千年血戦篇
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一番初めに違和感に気付いたのはリルトットだった。彼女は滅却師の中でも冷静沈着な人物で、慎重に行動する。バンビエッタやキャンディスと真逆の人物と言ってもいいだろう。
そんな彼女は、自分の攻撃が当たっていないにも関わらず、相手の攻撃だけが自分に当たっていることに気が付いた。しかも「殺った」と思える攻撃ですら当たらないのだ。そして避けたと思った攻撃が確実に傷を増やしていく。
「変だな。」
「何がですか〜?」
攻撃をやめたリルトットに倣ってミーニャも手を止める。二人とも致命傷はないが、手足は切り傷だらけだった。対して真子は無傷でにやりと笑っている。
「気ぃついたか?」
「……」
「殺った思ても殺れてへん。避けた思ても避けれてへん。不思議やなぁ? なんでやろなぁ?」
舌についたピアスを見せるように大きく口を開けて二人を煽る。それで冷静さをなくしてもらうのが一番だが、そう上手くはいかない。
「厄介だな。おそらく神経に作用する能力だ。だがわかっても俺たちじゃ対処出来ねぇ。」
「えぇ〜〜。じゃあ誰が適任なんですか〜?」
「強いて言うならジジだが、あいつも手が離せなそうだな…」
リルトットの目線の先にはキャンディスとともに美桜に突っ込んでいくジジの姿。相性の悪い二人は連携せずに自分のタイミングで美桜に攻撃を仕掛けている。そのためキャンディスの雷撃をジジが食らったのも一度や二度ではない。
ジジと元死神のゾンビを相手していた美桜は、ジジとともにキャンディスの攻撃をもろに食らった。
「ガルヴァノブラスト!!!」
普通の者が雷に焼かれればひとたまりもない。だが美桜は体表から数センチに衛膜を張って自分に近づいてくる攻撃の時間を止めている。故にその衛膜が破られない限り、美桜にダメージを与えることはできない。
「!!!!」
土煙の中から青白い光が発せられ、それがキャンディスの腹を貫いた。破道の四、白雷である。キャンディスは血を吐きながら瓦礫へ飛ばされる。
ジジは目の上に手を当てて呑気に見物する。
「ええ〜〜〜死んだと思ったのにぃ〜。傷ひとつないじゃん。」
戦闘中にあまり喋るタイプではない美桜は静かにジジを見据えるだけ。もっとも、彼女の目はジシの姿を捉えていないため、ヤツによく似たシルエットの霊力が見えるだけなのだが。
「……あんたさ〜、なんかで全身覆ってるでしょ。」
「……」
「さっき血ぃかけたとき思ったんだよね〜。軽く避けるけど本気じゃないって感じ。それにこんだけ戦ってて汚れのひとつ付いてないし。……斬魄刀ももう一本あるみたいだし、流石に面倒だなぁ〜〜」
はぁ〜とわざとらしく大きなため息を吐いたジジは美桜を見てにんまりと笑った。
「だから〜〜〜……バンビちゃん!」
「!!!」
霊子が降り注いだため美桜は瞬歩でそれらを全て避けると、少し離れた建物の上に降り立った。
相対するのは先程殺したはずのバンビエッタ。美桜が切った首も元通りで、肌が浅黒いことと口から涎を垂れ流していること以外、生前のままだ。
「……ゾンビ、か」
闘いの結果死ぬことになっても戦士として尊重されず、その遺体すら駒となる。そこに本人の意思はおろか、魂すらない。術者に無理やり動かされ、マリオネットのように踊るだけ。
先程から美桜に攻撃してくる元死神のゾンビも同じである。戦って死に、護廷十三隊の役に立つどころか、操られて敵として護廷十三隊の前に立ちはだかる。
もし彼らの魂がそこにあったのなら、きっとこう言うだろう。───殺してくれ、と。
「ねぇジジ、お願い……痛いことしない、で…」
ゾンビ化して術者であるジジに媚を売るバンビエッタ。生前の溌剌とした元気娘の姿は今や見る影もなく、みっともなくジジの脚に縋りついている。
美桜はそんなバンビエッタを見て決意を新たにした。
十一番隊と思われる死神のゾンビが美桜へ刀を振り上げた。
美桜は一度目を閉じてから大きく深呼吸をする。次の瞬間開けられた彼女の目は、常人には見えない霊子すらも見えていた。
ゾンビの動きがいつもの何倍も遅く見える。
ジジの顔が狂気に歪む。
異変を察知した真子が叫んだ。
ジジとゾンビを繋ぐ、か細い糸のような霊子。それを空間ごと断ち切る。
糸が切れた途端にゾンビはドサリと重たい音をたてて地に伏した。
「………は???」
何が起きたのかわからないジジは目を大きく見開いたまま固まった。いや、正確には何が起きたのかわかっている。理屈はわかっている。だがそれに理解が追いついていないのだ。
「思った通りね。」
対象に血液を付着させることでゾンビにする能力。それがジジの能力だ。
だが不思議だった。ゾンビにしてそれで終わりではないのだ。ゾンビたちはジジの命令通りに動く。何らかの指示系統があるのは確かだった。
その指示系統を断ち切ってしまえば、ただの死体に戻るはず。美桜はそう考えたのだ。
彼女の予想は当たり、ジジは微弱な霊子の糸でゾンビたちに指示を出していた。美桜はその繋がりを切ったのだ。
「あ〜〜〜〜……ボクのゾンビ増えたと思ったのにぃ〜〜。やっぱお姉さんキライだわぁ…………じゃあボクのとっておきを見せてあげるよ、」
ジジが先刻手に入れたばかりのゾンビを出そうとした時、巨大な霊圧が迫っていることに気付いて顔を上げた。
「なに、この霊圧」
別の戦場でも皆が戦いをやめて空を見上げる。無視できない存在感。圧倒的な霊力。
「一護か…」
「あれが特記戦力筆頭の黒崎一護か? バケモンみてぇな霊圧じゃねぇか。」
滅却師たちは目の前の敵を放り出して、我先に一護の元へ駆けていく。黒崎一護を殺せば陛下に認めてもらえる。その一心だ。
己との力量の差に気付かないまま、数人の滅却師が一護によって数秒で倒された。
「なんだよ。次から次へと…」
ユーハバッハ、そして石田の元へ向かおうとする一護に立ちはだかる滅却師たち。
彼らの相手をしている時間はない。今すぐにでも石田をぶん殴って目を覚まさせなければならないのだ。そんな使命を感じていた一護の背中を押すように、ルキアや恋次、白哉といった面々が各々滅却師と対峙した。
「行ってこいよ」
「恋次!!」
「お前はあいつをぶっ飛ばしたいんだろ?」
「……あぁ。」
「ならここは任せておけ。」
「わりぃ。頼んだ。」
一護はそれだけ残してユーハバッハの元へ向かった。
