千年血戦篇
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中心部にある城のような建物の天辺で、敵の訪れを今か今かと待ち続けていた男がいた。
顔の上半分を両端に翼がついた仮面で隠している一方で、鍛え上げられた肉体は惜しみなく曝け出されている。背中には赤いマントが風に揺れ、剣と盾を両手に持っている男の名は、ジェラルド・ヴァルキュリー。聖文字はM。
「侵入者たちよ!! よくぞここまで来た!!」
まるで客を歓迎するかのように両手を広げて笑う。
「一対一では奇跡が起きても我を倒せまい。全員で来い!!!」
わかりやすすぎる挑発だが、ジェラルドを倒さなければ前に進めない。阿散井や白哉が斬魄刀を解放してジェラルドに向かっていく。
当然、護廷十三隊の隊長格複数相手に能力の解放なしで敵うわけもなく、ジェラルドは敗北した。しかしそれこそが狙いだとは誰も思わなかった。
「ナメやがって……こっちは護廷十三隊の隊長副隊長何人いると思ってんだ……てめぇ一人で勝てるわけねェだろ」
「……勝てるわけがない。本当にそう思うか?」
ジェラルドは不敵な笑みを見せる。身体は血塗れで、一見ジェラルドが不利なように見える。だがジェラルドは悠然とした態度を崩さなかった。
「ならば我が貴様らに勝てば、それは奇跡ということだ!!!」
「何言ってやがんだ?」
「流石は護廷十三隊隊長格。よくぞ我をここまで傷めつけた。……奇跡とは、死に瀕してこそ奇跡!!!!」
警戒した白哉が千本桜を使って首を切り落とした。残酷な選択に雛森が口元を抑えて一歩下がる。
「そこまでしなくてもよかったんじゃ、」
「アホ。あいつは奥の手を隠しとったんや。しかも口振りやと、この形勢を一発でひっくり返せる何かを。……ここまでやらんとどうなっとったかわからんで。」
白哉がさらに千本桜で念を入れ、皆霊王宮に向かおうと背を向けて歩き出した時だった。
「!!!」
霊圧が一気に膨れ上がった。一瞬息が止まるほどだ。いち早く気付いた美桜が振り向くと同時に巨大な足が地面を踏んだ。
「「「!!!」」」
「なんだ、どうなってやがる…!!」
素早く回避した面々は振り下ろされた足に呆気を取られた。足の指一本が己と同じくらいの大きさなのだ。足の指でそれなら、本体はどれほど大きいのだろうか。
漠然とした疑問はすぐに解消された。
足元に影ができた。一瞬で死神たちを呑み込んでいく。首が痛くなるほど見上げなければ見えない位置にジェラルドの頭があった。先程白哉が切り落としたはずの頭があったのだ。粉々にした胴体も傷ひとつなくそこにある。
まさに巨人。ジェラルドは大きく息を吸い込むと霊力とともに吐き出し、鼓膜が破れそうな音量で高らかに叫んだ。
「我が名は!!! ジェラルド・ヴァルキリー!!! 聖文字はM! "
要は傷を負った分だけ巨大化するということだ。巨大化と聞けばその分速度が落ちるイメージがあるが、ジェラルドの速度は全く落ちていなかった。むしろ上がったように見える。
ジェラルドは近くにあった塔を細い木の枝を折るかのように破壊すると、雛森へ投げた。砲弾の速度で飛んでくる建造物を間一髪で避けるも、爆風で飛ばされて大きく体勢を崩した雛森にジェラルドが追撃する。
真子が自身の副官に手を伸ばした。しかし後ろからやってきたジェラルドの巨大な手で雛森諸共地面に叩きつけられることとなる。
「真子!!!」
「雛森!! 平子隊長!!」
美桜は咄嗟に真子の背後に断空を張ったが、巨大化したジェラルドにはガラス程度の強度しかなかったようだ。しかしそれによって生まれた僅かな時間と軽減された衝撃が真子たちを救った。
「……平気や、」
真子は頭を切ったのか額から血を流しながら土煙の中から現れた。すぐ後ろには雛森もいる。皆が安堵したのも束の間。すぐにジェラルドの猛攻が始まる。
