイク、お前さぁ、俺がラグズだから反対してる……とかじゃないよな?」
勿論、そんな訳ではない事ぐらい分かっている。
ラグズだから反対するなんてアイクはそんな男ではない。
その通り、それに関してはアイクはすぐに頷いた。
「じゃあ俺のドコが駄目なんだよ、直すから教え……」
「詰まる所、姉貴に近付く男は全て気に食わん」
「……」
駄目だ。このシスコンには何を言っても無駄だ。
しかしこのままでは、きっとこの姉弟の為にならないだろう。
ここはマキアートをその気にさせてしまった方がいいと、ライはそう考える。
マキアートと両想いになってしまえばアイクも文句は言えない筈だ。
「アイクなぁ、オレがお前の兄貴になるかもしれないんだから、そう邪険にすんなってば」
「絶対にさせん」
「冷たい事言うなよ弟!」
それだけ言うと、ライは更に文句を言おうとするアイクをスルーして走り去ってしまった。
これは、早めにマキアートを落とした方がいいだろうと考えながら。
++++++
数日後、約束通りに珍しい果物を手にしたライがマキアートの許を訪れた。
数種類の果物があってどれも見た事のないものばかり。
取り敢えず硬い皮の果物を取ったライがそれを割ると、中から瑞々しい柔らかそうな果物が出て来る。
「ほらマキアート、食えよ」
ライが果物を手にしてマキアートの顔の傍に差し出す。
……どこからどう見ても「はい、あーんして」状態、しかも手から直接食べさせようとしているが。
ライの動作が余りに自然だった為に、マキアートはその事に気付かない。
嬉しそうな表情で素直に口を開く彼女に、こりゃチャンスだなとライは笑う。
が。
……突然背後からやって来たアイクが、ライの手にあった果物を食べてしまった。
「ちょ、おま! アイク!」
「あー! 何すんのよ!」
アイクは相変わらずの無愛想……だがやはり、機嫌が悪そうな感じ。
2人の抗議も全く意に介さない様子だ。
「あんたねぇっ……! 折角ライが、あたしの為に採って来てくれたのに!」
あたしの為、の言葉に、アイクがピタリと動きを止めた。
またまた険悪になっていくが、やはりマキアートは気付かないようだ……。
「姉貴の為に、か」
「何よ、その言い方」
どちらかと言うと下心満載であろうライのこの行動は、まさしくライ自身の為と言えるのではなかろうか。
しかしマキアートはライの好意には一切気付かないようだし、それを伝えた所で全くの無駄かもしれない。
大体、最近マキアートとライは親しすぎるような気がしてならない。
ライの方はマキアートを狙っているからだが、マキアートも最近、ライとばかり会っている。
もしマキアートもライの事が好きなのだとしたら……。
1/2ページ