今日は厄日だ


「おい、一志!
しっかりしろっ」

「目付きが変だぞ?」

聞き慣れたチームメイトの声に長谷川はハッと我に返った。

たった今まで確かに木馬に跨り、宮城や池上や木暮たちと三井争奪戦を繰り広げていたはずなのだが…

「……メリー、ゴーランドは?」

「何いってんだよ、大丈夫か?」

怪訝な表情の花形をスルーして店内を見回した長谷川は項垂れる

全部、夢…だったのか?

けれど自分の妄想が一体どの辺りから始まったのか、長谷川には全く分からなかった

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ブラインドの隙間からオレンジ色の光が店内に差し込んだ

台風一過、鳴り始めた踏切が電車の再開を皆に知らせる

ふと腕時計を見た藤真は、自分らがここに来てからまだ二時間も経っていなかった事に驚いた

店を占拠していた大男たちが皆一様に席を立つと、店長に安堵の笑みがこぼれる

彼らが会計の為に1列に並ぶ光景は滑稽極まりない

と、カランカラン…

ドアが押され、またしても現れた巨漢の男に店長の緊張が走る

「探したぜ!」

嵐の中、あちこち走り回っていたのか
男は全身ずぶ濡れで肩で息をしていた

「三っちゃんっ!」

呼ばれた三井はもちろん、店中の視線を集めたその男は堀田徳男だった

三井と親しげに話す堀田を羨ましそうに見ながら長谷川が呟く

「三っちゃん……か」

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客が誰も居なくなった店の後片付けをする店長とバイト生の2人

「今日は厄日でしたね、店長」

「全くだ、長い事ここで店をやってるが
こんな事は初めてだよ
君たちもよく頑張ってくれたね
ありがとう」

頭を下げる店長に「いえいえ」と恐縮する2人

「また明日から頑張ろう」

「「はいっ!」」

外はすっかり暗くなり、時折吹く強い風にキラキラと星が瞬いていた


【完】
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