虚化篇
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あと少しで定刻になるという頃、一番隊には隊長格が次々と集まっていた。しかし十年前の十一人の隊長格が行方不明になった事件の影響か、全員揃っても空きが目立つ。
定刻になったことを確認した山本元柳斎重國、もとい護廷十三隊総隊長は、斬魄刀を擬態させた杖を床に叩きつけた。
「よく来たな、皆の者。これより、かねてより通達しておった、七番隊隊長の就任式を執り行う。」
山本は「入れ」と扉に向かって声をかける。雀部によって開けられた扉から入って来たのは小柄な女性だった。
「「「…!!」」」
他の者より長い隊長羽織は地面に付く手前の長さで内側は胡桃染色に染められている。薄紫色の帯は細い腰を強調させるように腰に巻きついている。
毛先がカールした薄い金色の髪を靡かせながら歩く。帯と同色の目は目尻が優しげに垂れており、前をまっすぐ見つめていた。右耳には金色にピアス、左手の薬指には金色の指輪が嵌められている。
そして驚くべきことに、彼女の腰には斬魄刀が
「ほぅ…斬魄刀が二本カネ。ぜひ研究してみたいものダネ。」
彼女は皆の視線を集めたまま、山本に促されその薄く色付いた口を開いた。
「この度七番隊隊長を拝命いたしました、涼森 美桜と申します。よろしくお願いします。」
「八番隊隊長京楽春水、及び十三番隊隊長浮竹十四郎両名の推薦を受け、隊長三名の同席のもと隊首試験を実施した。その結果、隊長になる資質・能力ともに不足なしと判断した。……よってここに、涼森 美桜を護廷十三隊七番隊隊長として任命する!」
その後山本が伝達事項を伝えてから隊首会は解散となった。足早に一番隊を去っていく隊長格が多い中、美桜は京楽と浮竹の元へ向かった。
「美桜ちゃん隊長羽織似合ってるじゃないの。」
京楽は隊長羽織を纏った美桜を眩しそうに見つめた。彼の中では美桜との出逢いから今までのことが走馬灯のように巡っていることだろう。
「ありがとうございます、京楽隊長。」
いつもの呼び方ではなく隊長呼びされた京楽は嫌そうに顔を歪めた。
「いつもみたいに春兄って呼んでよ〜。」
「今はお仕事中ですから。」
ピシャリと言い放つ美桜。とりつく島もない。
「よく似合っているよ、美桜。」
「ありがとうございます、浮竹隊長。具合が悪くなったらいつでもおっしゃってくださいね。」
浮竹の後ろには副隊長と思われる男がいた。短い紺色の髪に溌剌とした雰囲気を持つ長身の男だ。
「紹介しよう。数年前から俺の副隊長をしている、志波海燕だ。」
「志波海燕です、よろしくお願いします」
「涼森 美桜です。浮竹隊長は私の師でもあるので、十三番隊には顔出すことが多くなると思います。よろしくお願いしますね」
美桜はふと気付いた。そう言えば何年か前に副隊長を任せたい男がいるが、中々承諾してくれないと言っていたではないか。
「もしかして、口説き落とすことに成功したのですか?」
「あぁ! ようやく了承してくれてね!!」
「浮竹隊長、そんなことまで話してたんすか?」
「それだけ浮竹は志波君を口説き落とすのに必死だったってことさ。」
「いやぁ、まぁ……」
どこか照れくさそうに笑う志波を三人で囲んで笑っていると、七番隊副隊長の小椿が美桜の元にやってきた。
「ご歓談中失礼します。涼森隊長。」
「はい、今行きます。……じゃあこれからよろしくお願いしますね」
「いってらっしゃ〜い」
美桜は三人に挨拶をしてから七番隊隊舎へと向かっていった。
七番隊に属する隊士たちの間では新しい隊長の噂が飛び交っていた。
「新しい隊長は女らしいぜ。」
「小椿副隊長が引退されるってマジなのかよ。」
「俺は愛川隊長の行方がわかってねぇのに、新しい隊長がくるってのが納得できねぇ」
そのとき、隊士たちの間を白い羽織が通り抜けた。
何千という護廷十三隊の隊士の中でも、その羽織を着ることを許されているのは僅か十三人だけ。黒い死覇装の中で白い羽織を着れば、否応にも目立つ。
隊士たちはその羽織の持ち主が新しい七番隊隊長であることを理解した。
「一時間後に大広間に集合して欲しい旨を皆に伝えてもらってもいいかしら?」
美桜は近くにいた隊士にそうお願いをする。
その優しげな薄紫の目に見つめられた隊士は顔を真っ赤にして何度も頷いた。
「は、はい!! かしこまりました!!」
美桜はそんな隊士を不思議そうに見ながら、小椿に案内されて隊舎内へと入っていった。
「優しそうな隊長だな。」
「すっごい綺麗な人〜!!」
「斬魄刀二本なかったか?」
扉が閉まった途端、それまで固まっていた隊士たちは近くにいた者と話に花を咲かす。
一時間後の大広間には七番隊の全隊士が集結していた。皆壇上にいる美桜を見上げている。その視線には戸惑いや困惑が多く見受けられ、中には怒りや安堵といった視線もあった。
「皆さん初めまして。七番隊隊長に就任しました、涼森 美桜です。思うところはあると思うけど、よろしくお願いしますね。」
今回の就任は小椿の引退が大きな理由だ。様々な噂が飛び交っているが、ここで正式に発表する。
「もう知っている人もいると思うけど、小椿副隊長が引退されることになりました。正式な時期は未定ですが、私への引継ぎが終わり次第と考えていただいて構いません。」
小椿は隊士に向かって一礼する。隊士たちは長年副隊長を務めていた小椿の引退にショックを受けている様子だが、噂を知っていたため受け入れることができているようだった。
「最後に、私が作りたい七番隊についてお話しします。合わないと思った方は遠慮なく移隊していただいて構いません。できるだけ便宜を図らせてもらいます。」
そう前置きしてから、美桜はずっと考えていたことを告げた。
今の護廷十三隊で回復を担うのは四番隊だけだ。山本の方針で四番隊は前線に出ることを禁じられているため、治療が間に合わず四番隊に辿り着いたときには手遅れのことも多い。
例えば、戦場から負傷者を速やかに離脱させ、応急処置を施してから四番隊に搬送する部隊があったらどうだろうか。戦う者たちも守る者がいなくなることで戦略の幅が広がり、負傷者の生存率も確実に上がるだろう。美桜がやりたいのはそういうことなのだ。
「回道を会得していて、なおかつ瞬歩が得意な隊士となると少数精鋭でやっていくことになると思います。でもこの役割を持つ者がいるだけで生存率が変わると思うの。」
自分の能力がそれに向いているかどうかはさておき、そういう隊があれば生存率が格段に上がることを皆理解しているようだ。悪くない隊士たちの表情に美桜は嬉しそうに頷いた。