白哉の千本桜は突風のような吐く息に飛ばされ意味を成さず、阿散井の蛇尾丸も標的が大きすぎて一点にしか攻撃できずに終わった。
「……」
隊長格が次々と地に伏していくありさまに流石の美桜も斬魄刀を抜きかけたとき、ジェラルドが氷の巨像と化した。
「……日番谷隊長」
涅の発明した機械でジジの支配から抜け出すことに成功した日番谷が加勢した。既に卍解しており、その力でジェラルドを凍らせたのだ。
しかしすぐに亀裂が入ってしまい、動きを止められたのは僅か数秒だけだった。
「ウオオォォォ!!」
「一瞬も止められねぇのか……頑丈な奴だ。」
「この程度の氷の曲芸で我を止められるとでも思ったか!!」
ジェラルドが大きさに見合わない速度で手を伸ばし、卍解して空を飛ぶ日番谷に迫る。だがその手は日番谷に届かなかった。行く手を阻んだのは大量の桜吹雪。
「日番谷隊長、一対一では難しい相手だ。手を貸そう。」
「わかった。確かにこの身長差なら卑怯にはならないだろう」
「…………」
日番谷の前では身長のことはタブーなのだ。にも関わらず日番谷自身が自虐を含む話題を振ってきたため、白哉はどんな顔をしていいかわからなかった。
「なんだ、その目は。身長差なら普段からあるとでも言いたいんだろ」
「………いや…そんな……つもりはない…………すまぬ」
「なんで謝った!? すげぇ言い澱んで結局謝ったじゃねぇか!! こっちを見ろ!!」
「あっははははは!!!」
「こりゃ日番谷隊長が悪いわな。朽木隊長にツッコミは出来ひん。ボケる相手
「涼森と平子…」
先程の日番谷のボケにどうしても納得がいかないのか、真子は「ボケの選択が悪すぎやねん。なんでコンプレックスでボケるんや? ツッコミし辛いったらあらへん」と文句を言っている。やはり担当でないものがボケると良くないらしい。日番谷はそう学んだ。
そんな四人に迫る魔の手があったが、肘下から一刀両断された。
「なんだぁ? 隊長格が雁首揃えて全滅かよ。情けねえ!!」
「「……厄介なのが来たな。」」
「一番最初に戦闘不能になった隊長に言われたくないよね〜」
「全滅してません〜! バッチリ生きてますぅ〜!」
全身傷だらけで現れた更木に白哉と日番谷は冷たく言い放ち、美桜は目だけ斜め上を向いてすっとぼけた顔をした。真子など下瞼を指で伸ばして変顔する始末である。皆更木への当たりが強いのは彼の日頃の行い故だろう。
「ぬううおおおお〜〜ッ!! 我の、右手がぁ!!」
ジェラルドの切断された右手が光りだし、手の形になっていく。その光が弾け飛ぶと切断される前のそれと遜色ない右腕が現れた。単純な治癒や復活とは異なり、元の機能を損なうどころか強化されるのが非常に厄介だ。
「何だありゃ。どうなってるんだ?」
「奴の能力だ。傷を負った部位が巨大化して強化される。」
「面白れェ!! それじゃあ斬り刻んで粉々にしてやらぁ!!」
「その結果があれってことわかっとらんやろ」
「これ以上デカくして下に落ちたらどうすんだ!」
「どうもしねェよ。俺も一緒に落ちてブッた斬ってやらァ。」
「こんな質量の奴が落ちたら、それだけで瀞霊廷は壊滅だ!」
一生懸命諭す日番谷と珍しく動きを止めて言葉を聞く更木の上から巨大な足が降りてきた。まるで蟻を踏み潰そうとする人間である。
更木は二本の腕だけで足裏を支えると、力任せに持ち上げてジェラルドをひっくり返した。ジェラルドが一歩動くだけで揺れる霊王宮が、尻もちをついたことで信じられないほど揺れる。巨体が倒れ込んだ建物は大きな音を立てながら積み木のように崩れ落ちる。巻き込まれた死神がいないことを願うばかりである。
「ゴチャゴチャうるせぇな!! 要はチマチマ楽しんでねェで一発で頭を割れってことだろ!!!!」
頭を割るどころか肉片にしたのに復活したのだ。頭を割っただけで倒せるのならここまで苦労していない。
