隠した信頼
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つまらない相手だった。今日もビューガはそう思った。ゴウリキシンにしろジャリキシンにしろ、ここらで戦う相手は総じて歯応えがない。もっと自分も、そして親方である***も、ギリギリの全力を出せるような相手がほしい。ジャークパワーのみでカミズモウに勝った帰り道、日はまだ高かった。
***に渡された合鍵を使い、玄関ドアを開ける。別に鍵はなくても入れるのだが、『まあまあ持っててよ』と言われたものなのでつい使ってしまう。予定より早い帰宅で、家の中は静まり返っていた。***のものは何でも使っていいと言われていたが、何かをするような気分でもなかった。
狭い部屋の中、家具はそう多くはない。そんな中で一番広く陣取っているのはベッドだ。***は家で暇さえあればこの中でゴロゴロしているため、ベッドマットが少しへこんでいる。
「…………」
何かする気が起きないなら、何もしないでいればいい。ビューガは何気なく、休みの日の***を真似るように、ベッドに潜り込んでみた。普段ほんのりと感じている、***の匂いがふんだんにする。
(臭い)
「ただいま~」
陽が西に沈む頃、家の主が戻ってきた。***はビューガが家にいる前提で声と共に入る。
「?」
『おかえり』等が返ってこないのはままあることだが、今日はそれ以上に気配のようなものを感じない。部屋は薄暗いが、ぱっと見ただけでビューガがいないことは分かる。
(まだ帰ってないのかな?)
そんな可能性を頭に置きながら、***は別の部屋を覗く。浴室、トイレ、どこにもいない。最後に自室に足を踏み入れると、念入りに見回した。いない。
だが、まだ探していない場所は一つだけあった。それは無造作に丸められたにしても、不自然にこんもりとした掛け布団。いやいや、そんなはず、と否定しながら、***はそっと布団をめくった。
すぅすぅという規則的な寝息。獣の耳が生えた、小さな体の人外が、体を丸めて寝入っていた。
「かっ…………!?」
ビューガはこれまで一度も、ベッドで寝たいと言うような素振りは見せたことがない。それほどの彼が、***の寝具で、こんなに無防備に寝ている。
「しゃっ、写真、やでも撮れ、るかな、」
***は声を頑張って抑えていたが、独り言が止められないほどに嬉しかった。かわいい。こんなことを言ったら確実にビューガは怒るが、まるで仔犬のようだ。
タイコンのスピーカーを押さえてシャッター音をほぼ消して、***はビューガの寝姿を連写した。そして気が済むと、安らかな寝姿のビューガをまた布団の中に隠した。
ビューガが目を覚まし布団を押し上げると、照明の光が眩しく差し込んできた。
夕飯の匂い。***が机に箸を並べているところだった。
「あ、起きた」
すっかり眠り込んでしまったようだ。こんなことは久しぶりだ。
「晩ご飯できてるよ。食べよっ」
いつもビューガにニコニコとしていることが大半な***だが、今日は一段と晴れやかな顔をしている。
「……お前、俺が寝ている姿を見ただろう」
「なっ……!?」
ビューガは何か気色の悪い気配を感じ取りそう言ったが、どうやら図星のようだ。
「み、見てないよ!!」
「なんなら写真も撮ったんじゃないのか?!」
「撮ってない! 今度疲れた時に見て癒されようとかも思ってない!」
「撮ってるじゃねえか!!」
ビューガはタイコンを取り上げ、画面を埋め尽くすほど保存された自分の寝姿を全て選択して消去した。
「うう……ごめんなさい……」
「ったく……」
呆れながら、ビューガは食卓につく。いつもの過激なスキンシップに比べれば今回はまだかわいい方だ。だからビューガもそこまでは怒っていなかった。
二人とも無言で食事を進める。これはいつものことだった。ふと、***が口を開いた。
「でも、あれだけの寝姿を見せてもらえるぐらい、信頼されるようになればいいんだもんね」
どこまでも変に前向きな奴だ、と思いながらビューガは返す。
「そうだな。そのためには親方としてもっと励め」
「はぁい……」
