二人だけの秘密
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古いビルは近々取り壊される予定らしく、中は何もなくがらんとしていた。窓もそう多くないため、日も暮れて暗くなってきた今は非常に不気味である。肝試しには最適だろう。
ラウラは何か出そうな雰囲気に思わず昴の服を掴んだ。彼女の気持ちを察した昴が優しく笑う。
「クックックッ……こういうのは苦手か?」
「うん。怖いもん」
「外で待っているか?」
「そっちの方が怖いから無理! ……ッ!!」
昴が急にラウラの口元を手で覆う。
驚いたがすぐその大きな手にドキドキしてしまった。鋭く先を見据えて警戒する様子ですらかっこよく見えるのはなぜだろうか。と、ラウラは自分に問いかけて自分で答えを出した。そんなの決まっている、惚れてるからだ。
「……あのガキの…、遠ざ……んだっ!!!」
男の声が聞こえた。誰かと話しているが相手の声が聞こえないため、電話しているようだ。
昴は声のした方をジッと見つめてから、ラウラに向き直った。
「まずはあいつを落としてくる。お前はここにいろ。」
「ん」
目を見てこっくりと頷く。
そっと外された手を名残惜しく思いつつ、ラウラは頼りになりすぎる背中を見送った。
「大人しく待っていようね、バディ」
全く吠えずにお座りして待っているバディは本当に賢すぎる。
すぐに「う"っ」という呻き声と、ドサッと何かが落ちる音が聞こえた。
ラウラが懐中電灯を持ってこなかったことを後悔しながら一歩ずつ進んでいると、階段下で太った男が伸びていた。現役FBI捜査官の容赦ない突きを食らったのだろう。自業自得である。
コツコツと靴を鳴らしながら階段を上がる昴に着いて行く。隠れたり物音を立てないようにしないところを見るに、素人相手にはその必要すらないのだろう。やはりこの男、頼りになりすぎる。
1階から順に各階を見回りするように歩いていた二人は、廃ビルに似つかわしくないものを見つけた。
「コナンくんたちのランドセル!」
「入ってしまったきり出られなくなったのだろう。」
積み重ねられた4つのランドセル。色やストラップを見る限り、灰原以外の4人のものだった。すぐ近くにフレームが曲がったコナンのメガネも落ちている。
昴はそのメガネの破損度合からコナンの怪我を推測した。
「何かで頬を殴られたようだな……出血はないが、脳震盪にでもなったのだろう。でなければあのボウヤがそう簡単に捕まるわけがない」
ラウラが壁に触れて記憶を視ると、昴の予想した通りだった。サッカーボールで相手を戦闘不能にしようと思ったが、偶然もう1人が開けた扉にぶつかり、隙が出来たところを殴られたようだった。
ラウラはその記憶と同時に、建物全体の数秒前の記憶も視た。
「相手はあと1人。最上階の1番奥の部屋にいるみたい。そこでコナンくんと哀ちゃんが捕まってて、子どもたちはロッカーに隠れてて出ようにも出れない状況。」
「最上階に急ごう」
「うん!」
一方その頃コナンたちは、絶体絶命のピンチに陥っていた。コナンと灰原が捕まっているため生粋の小学一年生三人組を頼りにするしかない。色々な方法で建物内に散らばった皆のスマホを鳴らして犯人たちを撹乱させたのはよかった。しかし上手く事が運んだことで気が緩んだのか、元太たちは隠れていたロッカーの中で普通の音量で話してしまったのだ。
「……そういや、この部屋の中は確認してなかったな…」
元太たちがこの部屋にいると確信している男は今まで散々コケにされたため怒り心頭に発している。見つかれば元太たちは愚か、コナンと灰原もどうなるかわからない。まさに絶体絶命。
そんな時、最上階に足音が響いた。目の前の男のものではないその音に、男の顔は喜色に、コナンたちの顔は絶望に染まる。
「あいつどこほっつき歩いてたんだよ」
文句の一言二言言わなければ気が済まない。そう思い、男は部屋を出て行った。そして自分が思っていたのと全く別の人物だったことに気付いた瞬間、意識は闇に沈んだ。
コツリと革靴の音が響く。その後にスニーカーの鈍い足音とカッカッという爪の音。コナンと灰原はその足音の持ち主が誰であるかわかったようで、ほっと胸を撫で下ろした。
現れたのは昴とラウラ、そしてバディだ。
「ラウラおねえさん!!!」
「みんな無事で本当によかった!」
ラウラは半泣きで飛び込んできた歩美を抱き締めた。両手で頬を包んで怪我がないことを確認する。
結果的に怪我をしているのはコナンだけだった。コナンの頬は相当強い力で殴られたもので、肌が青紫色になっている。見るだけで痛々しい。
「昴、バッグの中のポーチ取ってもらってもいい?」
「あぁ、これですか」
「ありがと」
ラウラコナンの前に膝をつくと、ポーチからウェットティッシュと湿布を取り出した。
「ジッとしててね〜」
「昴さんとラウラさんはどうしてここに?」
「喋らないの。」
「あ、はい、すいません」
湿布を貼ろうとしているのに口を動かすコナンにラウラはピシャリと注意した。
「夕方になっても灯りがつかないから様子を見に行ったら、玄関の鍵が開いているし博士もそこの少女もいなくてね。どうしたものかと思っていたら電話が鳴って、二度も無言で切られてね。これはおかしいと思って、予備のメガネを借りてここまでやって来たってわけさ。」
饒舌に語る昴だが、中身が秀一だと思うと面白い。秀一は積極的に話す方ではないため、頑張って話している彼を見ると応援したくなる。
昴を陰ながら応援するラウラとは違い、灰原はまるで嫌なものを見るかのような目を彼に向けていた。
「家に灯りがつかないからって様子を見にくるなんて、まるでずっと監視していたみたいだわ。」
「……えぇ、ずっと見ていましたよ」
灰原の反応は正常だ。
だが灰原の身を守るためにはそうするしかない。元はと言えば昴が怪しい雰囲気を出してそんなことを言うから灰原が警戒するのだ。彼は怖がる灰原を見て面白がっているに違いない。
「お昼にカレーを作りすぎてしまってお裾分けを、と思いまして。」
「「へ、」」
「「「カレー!!」」」
きょとん、としたコナンと灰原、そしてカレーにテンションが上がる三人組。お裾分けという口実を作るためにわざわざ買い出しに行って大量のカレーを作った昴に、全ての事情を知るラウラ。
同じ言葉でこんなにも反応が分かれることは珍しい。
「え、じゃあ誘拐されたじいさんって、もしかして……」
「えぇ、みんながよく知る……阿笠さんです。」
「「「博士ぇ?!」」」
昴が開けたロッカーの中には窮屈そうに身体を折り曲げられたまま眠っている阿笠の姿。誘拐されたというのに呑気にイビキをかいて眠っている。
「ほら阿笠さん、起きてください」
縄を切りながら阿笠を起こす昴を横目に、ラウラは複雑な表情をしている灰原に向けて困ったように眉を下げて笑った。
