千年血戦篇
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バンビエッタが怒りを抑える努力すらせず放出しようとした時だった。
「隊長!!!」
始解した飛梅を大きく振り上げ、バンビエッタの背後から攻撃を仕掛ける雛森の姿があった。
「どっちの副隊長? 女? それともあっちで倒れてるやつ?」
バンビエッタはニィィと口角を上げると、攻撃の対象を真子と美桜から雛森へと変更した。
雛森は自身の飛梅でバンビエッタの爆撃を相殺出来ると思っていたのだろう。しかしそれは大きな間違いだ。
「断空。」
美桜は雛森の前に断空を五枚展開した。少しずつ間隔をあけて配置された断空は、バンビエッタの霊子が着弾し断空自体が爆弾になったとしても、さらなる断空で防ぐことができる。
大きな爆発音が響いた。衝撃波で瓦礫が吹き飛ぶ。
「ダメよ雛森ちゃん。貴女の飛梅では相殺できないわ。何の対策もなく防ぐことなんて出来ないわ。」
「何の対策もなく? まるでアンタには防げるって言ってるようなもんじゃん!!!」
バンビエッタは空から自由落下すると、その勢いのまま美桜に霊子を放った。
美桜に当たった瞬間、当たった場所が爆弾となり爆発する。本来ならこれで終わりのはずだった。
「……そう言ってるの。」
「…っ!?」
土埃がはれたところに見えたのは先程と同じく無傷の美桜。バンビエッタは目をひん剥いた。
美桜は薄紫色の目でバンビエッタを見据えて静かに語った。
「貴女の能力は爆弾を発生させる能力じゃなくて、自身の霊子を打ち込んだものを爆弾にする能力。だから斬魄刀で受け止めても斬魄刀が爆弾になるだけ。」
「ふーーーん。よく観察してるわね。そうよ。私が放った霊子が爆弾になるんじゃない。霊子が当たったものが爆弾になるの。」
「……見たところ一度放った霊子の操作は不可能、または難しい。それでも自分の霊子が当たればそれが爆弾になるなんて、中々ズルい能力ね。」
美桜は一度息を吐いてから左手を持ち上げ、バンビエッタの方を指差した。薬指の指環がきらりと光る。
「でも、デコイのように囮を爆発させれば充分対処出来る。」
戦いにおけるデコイとは、敵に本物の目標と誤認させることを目的として展開される兵器のことだ。
美桜は自身の霊力を弾のように撃ち、それをバンビエッタの霊子に当てることで相殺させたのだ。
「……っなによ、なんなのよ!!」
バンビエッタの表情に初めて焦りが生まれた。その焦りに任せて無数の霊子を放つ。
「あの子は私がやるから、真子は離れてて。」
「すまん、頼むわ。ほら桃、行くで。」
「……はい」
真子も自分とバンビエッタの相性が悪いことを理解しているため、美桜が相手することに納得して雛森を連れて下がった。
美桜は真子と雛森の方に飛んで行った霊子に自身の霊力を当てて相殺させると、デタラメに霊子を放つバンビエッタの元へ跳躍した。
"攻撃は最大の防御なり"
先人たちはそう言った。先手を取り、積極的に攻撃することで相手が攻撃する隙を作らない。すなわち、それが最大の防御になる。要約すればそんな意味だ。
しかし、攻撃に対するなんらかの対抗手段を講じられた時点で、それは容易に崩れ落ちる。
美桜は向かってくる霊子の時間を止めて異空間にしまい込んだ。辺りを埋め尽くす程放たれていた霊子が一瞬で跡形もなく消え去り、バンビエッタのこめかみから汗が流れた。
「な、んで……!! どこ行ったのよ!!」
「……攻撃力は高いし厄介な能力だけど、それに対処されたらなす術がない。」
バンビエッタは再び美桜に向かって霊子を飛ばした。しかし、当然のように霊力をぶつけて相殺されたり、異空間にしまい込まれたりしてどれも美桜に当たらない。芸のない攻撃に美桜の目が冷えた。
