これは、いつぞやの記憶だ。
まだあの小さな小屋で蓋と共にただ時を過ごしていた、あの頃の。
確か…蓋と、かくれんぼをしていて。
湖の近くの草むらで小さくなって、少し遠くで聞こえる蓋が自分を探す音にどきどきしていた。
そしたら彼らは気づいたら隣に居て。
それから、彼らの大きな瞳からは、ぼろぼろと水が流れた。
どこか痛いの、と尋ねると彼らは首を振って、
『涙は、嬉しくても出るんだよ』
そう、言った。
それから彼らは時折、自分が一人でいたりすると話し相手になってくれるようになった。
蓋がいると絶対に出てこなかったのは疑問だったけれど。
だけど、それからすぐに彼らに別れを告げられた。
遠いところに行かなければならないのだと、これは自分たちがやらなければいけないのだと言っていた。
『君が再びこの世に生を受けてくれて、本当に良かった』
『今度は絶対に君を守ってみせる』
『いつでも見守っているからね』
『だから、救って。綺羅』
彼らはそう言い残して、二度と姿を現さなかった。
その代わり、時折困ったり迷ったりしていると、彼らの声が聞こえてきて、導いてくれるようになった。
なんで今まで忘れていたんだろう。
こんなに大事なこと、どうして。
旅に出ることを決意した、あの瞬間を。