どこまで行っても単細胞で脳筋な考え方をする更木に皆が頭を抑えてため息を吐いた時、更木の霊圧が爆発的に増えた。
「呑め 野晒」
「「!!!」」
そして、今まで誰も聞いたことのない解号を唱えたのだ。
煙が晴れて現れたのはナタ包丁のような長方形の刃の斬魄刀。巨体の更木が肩に載せて持つほど大きなそれでジェラルドの"
「……ッ馬鹿な!! "希望の剣"が刃毀れしたぞ!!!!」
ジェラルドの刀が刃毀れしたにも関わらず、傷を負ったのは更木の方だった。
「こりゃなんだ? どういうこった」
「何が疑問だ? ……我が力は
得意げに叫ぶジェラルドだが、言っていることがわかりそうでわからない。美桜は袖を引くと、気付いて顔を近づけてきた真子の耳元でそっと問いかけた。
「……理解できた?」
「いや、全く。これっぽっちもわからへんわ。」
「……道理の通じねぇ能力を持ってるってことはわかった」
「あ、それくらいの理解でいいのね! それなら私にもわかった!」
隊長四人は警戒こそ解いていないものの、完全に静観する姿勢だった。ジェラルドと戦っているのが他の隊長ならまだやりようはある。相手の出方を窺いつつ味方と連携をとって共闘することが出来ただろう。だが更木、奴だけはダメだった。
連携はおろか、奴が倒すと決めた相手に攻撃を仕掛けようものなら、逆にこちらが更木によって攻撃される始末。そしてこう言うのだ。「邪魔するならテメェから叩き斬ってやるぞ」と。それをよくわかっている四人は更木が倒れ伏すまで手を出さないつもりだった。
「思ったより躱すじゃねェか!! 見た目のわりにすばしっこい奴だ!」
「こちらこそ一握りで潰してやるつもりだったのだがな! すばしっこい奴だ!」
それでも、時間がないのも事実だった。
更木はとうの昔に眼帯を外して己の持つ全ての霊圧を解放しているし、日番谷の後ろに咲く氷の華の花弁もかなり散っている。更木が倒れ、日番谷も卍解が使えなくなった場合、果たして隊長三人で倒すことが出来るのか怪しいところだった。それほどまでに強大な敵なのだ、ジェラルドは。
更木が吹っ飛ばされた。土煙の中に見える更木はうつ伏せで倒れ込んでいた。流石に美桜も腰をあげ、真子も逆撫を解放した。
「我は最大・最強・最速の滅却師!! 全てを与えられた戦士!!」
「「「!!!!」」」
その時、背筋に悪寒が走った。あまりにも巨大で刺すような殺気に満ちた霊圧が辺りを支配する。霊圧を放っているのは倒れ伏したはずの更木。その肌は赤く、顔は憤怒に支配された仁王像のようだった。
「なんだ、卍解かと思えばさしたる変化もなし。……つまらぬな、更木剣八!! 貴様には希望の剣を振るうのも惜しい! 潰れて消えろ!!」
右腕を振り下ろしたジェラルドだったが、更木に肩から切断されることとなる。続いて出刃包丁のような斬魄刀を盾で受け止めるはずが、その盾が豆腐のように切れた。右腕に加えて左手首の先も切断され、まだ右腕が回復していないジェラルドになす術はなかった。
「あの馬鹿ッッ!!!」
「落ちるで!!」
吹っ飛ばされた勢いで霊王宮の縁から大気に投げ出される。この高度からあの巨体が落ちれば間違いなく瀞霊廷は壊滅する。
だがジェラルドは巨体に似合わぬ純白の翼を生やすと、希望の剣を構えて更木に突っ込んだ。
「あかんっ、こっちくるで!! 受け止めきれん!!!」
「きゃあ!!」
真子は霊圧の動きで状況を把握するしかない美桜を抱えると、瞬歩で少しでも遠くに退避した。更木が受け止めきれない場合はもちろんのこと、受け止めたとしても余波を喰らうだろう。
「馬鹿な、馬鹿な馬鹿な!! そんな馬鹿なことがあってたまるかァァ!!」
逃げも隠れもしない更木が膝をバネのように曲げた。そして突っ込んできたジェラルドをその勢いのまま真っ二つに斬った。