「攻撃の種類が霊子を飛ばすだけで単調すぎる。」
美桜は淡々とした口調でバンビエッタの敗因を挙げていく。まだ勝負は結していないが、もう決まったようなものである。
美桜はバンビエッタの懐に異空間の入り口を繋げ、保存していたバンビエッタの霊子をバンビエッタ自身にぶつけた。
大きな音を立てて爆発した霊子が術者本人を襲う。ほぼゼロ距離で爆発を受けたバンビエッタは背中にあった羽も頭上にあった星もどこかに消え、力なく地へ落ちていく。
「自分の攻撃すら防ぐことが出来ない防御力の無さ。」
美桜は地面に倒れたバンビエッタの横に瞬歩すると、抜刀した銀琉をその首に当てた。
「うそでしょ……アタシが、負けるだなんて……」
「そして、最大の敗因は自分が負けることをこれっぽっちも考えていないことね。……どんだけ自意識過剰なのよ。」
「五人の中で一番最初にやられるなんて……!! 許せない! 絶対こんなの、許せるわけない……!!」
「許すも許さないも、これが現実だから。」
美桜は銀琉を静かにスライドさせた。
ごとり、と重たい音を立てて二つになった。
「ふぅ……」
美桜は一息つくと銀琉に付いた血を刀を振って飛ばした。ビシャッという音とともに瓦礫に血が飛ぶ。
しかし、美桜はいつまで経っても銀琉を鞘に収めることはなかった。
「あれれ〜〜。バンビちゃんやられちゃったじゃーん。しかも首ちょんぱ。……可哀想なバンビちゃん。ボクが助けてあげるよ〜」
現れた四人の星十字騎士団、通称バンビーズ。リーダーがやられれば仲間は黙っていられないはずだが、どうやらそういうわけではないらしい。
ジゼル・ジュエル、通称ジジの口調はバンビエッタのことを可哀想などこれっぽっちも思っていなさそうだ。完全に煽っている。
いつもなら噛み付かんばかりに反応してくるが、バンビエッタは何も言わない。否、言えない。
「お姉さんがバンビちゃん倒したの〜?」
「……そうよ。」
「ふ〜ん。結構強いんだね〜。でもバンビちゃんバカだから一番最初に死ぬと思った〜」
美桜はジジを上から下まで見てから、先程から思っていたことを口に出した。
「貴女、
「なに急に。Zだけど。」
「……そう、」
黒く長い触覚、背中を覆う長い黒髪。そして、ジゼル・ジュエル、通称ジジという名前。ここまで揃えば、美桜もなんとなくユーハバッハから与えられた聖文字を想像出来たのだが、どうやら違ったらしい。
美桜はジジをまっすぐ見ながら呟いた。
「その黒い触覚に長い黒髪。てっきり与えられた聖文字はGなのかと思った。」
最初は美桜の言っている意味がわからず、首を傾げていたジジだったが、意味がわかった瞬間
「……あ"ぁ??」
要は、美桜はジジの姿が黒光りするヤツに似ているから、与えられた聖文字がGだと思ったということだ。
ヤツに似ていると言われて喜ぶ者などいない。
「お前、絶対殺す。」
「あーあ、キレちまった。どうすんだよこれ。」
「知らない。バンビやられたし、あたしらどうする? ジジに加勢するか?」
「隊長さんもう一人いらっしゃいますし、私たちも一緒に戦った方がいいかも〜?」
ミーニャが言う隊長というのは真子のことだ。流石に美桜一人で四人と戦うのは辛いものがある。真子は瞬歩で美桜の後ろに移動すると、静かに逆撫を始解した。
「お疲れさん。俺もやるわ。」
「ありがと。一人で四人はちょっと骨が折れるからね。」
真子が指で逆撫を回すたびにふわりと甘い匂いが香る。逆撫の効果の対象外である美桜の目にはしっかりと目の前の敵が見えている。もっとも、二百年以上真子とともにいる彼女はとうの昔に逆撫に順応し、範囲内だったとしても問題なく戦える。
「見た感じお馬鹿そうなのはあの子ね。真子と相性悪そう。」
「せやな。そっち頼むわ。」
背中合わせの状態で斬魄刀を構えた二人は、同時に地面を蹴った。
