コウメイさんの奥さまは、
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「っわ〜〜!!! すっごーーーい!!」
「ほう、これはなかなかですね。」
一面の巨大水槽の中を悠々と泳ぐ魚たち。イワシの大群が小型のサメを避けて形を変え、またすぐに一つの生き物のようにまとまって泳いで行く。
高明と美桜は水族館に来ていた。
海に面していない長野県にはたったひとつの水族館しかないため、2人は遠く離れた横浜の水族館にきている。日帰りだがちょっとした旅行である。
朝4時に家を出て途中交代しながら車で約4時間。着いてから軽く仮眠をとり、開館と同時に中に入った。平日の開館直後ということもあり、館内はほぼ貸切状態で人が少なかった。
そして入り口すぐの巨大水槽に夢中になっているというわけだ。
「なんでまとまって泳いでるの?」
「イワシは生きていくのに大量の空気を必要としています。そのためには海面近くでないと生きていけず、そこには身を隠すための岩場がありません。なのでまとまって泳いで、外敵から狙われるリスクを減らしているんです。」
「へ〜〜〜!! でもそれって自分の代わりに誰か食べられてるってことでしょ?」
「ふっ、そうとも言えますね」
「それってなんか……残酷。」
「自然界は厳しいですから。」
物知りの域を超えているレベルの高明が隣にいると、水族館もより一層楽しめる。
別の水槽にはイソギンチャクとカクレクマノミがいた。あの映画ですっかり有名になったカクレクマノミは驚くべき生態がある。
「カクレクマノミは最初、オスメスがない状態で生まれてくるんですよ」
「え、そうなの!?」
「群れの中で一番大きいものがメスとなり、次に大きいものがオスとなる。何らかの要因でメスが死んだ時、二番目に大きかったオスが性転換してメスになるのです。」
「えぇぇ〜〜〜!? すごーーい!!」
イソギンチャクの中で外敵から身を守りながら暮らすカクレクマノミは性転換が出来るのだ。人間では到底考えられない生態だ。「自然界の生き物ってすごい」と純粋に感心する。
別の水槽にはもこもことした毛で覆われたカニがいた。このカニも面白い生態がある。
「キケブカキンチャクガニですね。鋏の部分、見えますか?」
「……なんか持ってるね。……イソギンチャク?」
「そうです。このカニはイソギンチャクを鋏で持って武器として使うんですよ」
「え〜〜〜!?」
「しかも使い終わったイソギンチャクは自分で食べます。」
「武器にもなって食べ物にもなるってこと!? すごいエコだね!」
そんな風にひとつひとつの水槽をじっくり見ていくとあっという間に時間が過ぎていった。人も少しずつ増えてきた中、2人を出迎えたのはトンネル型の水槽だ。
海の中に入ったような体験が出来るここは非常に人気が高い。魚が泳いでいるのを下から見上げる体験は中々出来るものではない。
「……すごい、」
「綺麗ですね」
「…ぅん」
上を向けば小さな魚の大群がひとつの塊になって泳ぎ、それよりも大きな魚が横を突っ切っていく。下から見ると笑っているように見えるエイが視界の下の方から登場すると、美桜の顔もそれに合わせて動いていく。
「………っと!」
上へ向かっていくエイを見ることに夢中になっていた美桜は、後ろにひっくり返りそうになったところを高明に支えられた。
「全く…本当に貴女から目が離せませんね」
「えへへ、ごめんね。ありがと!」
わざとらしくため息を吐いてみせた高明に美桜は笑いながら礼を言う。
夢中になってひっくり返りそうなところも可愛いと思ってしまう。その後に照れたように笑うのもまた愛おしい。
高明はトンネル型水槽の下で美桜の腰に手を回して抱き寄せた。
「いつもありがとうございます。私は美桜に助けられてばかりです。……愛しています」
「ふふっ、私こそだよ、高明さん。いつもありがとう。私も愛してるよ」
2人は誰もいないことを良いことにそのまま触れるだけの口付けをした。唇を離した後も柔らかい表情で微笑みながら見つめ合う。
「あー!! チューしてるー!!」
「「!!」」
子どもの声がした途端素早く離れた2人が「見られちゃったね」と照れたように笑い合っていると、母親が話しかけてきた。
「あの、よろしければ写真お撮りしましょうか?」
「え、いいんですか!?」
「えぇ、人もいないことですし」
美桜が携帯を渡すと母親はカメラマンのスイッチが入ったのか、地面に片膝をついて撮影に入った。
「チューして!!」
「えぇぇ!?」
「パパとママもチューしてるよ! だからチューして!」
「こら、余計なことは言わないの!」
旦那との日常を子どもによって晒された母親は顔を赤くしながら子どもを叱っている。その姿が面白くて、高明と美桜は互いの顔を見てから頷いた。
そして先程のように腰に手を回し、もう片方の手で頬に触れるとそっと顔を近付けた。水槽が青く輝いているため2人の顔は見えないが、どう考えてもキスしているように見える。
ゆらゆらと揺れる水面と魚の鱗で反射した光が優しく降り注ぐ。この世界に2人しかいないと錯覚するような美しい光景。
母親は幻想的な光景に目を奪われながらもシャッターをきった。
「楽しかったね!」
「えぇ。来た甲斐がありました」
数時間後の水族館出口にはイルカショーやふれあい体験などを満喫した高明と美桜の姿があった。高明の手にはお土産ショップの袋。中には魚や貝殻で飾られた写真立てが入っている。
帰宅後すぐにリビングに飾られた写真は、何年経っても変わらずそこにあった。
旦那と水族館に行く。
