コウメイさんの奥さまは、
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襖の向こう側ではうるさくない程度の話し声が聞こえる。店内に流れている落ち着いた音楽の助けもあり、内容まで聞こえるものではない。
そんな個室居酒屋で一向は食事をしていた。
「お肉おいし〜!」
「以前敢助君と共に上司に連れられて来ましてね。美味しかったので美桜とも行きたいと思ったのです。」
「ふふっ♡」
共に美味しいものを食べたいと言われた美桜は顔を綻ばせた。美味しいものを食べれば幸せな気持ちになるが、愛しい人と食べればもっと幸せな気持ちになる。その証拠に、高明もいつもの硬い表情を和らげて料理を口に運んでいる。
「美桜、この刺身は美味しいからぜひ食べてください」
前回食べて知っている高明はおすすめの刺身を美桜の皿に載せた。箸で口に運ぶことはしないが、充分に仲が良いことが窺える。
「美味しい!」と目を輝かせる美桜が心底可愛くて仕方がないようで、自分は箸を置いて美桜の食べる姿を眺めている。時折日本酒を煽るあたり、酒の肴にでもしているのだろう。
「「……」」
そんな美桜と高明の反対側の席には大和と上原が座っていた。二人ともチベットスナギツネのような顔、所謂チベスナ顔で酒を煽っている。恋人のいない独身に万年新婚夫婦の日常はさぞかし辛いだろう。
「それで、大和さんと由衣ちゃんはどうなの?」
「どどど、どうってなにが?」
急に話を振られた上原は慌てて酒を置いて手を膝の上に載せた。どもりすぎである。
「なにって、恋よ! 恋!! 好きな人いるんでしょ? 告白したの?」
「……ま、まだだけど、」
「いつまでそのままのポジションでいるつもり? 女の全盛期は短いんだよ!?」
美桜は上原と同い年のため全く容赦がない。片や既婚者、片や初恋を拗らせ続けて気軽に「好き」と言えない年齢になってしまった女だ。まだ20代前半のため若さがあるが、あと5年もすればアラサーという大変不名誉な称号が付くのだ。残された時間はそう多くはない。
「で、でも……、」
「でもじゃないよ、由衣ちゃん!! 押して押して押しまくってからちょっと引くと男は落ちる!!!」
「……、」
偶然とはいえ、そうやって落とされた男は額を押さえて俯いた。実例がここにいるため美桜の話の信憑性が爆上がりしてしまう。男は皆それで落ちると思われても困るのだが、簡単に落ちそうにない男がそれで落ちてしまったから何も言えない。
「……美桜、彼女には彼女のペースがありますから。ね?」
「え〜〜、でもこの二人多少強引にいかないと進展しないよ?」
「それでも、です。人の恋路に口を出すものではありませんよ」
「はぁーい」
美桜は少しだけ頬を膨らませて気の抜けた返事を返した。
「ただいま〜」
ドタバタといつもより大きな音を立てて帰宅した美桜は玄関ポーチ以外真っ暗な我が家に向かって大きな声でそう言った。
「ただいま戻りました」
「んふっ、おかえりぃ〜♡」
後から入ってきた高明もそう言うと、美桜は嬉しそうに腰に抱き付いた。高明の胸に顔を埋めたかと思うと、すぐに高明を見上げて嬉しそうに言葉を返す。その笑顔といったらもう。高明は愛おしさのあまりに額にキスを落とした。
「ん…、こっちは〜?」
「はて、どこでしょうか? ……あ、こちらですね」
言外に「額じゃなくてこっちにして」と唇を突き出してくる美桜に、高明は唇にすると見せかけて頬にしたり、瞼にしたりと焦らして遊んだ。その度に頬をぷっくりと膨らませて「不満です!」と顔に描くものだから、もう可愛くて仕方がない。
美桜は高明の首に手を回して顔をグッと近付けた。そのままキスするのではなく、真っ赤な舌で高明の唇をぺろりと舐めた。すぐに顔を離して挑発的な目で見てくるものだから、高明は堪らず唇同士をくっつけた。
誘い込むように開いた隙間に舌を入れて口内を蹂躙する。ぴちゃと湿っぽい音を聞きながら口付けを続けていると、美桜がパッと離れた。
「おーしまい!」
「……ハ、」
自分だけ満足した美桜はよろけながら靴を脱ぐと、鼻歌を歌いながら廊下を歩いていく。さっさと入浴して眠るつもりなのだろう。
スイッチの入りかけた高明を置いて。
「……、」
高明はまたもや額に手をやるとため息を吐いてから自分を靴を脱いだ。
やはり妻には勝てそうにない。
酔っ払う。
