小ネタ(少)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
芯まで凍える睦月。今日もガラス越しに見えるレコーディングルームで、機流音が歌っている。
(……本当に暑そうだ)
機流音はアンドロイドとは思えないほどのパワフルな歌唱から、機体が熱くなりやすく、そのため排熱機構を随所に施したビジュアルとなっている。──まさにそんな仕様説明の通りで、歌う彼は、見ているだけで届きそうな熱気を纏っている。
そんな彼とは対称的に、私は寒さに晒されていた。あらゆる暖房を切っているのだ、当たり前だ。毛布一枚羽織ったところで、作業のために座って手を動かしていれば、完全な防寒にはならない。だがこれも仕方のないことだ。機流音を迎えるにあたって家を改造して、素寒貧なのだから。少しでも出費を抑えなければ。
そうしているうちに、指定した箇所の録音が終わる。かなり良くなってきた。ガラスの向こうの機流音に“OK”のサインを送ると、彼はニカッと笑って、軽い足取りでドアを開けてきた。
彼が入ってくると共に、途端に部屋に響くファンの轟音。機流音の全身につけられたファンが全力で駆動し、彼の熱を冷まそうとしている。
「マースター! どうだった?」
機流音が椅子越しに後ろから抱きついてくる。元から快活な個体だったが、最近は本当に距離が近い。
「オレちゃんと歌えた?」
波形が映る画面を、熱い機体をべったりくっつかせながら覗き込んでくる。人とほぼ変わらない肌の感触の奥に、酷使したスマートフォンじみた熱がある。
「あっマスターつめた〜い♡」
そう言いながら、彼はさらにぐりぐりくっついてきた。かなりの精度で人毛を再現した、柔らかい髪が当たってくすぐったい。
しかしふと、彼は動きを止める。
「あれ? でも、人間ってこんなに冷たかったらよくないんじゃ……」
「……いいんだよ、これで」
次の冬には、この部屋に暖房が入っているだろう。だから今は、これでいい。……もしかすると夏の出費が嵩んで、またこんな生活かもしれないが。
(……本当に暑そうだ)
機流音はアンドロイドとは思えないほどのパワフルな歌唱から、機体が熱くなりやすく、そのため排熱機構を随所に施したビジュアルとなっている。──まさにそんな仕様説明の通りで、歌う彼は、見ているだけで届きそうな熱気を纏っている。
そんな彼とは対称的に、私は寒さに晒されていた。あらゆる暖房を切っているのだ、当たり前だ。毛布一枚羽織ったところで、作業のために座って手を動かしていれば、完全な防寒にはならない。だがこれも仕方のないことだ。機流音を迎えるにあたって家を改造して、素寒貧なのだから。少しでも出費を抑えなければ。
そうしているうちに、指定した箇所の録音が終わる。かなり良くなってきた。ガラスの向こうの機流音に“OK”のサインを送ると、彼はニカッと笑って、軽い足取りでドアを開けてきた。
彼が入ってくると共に、途端に部屋に響くファンの轟音。機流音の全身につけられたファンが全力で駆動し、彼の熱を冷まそうとしている。
「マースター! どうだった?」
機流音が椅子越しに後ろから抱きついてくる。元から快活な個体だったが、最近は本当に距離が近い。
「オレちゃんと歌えた?」
波形が映る画面を、熱い機体をべったりくっつかせながら覗き込んでくる。人とほぼ変わらない肌の感触の奥に、酷使したスマートフォンじみた熱がある。
「あっマスターつめた〜い♡」
そう言いながら、彼はさらにぐりぐりくっついてきた。かなりの精度で人毛を再現した、柔らかい髪が当たってくすぐったい。
しかしふと、彼は動きを止める。
「あれ? でも、人間ってこんなに冷たかったらよくないんじゃ……」
「……いいんだよ、これで」
次の冬には、この部屋に暖房が入っているだろう。だから今は、これでいい。……もしかすると夏の出費が嵩んで、またこんな生活かもしれないが。