彼女の秘密
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広い寝室の中心に置かれたクイーンサイズのベッド。そこには家主であるラウラと、その相棒であるバディが眠っていた。
タオルケットを腹のあたりにかけ、ゆっくりと胸を上下させるラウラは深い眠りについている。ショートパンツから伸びる引き締まった脚が目に毒だ。
その隣でバディも枕代わりのクッションに頭をのせて寝ていた。
そんな安寧の地に、忍び寄る影。
僅かな音を立てて寝室の扉が開き、大きな影が入ってくる。扉が開いた瞬間にバッと顔を上げて警戒心を露わにしたバディは、その人物を見て「またお前か」という顔をした。鼻をフンッと鳴らし、大きなあくびをしてからクッションに顎をのせる。だがその目は閉じられることなく侵入者をチラチラと見ている。
足音もなくベッドの横まで来た影、もとい赤井は眠るラウラの横に腰掛けた。
ベッドに散らばる金色。南国の海のような透き通った水色の瞳は瞼に隠され、長い睫毛が目元に影を落とす。ピンク色の唇は少しだけあいており、赤井は早くその唇に自分のものを重ねたくて仕方がなかった。
唇を親指でなぞる。その形、温度、柔らかさを指の腹で感じながら、その中にある舌への探究心を募らせる。
早く唇を重ねたい。早く舌を絡め合うキスをして、湿っぽく熱い吐息を感じたい。ドロドロに溶け合うように身体を重ねたい。そんな男の欲ばかり溜まっていく。
「……ん〜、」
「!!」
赤井が唇を何度もなぞりすぎたせいだろう。くすぐったかったのか、ラウラが小さな呻き声をあげながら顔を逸らし、舌で唇を湿らせた。その仕草にドクンと心臓が鳴り、衝撃をうけた赤井は再び親指で唇をなぞる。
そしてその指で自分の薄い唇もなぞった。親指を舐め、間接キスというお遊びに口角を上げる。
( まるでティーンだな… )
どうやら自分は、本命の前では余裕のない男になるらしい。赤井は自嘲した。
赤井はこれまでの人生で女に困ったことがない。学生時代はバーでバイトをしていたこともあり、それなりに遊んでいた。所謂一夜限りの関係だ。時折調子に乗った女が詰め寄ってくるのを素気無くあしらい、ただ自分の欲を発散するためだけに女を抱く。
そんな赤井は、誰かをこんなにも愛おしく思うのは初めてだった。標準装備されているはずのポーカーフェイスも、ほとんど動くことのない心も、知略を巡らせる脳みそさえ、ラウラの前では無に還る。
寝起きの気の抜けた姿、デザインを描く姿、バディと戯れる姿、鍋の焦げつきを一生懸命取る姿さえも愛おしい。
キッチンに並び料理をする時間、隣で映画を観る時間、互いに好きなことをしている時間さえ、ひどく心地良い。
リカーショップを見かければ自分の酒よりも二人で一緒に飲めるものがないか探してしまうし、スーパーでは好きだと言っていた菓子をつい探してしまう。
一挙一動で顔が緩み、隣にいるだけで心が安らぎ、何気ないことを全てラウラに繋げてしまう。
恋とは。愛とは。
こんなにも思考が鈍るものだっただろうか。
こんなにも生活に影響するものだっただろうか。
家事をするラウラを何度抱き締めたくなったことか。笑うラウラに何度キスをしたくなったことか。何度、髪の先から足まで自分の影に入れて誰にも見えないようにしたくなったことか。
いい加減、頭がどうにかなりそうだった。
( 早く、突き止めなくてはな )
ラウラの隠す秘密を。
ラウラの心の一番深いところにあるそれを。
早く突き止めて、早く返事を貰わなければ狂いそうだった。
「……お前は一体、何を隠しているんだ。…ラウラ、」
赤井はラウラの唇の横にキスをしてから静かに部屋を出て行った。
「おはよ、バディ」
今日もバディによってかわいく起こされたラウラは何度か瞬きを繰り返した。寝起き特有のぼやけた視界がようやくクリアになる。一通りバディを愛でた後、心を弾ませながらそっとベッドに触れて記憶を視た。
優しい手つきで頭を撫で、そのまま頬まで手を滑らせる。
長い親指が唇を何度もなぞり、最後はそれを己の唇に持っていく。
目を細め、心底愛おしくて堪らないという顔をしてラウラを眺める。最後に唇の横にそっとキスをした。
( っっきゃーーー!! )
ラウラはベッドにゴロゴロと転がった。この興奮を身体で発散させないと爆発しそうだった。
赤井は気付いてない。
毎日ラウラが寝た後に寝室にやってきて、少なくとも20分は滞在している。その間ただ寝顔を見つめていることが多い。時折触れているが、基本的に見つめているだけだ。穏やかな顔をして眠るラウラを、ずっと。
赤井は気付いていない。
気付かれていないと思っている毎日の夜這いが、ラウラに筒抜けということを。
ラウラは完全に眠っているため、バレるはずがないと信じて疑っていない。その自らへの自信すら、ラウラにはお見通しだということを。
赤井は、気付いていないのだ。
「ふふっ、」
ラウラはそれが面白くて仕方がなかった。
正式な返事はしていないものの、互いに互いを大切に想っていることなんてわかりきっている。だからこそ毎日夜這いにきていることに嫌悪感などありはしない。むしろ喜びすら感じる。
( あー、好きだなぁ… )
ラウラの秘密を解き明かした時、一体赤井はどんな顔をするだろうか。驚くだろうか。すごい力だと褒め称えるだろうか。
そしてある時気付くだろう。
あの夜這いは全て知られているという事実に。
「ふふっ、」
ラウラはもう一度笑った。その時を想像すると楽しくて仕方がない。あのポーカーフェイスが崩れて一体どんな顔が出てくるのか。
その時が、一秒でも早く訪れることを願っている。
