「"ほうでん"!」
『喰らえッ』
フロア全体を眩い光が包む。
「もしかしてアイツ…!檻に入れてた奴か?!」
「クソッ!早くジュピター様に報告を…!」
戦うことが出来なくなった下っ端たちは、そう悔しそうに声を零しては、逃げ出した。
恐らくとっくに奴らがいう、"ジュピター様"には知られているだろう。
好都合だ。向こうから来てくれる方が有難い。
「先程会ったばかりのポケモンと、こうも息を合わせて戦えるもんなのか…」
後ろにいるハンサムが感嘆したように言う。
電気タイプ特有の俊敏な動きと小さな体にそぐわない並外れた攻撃力は、立ちはだかる下っ端を次々となぎ倒していった。
「お前、強いんだな」
『アンタの指示が良いからさ』
檻の中に居た彼、メリープと、綺羅とは目を見合わせて笑う。
「綺羅くん!ここに階段がある…おそらく、最上階に繋がっているはずだ!」
ハンサムの背中を追いかけ、敷居をまたいだ。
目の前に立ちはだかった高い階段の前で一息吐く。
「ハンサムさん。どっかに隠れててください」
「え…?しかし…」
「危なくなったら逃げて、援軍を寄越してください」
自分にぴったりと寄り添うメリープの背中を綺羅は優しく撫でた。
先程出る前に少しブラシをかけたので柔らかさは気持ち程度には戻ってきたがやはりここから出たら洗ってあげなければいけないだろう。
「もう少しだ。もう少しで、ここから出られる。もう少しの辛抱だ」
『…うん』
立ち上がり、目の前にそびえる階段の一歩目を踏み出す。
「君は本当に無茶をする」
背後でハンサムがぽつりと呟いた。
振り返ると、すっかり見慣れた彼の呆れ顔が目に入る。
普段はぴしりと整っている髪型が、ウィッグを被っていたせいかふにゃりと力なく萎んでいた。
「言っただろう。ここからは共に行こうと。わが身可愛さに子供一人を戦地に送り出す程、私は大人を捨ててはいないよ」
綺羅の数歩上段を上り、くるりと振り向く。
「それに最初に名乗っただろう。私は国際警察だと。君達を守るのが、私の仕事だ」