彼女の秘密
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18時半を過ぎても明るい7月中旬。
夏になり各地で祭りの気配がし始めた頃、米花町のとある公園も例外ではなかった。
中心に組まれた
花火こそないものの、古き良き地域密着型の祭りには多くの人が訪れていた。
「わー!! すごい人ですねー!!」
ワンショルダーのサマーニットにショートパンツ姿のラウラは、祭りの雰囲気にあてられてウキウキと弾みながら沖矢に話しかけた。
開放的なラウラとは違い、沖矢は首まで詰めたハイネックのインナーの上からシャツを羽織っている。
「何食べますか?」
「とりあえずビール!! 昴さんも飲むでしょ?」
「そうですね、折角ですし。」
「じゃあまずビール買ってから他行きましょうか!」
と言っても、ビールの屋台に行くまでの間に誘惑が多い。「あれ美味しそう」なんて言いながら立ち寄っていれば、ビールを購入するときにはラウラの両手はフライドポテトや揚げ餃子、焼きそばで埋まっていた。
見かねた沖矢がそれらを全て持つ。
「あ、すいません、ありがとうございます! 昴さんもビール特大でいいですか?」
「えぇ、もちろん。お願いします」
二人ともアメリカに住んでいたこともあり、日本で飲み物を購入するときは大抵一番大きいサイズを選ぶ。Mサイズなんて小さくてやってられないというのが二人の言い分だ。
無事ビールを手に入れた二人は、会場に設置されたテーブルにそれらを広げた。
「あ、焼きそばおいしい。昴さんもはい、あーん」
「……ん、美味いな。」
一応言っておくが、二人は付き合っているわけではない。
互いに好意を持っていることに気付いているが、ラウラの秘密を赤井が暴くまで先に進むことができない。つまりこれは、両片想い状態、しかも互いに相手が自分に好意を持っていることに気付いているため、もうそれは両想いだ。
だが沖矢が彼女の秘密を暴かなければ、告白の返事すら貰えない。「私の秘密を暴いてみなさい」という、ラウラから沖矢への挑戦状なのだ。
だが、両想いであることをわかっているだけに、こうしてカップルのような行動をとってしまうこともある。「なら挑戦状など取り下げてしまえ」とも思うが、そういうわけにもいかないのだ。もはや意地である。
「この揚げ餃子も美味いな……作れるか?」
「うーーん……だいぶ面倒ですよ? だってまず餃子作るのが面倒ですから。餃子の具を炒めてから冷まさないとダメなので、時間もかかりますし。さらに言えば包むのが………ちょっと待って、絶対楽しい」
餃子を包むのにはコツがいる。基本的に器用で何でも卒なくこなす沖矢だが、料理のことになると話が変わってくる。そんな沖矢、いや赤井と餃子を包むのはさぞ楽しいだろう。不恰好な餃子ができそうだ。
ラウラはその時のことを考えてクスクスと笑った。
「あ! ラウラお姉さんと昴さんだー!」
二人が声のした方を見れば、いつもの少年探偵団とその引率として女子高生組がいた。
「やぁおふたりさん。仲良くデートかい?」
「あら真純ちゃん。まぁそんなところ。」
「おっと、」
世良は想像していたものと違う反応が返ってきて面を食らった。蘭のように「デートなんかじゃないわよ!!」という反応を期待していたのだが、まさかの肯定。思わずラウラの向かいに座る沖矢を見てしまった。
「何か?」
「………いや、何でもない。」
「デート?! お姉さまと昴さん遂にくっついたのっ?!」
「別に付き合ってるわけじゃないけど…」
「なのにデートしてるのっ!?」
「デートってカップルだけじゃないもの。男女二人で出掛けることもデートって言うわ。……まぁ、私たちの場合は、、、ねぇ、昴さん?」
「えぇ、そうですね」
どこか含みを持つ言葉だ。二人は目を合わせて優しく笑う。その雰囲気に当てられた園子は先程までの勢いはどこかに飛んでいき、顔を真っ赤にした。
「ねぇねぇ、ラウラさん浴衣着ないの?」
園子の反応に「純粋っていいね」なんて思いながらクスクス笑っていたラウラの腕をコナンが引っ張った。コナンはデザイナー兼モデルのラウラが浴衣を着る機会の逃すとは思えなかったのだ。だが彼女は浴衣を着ていない。浴衣を着ると暑いことも一因かもしれないが、コナンは不思議だった。
「考えたんだけどねー。前に浴衣着たときすごい辛かったのよ」
「?? なんで? 暑いから?」
「ううん。浴衣とか着物って胸が大きいと綺麗なラインにならないじゃない? だから胸を潰して着たんだけど、すっっごい苦しくて!!」
