Relief
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俺達の試合を終えて観覧席に戻ると、今日の初戦で戦っていた親方とジャリキシンがいた。ジャリキシンはカミズモードになっていて、座ったその膝の上に、向かい合う形で親方を抱きかかえていた。
(そうか、ジャリキシンだからジャークパワーで土俵の外でも姿を変えられるのか)
俺は二席空けて、そいつの隣に座る。他のみんなは出払っているらしく、俺の相棒たちは売店に寄っているため、俺を合わせて三人きりになった。ジャリキシンの目は真剣で、目の前で起きている戦いの様子を余すことなく収めている。対して、親方は体を丸めているので表情が窺えず、どうやら眠っているらしかった。
「…………」
このジャリキシン、乱暴な戦い方の印象と違って、意外と顔立ちは優男な風だ。アイドルや俳優みたいだ。カミズモウでの様子からしても、相当この親方を気に入ってるんだろうな……。人間とは違うサイズ感の体が、大事そうに親方を包んでいる。
その様子を見ていると、何だか変にむず痒くなってくる。この馴れ合いを嫌いそうな性格が、現にこれ程までに馴れ合っているから? 自分と違って大人であるこの親方が、さらにそれ以上生物的に成熟した存在に身を委ねているから? 理由はどちらであっても、自分を鏡に映して見せられているみたいで嫌だった。──やばい、ジャリキシンがこっち見た。
じろじろ見すぎた。正直こわい。危害を加えられなくても、その体積だけで威圧される。頼むみんな、早く帰ってきてくれ。実質二人きりはキツい。
仮面をした端正な顔立ちが、ふいに口を開いた。
「羨ましいのか?」
眉こそ見えないが、先程より細めた目からして、あからさまに俺を嘗めている。
分からない、羨ましいのかもしれない。自分とは異性の人間を抱き締めているこの神も、心の底から安心できているこの親方も。
「んっ……」
その時、親方が徐に腕を伸ばした。体勢が変わって、目をぎゅっと瞑っているのが見えた。そんな彼女に、ジャリキシンはごく当たり前に口付けを落とした。こんなこと、童話の王子しかしないと思っていた。
「ごめん寝ちゃって……」
「『今日は』仕方ないだろ」
ジャリキシンは親方を抱えたまま、慣れた様子で立ち上がった。
「お前も、自分のゴウリキシンには甘えられるだけ甘えろよ」
ジャリキシンがそう言った。二色の虹彩が俺を見下ろした。
「まあ、俺と***と同じぐらいには、どうやってもなれないがな」
そして奴はカツカツと足音を鳴らして出て行った。
少し遠くの方で、俺の相棒のひとりであるお調子者が「ウワーーーッッだいしゅきホールド!!」と叫ぶ声が聞こえた。
(そうか、ジャリキシンだからジャークパワーで土俵の外でも姿を変えられるのか)
俺は二席空けて、そいつの隣に座る。他のみんなは出払っているらしく、俺の相棒たちは売店に寄っているため、俺を合わせて三人きりになった。ジャリキシンの目は真剣で、目の前で起きている戦いの様子を余すことなく収めている。対して、親方は体を丸めているので表情が窺えず、どうやら眠っているらしかった。
「…………」
このジャリキシン、乱暴な戦い方の印象と違って、意外と顔立ちは優男な風だ。アイドルや俳優みたいだ。カミズモウでの様子からしても、相当この親方を気に入ってるんだろうな……。人間とは違うサイズ感の体が、大事そうに親方を包んでいる。
その様子を見ていると、何だか変にむず痒くなってくる。この馴れ合いを嫌いそうな性格が、現にこれ程までに馴れ合っているから? 自分と違って大人であるこの親方が、さらにそれ以上生物的に成熟した存在に身を委ねているから? 理由はどちらであっても、自分を鏡に映して見せられているみたいで嫌だった。──やばい、ジャリキシンがこっち見た。
じろじろ見すぎた。正直こわい。危害を加えられなくても、その体積だけで威圧される。頼むみんな、早く帰ってきてくれ。実質二人きりはキツい。
仮面をした端正な顔立ちが、ふいに口を開いた。
「羨ましいのか?」
眉こそ見えないが、先程より細めた目からして、あからさまに俺を嘗めている。
分からない、羨ましいのかもしれない。自分とは異性の人間を抱き締めているこの神も、心の底から安心できているこの親方も。
「んっ……」
その時、親方が徐に腕を伸ばした。体勢が変わって、目をぎゅっと瞑っているのが見えた。そんな彼女に、ジャリキシンはごく当たり前に口付けを落とした。こんなこと、童話の王子しかしないと思っていた。
「ごめん寝ちゃって……」
「『今日は』仕方ないだろ」
ジャリキシンは親方を抱えたまま、慣れた様子で立ち上がった。
「お前も、自分のゴウリキシンには甘えられるだけ甘えろよ」
ジャリキシンがそう言った。二色の虹彩が俺を見下ろした。
「まあ、俺と***と同じぐらいには、どうやってもなれないがな」
そして奴はカツカツと足音を鳴らして出て行った。
少し遠くの方で、俺の相棒のひとりであるお調子者が「ウワーーーッッだいしゅきホールド!!」と叫ぶ声が聞こえた。