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凛
雨上がりでちょっとぬかるんでるなぁ
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今夜は赤髪の旦那と約束の日。頼まれていた商品をリュックに詰め、誰にも気付かれず、旦那から教えられた裏ルートを通って街外れにあるアナグラへ向かう。お待たせしてしまうと超絶に機嫌を悪くするため、約束の時間よりも早くに到着する事を心掛けている。足場は最悪なのだが、ダンジョンへ向かう冒険者の気分で、実はちょっとこの夜を楽しみにしている自分もいる。
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凛
よし、此処を抜ければあともう少し
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大きな岩に足を掛け、一気にジャンプして乗り越えようとした瞬間。雨上がりの泥濘んだ苔のせいで足を滑らせてしまう。
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凛
あっ!!
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身体がひっくり返ったと思った瞬間、思わず目を瞑る。次に頭や背中に固い地面の感触と激痛を想像していたのに、ぽふり、と思いの外柔らかいものの上に着地したようだ。
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凛
あれ...?
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サソリ
...よぉ
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凛
あれ...?あれれ?
なんか、背中から旦那の声がする... -
サソリ
...随分ひでぇ挨拶の仕方だな
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凛
あ、ごごごめんなさい、旦那!これには深い訳がっ!
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サソリ
どうせよく見もせずに泥濘んだ苔の上に乗り上げて足滑らせたんだろうが。...このドジ野郎
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凛
...そのとおりです。
すんません -
サソリ
...ブツは持ってきたんだろうな
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凛
へ、へい!ただいま。その前に...ちょっと下ろしてくださいな、旦那
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サソリ
うるせぇ...このまま運ぶぞ
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結局旦那の背中の上に乗せられたまま、アナグラまで運ばれる。到着すると身体ごと尾っぽで巻かれて地面に下ろされた。思いの外旦那の背中の上は気持ちよかったから、そのままでも良かったかも、なんて。
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サソリ
...なにガッカリしてやがる
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凛
えへへ。旦那の背中、程よく沈み込む感じで気持ちよかったなぁって。これに懲りずにまた乗せてくださいねぇ?
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サソリ
...ふざけんな。俺は低反発マットレスじゃねぇ
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