コナンと世良はそう訴えるラウラの胸を見た。サマーニットをこれでもかと押し上げる豊かな膨らみ。内臓が全て入っているのか不思議になるほど薄い腹と比べると、その差がより一層目立つ。誰が見ても巨乳なのだ。
( 確かにそれを潰すのは辛いだろうね…… )
( いつ見てもデッケェ…… )
鼻の下を伸ばして胸を見る二人とは違い、沖矢はチラリと見てから平然とビールを飲んでいる。これが大人だ。
コナンの頭を灰原がスパンと叩き、正気に戻させる。叩かれて頭をおさえるコナンに世良はイタズラ小僧のような顔で言った。
「ボクこの前触らせてもらったけどさー、すっごい柔らかかったよ!」
「え?! 触ったの?!」
「うん。いいよって言われてね。」
「ふふ、コナンくんも触る?? 今なら許すよ?」
ラウラがそう言った瞬間、沖矢の目が開きコナンを鋭い視線で突き刺した。コナンの正体に気付いている沖矢としては絶対に許せなかった。それは灰原も同じで「絶対触るなよ」という目でコナンを睨んでいる。
その二人の反応をわかってこんな提案をしてくるあたり、ラウラもイタズラ好きである。
「………え、あ、ううん、大丈夫……」
コナンは冷や汗をかきながらそう言うのに精一杯だった。
「水鉄砲やろうぜ!!」
「いいですね! 行きましょう!」
「あ、みんな待って! じゃあラウラさん、昴さん、私たちはこれで。」
「あ、蘭ちゃん、これ良ければみんなで使って?」
ラウラは蘭に五千円札を握らせた。驚く蘭を宥めてその背を押す。
「ほら、早く行かないと見失っちゃうよ?」
「すいませんラウラさん! ありがとうございます!!」
「いえいえ〜楽しんでおいで〜」
慌ただしく去っていった背中を見送ってから、ラウラと沖矢も立ち上がった。いつの間にかビールも尽き、食べ物もなくなっていたのだ。とりあえず腹はある程度満たされたため屋台を冷やかしていると、目に入った文字にラウラは沖矢の腕を引っ張った。
「昴さん、射的!! 射的やりましょ!!!」
「フッ、いいだろう。」
沖矢にやらせるには申し訳なさすぎるほどのセットである。
まさか世界的な狙撃の名手が訪れたことなど夢にも思わず、店主はにこやかに対応した。
「へい、いらっしゃい。200円で5発撃てるよー。番号がかかれた札を倒すことが出来れば景品ゲットだからねー」
「せっかくなので私もやります! 狙うはあのボーダーコーリーのキーホルダー!!」
射的の景品を見た瞬間に目に入ったキーホルダー。ボーダーコリーを模したそれはバディによく似ており、飼い主としては絶対に手に入れたい逸品だ。
ラウラは店主から銃を受け取ると、もらった弾を装填しようとした。が、彼女は銃に触れたことがないためどこに装填すればいいかわからない。
見かねた沖矢が横から助言する。
「フッ、ここだ。これを開けて、弾を入れる」
「わ、すごい! さすが!!」
蓋を閉じて、映画やドラマで見るような構えを取ったラウラだったが、プロからすれば全くなっていないようだ。すぐに沖矢の指導が入る。
「両脇を閉めて肘を腰骨にのせるように。上体を少し反らすと安定する。顔を傾けるな。」
後ろから包み込むように姿勢を修正した沖矢は意外と容赦がない。
「ひんっ、難しいよぉ〜しかもすごい厳しいです、先生……」
「大丈夫だ。絶対当たる。」
そう言われれば当てるしかないではないか。ラウラは目標を認めると目を瞑って深呼吸してから引き金を引いた。
「やったー!!!」
「初めてにしてはなかなかだったな。」
「ありがとうございます、先生♡」
ラウラは3発目で無事にキーホルダーを獲得することができた。よほど嬉しいのか頬が緩みっぱなしである。
さぁ、次はプロの技を見せてもらおう。
沖矢は鮮やかと言える手つきで弾を装填した。手元すら見ていない。彼にとってはそれだけ身体に染み付いた作業なのだ。
そして音もなく構えると左眼だけ開いて照準を合わせた。その姿は赤井そのもので、世良が見ればすぐに死んだはずの兄だと気付くだろう。
狙うはもちろん、目玉商品のテレビにも繋げる携帯ゲーム機。「1」の番号が振られたそれは、信じられないほど番号札が小さい。
「いやぁ、お兄さん上手だねぇ。おじさん参っちゃうよ〜」
その世界では知らぬ者はいないほどの狙撃の名手に、町内会の祭りの射的は簡単すぎた。
「これどうするの?? 昴さんゲームするの?」
「いや、阿笠さんの家に置いておけば、子どもたちが遊ぶと思ってな。」
「そうだね!! 優しい! じゃあソフトは私が買うね!」
何がいいかなと悩むラウラの手を引いて沖矢は歩き出した。二人の手は家に着くまで離れなかった。
