千年血戦篇
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そうしてやっとの思いで乗り込んだ霊王宮は
「なんや? 霊王宮ってこないな場所ちゃうやろ。喜助、座標あっとるんか?」
「……ここは間違いなく瀞霊廷の真上です。あの五つの盆のようなものが零番離殿、その中心にあるあの筒状のものが霊王宮大内裏。」
「完全に作り替えられてるねぇ……参ったね、どうも。」
霊王宮は完全に敵の手に落ちていた。霊王が死んだのだから零番隊は全滅したと誰もが確信していた。だが霊王宮がここまで別物に作り変えられているとは誰も思っていなかった。ユーハバッハ率いる滅却師たちがこの広い霊王宮の中で死神たちを手招いている。
「不幸中の幸いなのは、一護君たち先遣隊が全滅してなかったってことかね…」
「……ん! これはお姉様の霊圧!!」
四楓院夕四郎は大好きな姉、夜一の霊圧を感知した。僅かながらも助太刀するため一行を離れて夜一の元へ向かおうと一歩踏み出すが、その足は空を切る。霊王宮から落下しそうになった夕四郎を阿散井が慌てて掴んだ。
「おまっ、何やってんだ馬鹿!!!」
「すいません! 霊子で足場が作れなくて!」
「……霊子で足場が作れない?」
つまり、この空間における全ての霊子が滅却師の支配下におかれているということだった。故に死神たちは空間に漂う霊子を使って足場を作ることが出来ないのだ。
誰かの米神に冷や汗がつたった。
そしてもう一人、霊王宮に乗り込んでから冷や汗を流している者がいた。───美桜である。
言わずもがな、彼女の視界は強力な斬魄刀の代償で己を中心とした五歩程度しか見えていない。凡人なら日常生活を送るのがやっとのことで戦闘などとてもではないが出来ないが、それを可能にしているのは美桜の感知能力が遥かに秀でているからに他ならない。
しかし、ここにきてそれが裏目に出た。
普段霊圧感知能力で視界を補っている部分が全て白く見えてしまい、何も見えないのだ。高すぎる濃度の霊子は建物や他の死神たちとの区別をなくし、ただの白として美桜の目に映った。輪郭すらもわからない。まるで自分とその周りだけが世界から隔絶されてしまったかのように感じる。
しかし、それは視界に限った話である。目を閉じれば周りの霊圧を感じることが出来るが、外界からの情報のうち約八割は視界から入ってくるのだ。それがほぼ断たれたとなると今まで通りには闘えない。霊圧を完全に消されてしまえば敵の接近にも気付けないのだ。
濃い霊子が漂う中、一行は中央に聳え立つ城へと走り出す。
だが数分しないうちに一定速度で走り続ける者と目に見えて遅れる者に分かれた。遅れているのは皆副隊長で、ゼェゼェと肩で息をして苦しそうである。その中でも最後尾に居た大前田が膝に手をついて立ち止まった瞬間、どこからか狙撃された。
「……ゔっ、」
的確に急所を貫かれ、何が起きたのか理解する前に意識が闇に散っていく。近くにいた勇音が治療しようと駆け寄るがその隙に狙撃されて自らも血の海に沈むことになった。
「……ッッ!!」
「姉さん!!!!」
脇目も振らず勇音に駆け寄った清音も狙撃される。どこかからか狙撃されていることに気付いた檜佐木が始解して迎撃しようとするが、檜佐木が弾を捉える前に弾が身体を貫いた。
「立ち止まるな!! 足を動かすんだ!!」
わずか数秒で副隊長が四人戦闘不能になった。京楽は総隊長として闘えなくなった者を見捨てる命令を下すと、自らが先頭に立って走り始めた。
「雫」
「はい」
美桜と雫は一度集団を抜けて負傷者の元に行った。美桜が一人ずつ触れて身体の時間を止める。長くは保たないが出血死の危険がなくなっただけ随分楽になる。
美桜は周囲に強力な結界を張ると、雫の背中を強めに叩いてから背を向けた。
「……隊長、お気をつけて。」
「ありがとう。雫もね。……頼んだよ。」
「はい。」
チラリと振り返りながら一瞬だけ雫と目を合わせた美桜は瞬歩で消えた。長年タッグを組んだ二人には己のやるべきことと相手のやるべきこと、その線引きがきちんとなされている。故に多くの言葉はいらないのだ。きっと真子と雛森ではこうはいかないだろう。
瞬歩で真子の元に戻った美桜は一向と共に走り出した。遠くで戦闘音が聞こえる。霊圧からして涅と更木だろう。一般的に見て相性最悪だと思うが、共闘出来るのだろうか。
「なんや、あの二人一緒に闘っとんのか? どう考えても相性最悪やろ」
「アタシと同じく理論的な答えを求める涅隊長と、全て感覚でなんとかする更木隊長ッスからねェ。…アタシも更木隊長は苦手ッス」
「でも頭のネジの抜け方は一緒かもね」
「ぶっっ!! 言われとんぞ喜助!!」
「あ、ごめんなさい! 喜助さんに対してではなくてですね…」
「いいんスよ涼森サン。気にしてないッス」
敵陣のど真ん中にいるとは思えない三人の会話に、砕蜂の眉間に皺が寄った。今にも怒号が飛んできそうである。その様子を知ってか知らずか、美桜は気にせず口を開いた。
「ねぇ真子」
「なんや?」
「……この闘い終わったら何したい?」
真子は思わず目を見開いて隣を走る美桜を見た。まるでこの闘いで死ぬことを予見しているかのようだ。人はこれをフラグと呼ぶ。
「私ね、双極の丘でキャンプファイヤーしたい」
「ブッッ!!」
思っていたのと全く質が違う願いに真子が転びそうになる。もっとこう、世界一周旅行とかそういう大きな願いだと思ったのだ。
「良いんじゃない? たまには。山爺がいたら絶対出来ないよね、そんなこと。」
「でしょ? 賑やかな感じじゃなくて、しっぽり飲み明かしたいな…」
皆で火を囲み、炎の揺らぎをボーッと見つめながら、この闘いで逝った者たちのことを話すのだ。逝ってしまった今だからこそ言えること。感謝してること。実は苦手だったこと。
特別なことはしなくていい。馴染み深い場所で、普段と少しだけ違ったことをしたいのだ。
「じゃあそのためにも、さっさと終わらせないとね!」
そう言うと京楽は先程から狙撃している滅却師に狙いを定めて刀を抜いた。奇襲を成功させるために彼自身を囮にし、一団を離れて戦闘を始める。
「京楽総隊長のことはお任せください」
「……頼んだで」
「伊勢副隊長、これ遠慮なく使ってください。」
京楽の身を案じた美桜が回道の入った霊石を何個か伊勢に渡した。これが京楽の命を救うものになると同時に、再び闘いに身を投じる原因にもなる。
美桜たちは断腸の思いで京楽と伊勢にリジェ・バロを任せ、ユーハバッハのいる中心部に向かって走り出した。
