虚化篇
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護廷十三隊十二番隊隊長に浦原喜助が就任してから、早九年が経過した。
この九年で技術開発局は誰もが一目置く存在となり、日々尸魂界の発展に繋がる研究を行っている。
初めの数年は激動ともいえる時代だった。だがそれも今は安定し、時折爆発音は聞こえるものの穏やかな日々が流れている。
喜助は副官の猿柿ひよ里と三席の涅マユリを連れ、下駄を鳴らしながら瀞霊廷を歩いていた。
偶然近くにいた真子はその下駄の音を聞き、喜助に気付くといつもの口調で声をかけた。
「おっす。おはようさん。」
「お。おはよっス、平子サン。」
「真子でええ言うとるやろ。めんどいやっちゃなぁ。」
真子は平子サン呼びが気に入らないのか、喜助に会うたびに同じことを言っている。しかし喜助は幼馴染の夜一さえサン付けで呼ぶような人物だ。全員サン付けなのは彼なりのモットーなのかもしれない。
「おはようさん、マユリ。」
マユリと呼ばれた男の顔は目元だけ黒、それ以外は白く塗り潰しており、随分と変わった出立ちだった。マユリはその不気味な顔を最大限に歪めると言葉を吐き捨てた。
「よそよそしく涅と呼べと言っているだろう。不愉快な男ダネ。」
「……めんどいやっちゃなぁ。」
真子が喜助に要求していることと、マユリが真子に要求していることは同じだということに真子は気付いていない。
真子は思い出したように喜助に向き直った。話を聞いた時から喜助の意見を聞きたいと思っていたのだ。
「そいや、聞いたかお前、あの話。」
「どの話っスか?」
喜助の質問に答えようとした真子だったが、突如飛んできた足に太ももを蹴られ、続きを言うことは叶わなかった。
「イタァァ!! なにすんねんひよ里!」
蹴り飛ばした本人は怒りで顔をピクピクさせながら、真子を見下した。
「ウチへの挨拶が、まだや。一人にだけ挨拶せぇへんってどーいうことやっ!!」
「なんでお前に挨拶せなあかんねん!」
取っ組み合ってギャーギャーと騒ぐ二人を横目に、藍染が真子の代弁者となった。
「そうだ、浦原隊長。もう耳にされましたか?」
「何をっスか?」
「流魂街での変死事件についてです。」
「…変死事件?」
ひよ里との取っ組み合いをやめ、先程までのふざけた雰囲気をしまい込んだ真子が真剣な目で言う。
「そや。ここ一ヶ月ほど、流魂街の住民が消える事件が続発しとる。原因は不明や。」
「消える? どこかへいなくなっちゃうってことっスか?」
喜助の見当違いな言葉に真子の顔が呆れたものに変わる。
「あほか。それやったら蒸発って言うわ。大体蒸発やったら原因なんて知るか。」
蒸発なら隊長格にまで話は上がってこない。魂魄のバランスが崩れるのは困るが、基本的に流魂街の人々がどうなろうと知ったことではないからだ。死神にとってあくまでも流魂街の人々はバランスを保つための手段であってそれ以上でもそれ以下でもない。
真子は再び目を鋭くして口を開いた。
「死ぬんやったら着とった服も一緒に消えるやろ。……ちゃうねん。消えるんや。服だけ残して、跡形もなく。死んで霊子化するんやったら、着とった服も消える。……死んだんやない。生きたまま人の形を保てんようになって、消滅したんや。そうとしか考えられへん。」
「生きたまま、人の形を保てなくなる…?」
「すまんなぁ。俺も卯ノ花隊長に言われたことそのまま言うただけやから、意味わからへん。ともかく、それの原因を調べるために今、九番隊が調査に出とる。」
そんなことがあるのだろうか。卯ノ花からこの話を聞いた真子も最初は「んなわけないやろ」と心の中で否定した。死神も人間も、普段自分がどのようにして人の形を保っているか気にしたこともないだろう。人の形であることが当たり前で不変の事実であり、人間でいうなら深海に行くなどの余程のことがない限りその事実は変わらない。
だが、実際に起こってしまったのだ。
何か命の危険がある場所に行ったわけでもなく、生活圏内で突然人の形が保てなくなってしまったのだ。
もう、誰にも止めることなど出来なかった。
