彼の足元で手をつく。惨めに縮まって、フローリングの感触を賞味する。
　元々人よりも大きな彼が、高層建築のように立っている。逆光の中で、目だけが光って見える。その目は歪んでいる。最早苦痛にも似た笑みで歪んでいる。
「どんなに美しいものを見ても、どんなに愛らしいものを見ても駄目だった。肌が緑でないことに、瞳が多色でないことに、体が競いに適していないことに耐えられなかった。もう君でないと駄目なんだ」
　彼の足が頭に乗ってくる。鋭い爪を携えた、肉の厚い五本の指が、撫でるように頭髪を乱す。踵の棘が、突き刺すような接吻をする。
　彼が掠れた声で言った。
「よかったな」
随分と悦ばしげだった。