本当は***の親方としての腕は信じきっていた。だがビューガは、馴れ合いの類を嫌っており、そして***を付け上がらせたくなかった。そういった理由で彼は***をある程度拒絶していた。
***とビューガの距離が縮まるには、まだもう少し時間がかかりそうだ。
***に渡された合鍵を使い、玄関ドアを開ける。別に鍵はなくても入れるのだが、『まあまあ持っててよ』と言われたものなのでつい使ってしまう。予定より早い帰宅で、家の中は静まり返っていた。***のものは何でも使っていいと言われていたが、何かをするような気分でもなかった。
狭い部屋の中、家具はそう多くはない。そんな中で一番広く陣取っているのはベッドだ。***は家で暇さえあればこの中でゴロゴロしているため、ベッドマットが少しへこんでいる。
「…………」
何かする気が起きないなら、何もしないでいればいい。ビューガは何気なく、休みの日の***を真似るように、ベッドに潜り込んでみた。普段ほんのりと感じている、***の匂いがふんだんにする。
(臭い)
「ただいま~」
陽が西に沈む頃、家の主が戻ってきた。***はビューガが家にいる前提で声と共に入る。
「?」
『おかえり』等が返ってこないのはままあることだが、今日はそれ以上に気配のようなものを感じない。部屋は薄暗いが、ぱっと見ただけでビューガがいないことは分かる。
(まだ帰ってないのかな?)
そんな可能性を頭に置きながら、***は別の部屋を覗く。浴室、トイレ、どこにもいない。最後に自室に足を踏み入れると、念入りに見回した。いない。
だが、まだ探していない場所は一つだけあった。それは無造作に丸められたにしても、不自然にこんもりとした掛け布団。いやいや、そんなはず、と否定しながら、***はそっと布団をめくった。
すぅすぅという規則的な寝息。獣の耳が生えた、小さな体の人外が、体を丸めて寝入っていた。
「かっ…………!?」
ビューガはこれまで一度も、ベッドで寝たいと言うような素振りは見せたことがない。それほどの彼が、***の寝具で、こんなに無防備に寝ている。
「しゃっ、写真、やでも撮れ、るかな、」
***は声を頑張って抑えていたが、独り言が止められないほどに嬉しかった。かわいい。こんなことを言ったら確実にビューガは怒るが、まるで仔犬のようだ。
タイコンのスピーカーを押さえてシャッター音をほぼ消して、***はビューガの寝姿を連写した。そして気が済むと、安らかな寝姿のビューガをまた布団の中に隠した。
ビューガが目を覚まし布団を押し上げると、照明の光が眩しく差し込んできた。
夕飯の匂い。***が机に箸を並べているところだった。
「あ、起きた」
すっかり眠り込んでしまったようだ。こんなことは久しぶりだ。
「晩ご飯できてるよ。食べよっ」
いつもビューガにニコニコとしていることが大半な***だが、今日は一段と晴れやかな顔をしている。
「……お前、俺が寝ている姿を見ただろう」
「なっ……!?」
ビューガは何か気色の悪い気配を感じ取りそう言ったが、どうやら図星のようだ。
「み、見てないよ!!」
「なんなら写真も撮ったんじゃないのか?!」
「撮ってない! 今度疲れた時に見て癒されようとかも思ってない!」
「撮ってるじゃねえか!!」
ビューガはタイコンを取り上げ、画面を埋め尽くすほど保存された自分の寝姿を全て選択して消去した。
「うう……ごめんなさい……」
「ったく……」
呆れながら、ビューガは食卓につく。いつもの過激なスキンシップに比べれば今回はまだかわいい方だ。だからビューガもそこまでは怒っていなかった。
二人とも無言で食事を進める。これはいつものことだった。ふと、***が口を開いた。
「でも、あれだけの寝姿を見せてもらえるぐらい、信頼されるようになればいいんだもんね」
どこまでも変に前向きな奴だ、と思いながらビューガは返す。
「そうだな。そのためには親方としてもっと励め」
「はぁい……」
本当は***の親方としての腕は信じきっていた。だがビューガは、馴れ合いの類を嫌っており、そして***を付け上がらせたくなかった。そういった理由で彼は***をある程度拒絶していた。
***とビューガの距離が縮まるには、まだもう少し時間がかかりそうだ。