あなたの闇影に侵されて
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ある日の昼頃、いつもの様にヘルブラム卿はソファで本を読み、私はその前に立って控えていた。
「あの……ヘルブラム卿」
「うん?」
私が恐る恐る、といった感じに尋ねると、ヘルブラム卿は読んでいた本をパタリと閉じた。
「ヘルブラム卿が生前大量殺戮を行った際、特定の方法にこだわっていた、と聞いたのですが……それはどのような方法なのでしょうか?」
「あー………」
「あ、あの、別に無理に訊こうってわけではないので…………」
小間使いの私が正体を知り、ここまで内情に踏み入ったことを聞かせてもらえていることさえ奇跡なのだ。しかし、ヘルブラム卿は普段とはうってかわって鋭い目付きで、話し始めてくれた。
「俺っちが人間を殺してまわるようになった理由、それは知ってるよね?」
「はい、仲間の妖精族を目の前で惨殺されたから……」
「その、惨殺された理由はなんだと思う?」
「妖精族と言えば………まさか」
「……相変わらず察しが良くて助かるよ」
背筋に悪寒が走る。
妖精族の羽…それは今でも秘薬であると信じられており、高額で取引されている。
「復讐として殺すなら……そりゃあ同じ殺し方をするよねェ?」
私は思わず視線を逸らしてしまう。背中越しでも、ヘルブラム卿が音も立てずに立ち上がるのが分かる。
冷たい殺気が突き刺さる。
「チミのことは嫌いじゃないよ。でも、どっちみち殺さなきゃいけないし。あんまり長い間殺してなくて、腕が鈍ってちゃいけないし。…チミもさ、好きな男に殺される方が良いでしょ? だから、」
────ああ、私の気持ち、全部お見通しだったんだ。
ヘルブラム卿の両手が、私の肩甲骨をなぞる。そこはまさに、妖精族なら羽が生えている場所で。
「背中から切り裂いてあげよう」
低く、深い闇を孕んだ声。息がかかるほどの耳元で囁かれて、こんな状況でありながらも、脳髄は甘く痺れた。
続いて来る痛みに備え、体中をこわばらせる。───だが、あの鋸状の刃が、私の背を襲うことはなかった。
「なーんて、本当に殺されると思った? いつもおしゃべりしてくれるのに、こんな簡単には殺してあげないよ!」
じゃあ俺っちそろそろお仕事の時間だから、と、ヘルブラム卿は変身して出て行ってしまった。
「ど、どうして…………」
どうして私、こんなにドキドキしてるんだろう? 殺されかけたから? それとは違う、なにかいけない高揚感が、私の頭を支配している。
「可笑しい子だと思われるかも…」
それとも、ヘルブラム卿はここまで計算済みなのかな?
『こんな簡単には殺してあげないよ!』
つまり、いつかは殺してくれるってこと?
「ふふ、あはははは…!」
体で受け止めきれなくなった興奮が、ふいに哄笑として現れる。仕事が終わったらヘルブラム卿に訊いてみよう、全部諸々。
「あの……ヘルブラム卿」
「うん?」
私が恐る恐る、といった感じに尋ねると、ヘルブラム卿は読んでいた本をパタリと閉じた。
「ヘルブラム卿が生前大量殺戮を行った際、特定の方法にこだわっていた、と聞いたのですが……それはどのような方法なのでしょうか?」
「あー………」
「あ、あの、別に無理に訊こうってわけではないので…………」
小間使いの私が正体を知り、ここまで内情に踏み入ったことを聞かせてもらえていることさえ奇跡なのだ。しかし、ヘルブラム卿は普段とはうってかわって鋭い目付きで、話し始めてくれた。
「俺っちが人間を殺してまわるようになった理由、それは知ってるよね?」
「はい、仲間の妖精族を目の前で惨殺されたから……」
「その、惨殺された理由はなんだと思う?」
「妖精族と言えば………まさか」
「……相変わらず察しが良くて助かるよ」
背筋に悪寒が走る。
妖精族の羽…それは今でも秘薬であると信じられており、高額で取引されている。
「復讐として殺すなら……そりゃあ同じ殺し方をするよねェ?」
私は思わず視線を逸らしてしまう。背中越しでも、ヘルブラム卿が音も立てずに立ち上がるのが分かる。
冷たい殺気が突き刺さる。
「チミのことは嫌いじゃないよ。でも、どっちみち殺さなきゃいけないし。あんまり長い間殺してなくて、腕が鈍ってちゃいけないし。…チミもさ、好きな男に殺される方が良いでしょ? だから、」
────ああ、私の気持ち、全部お見通しだったんだ。
ヘルブラム卿の両手が、私の肩甲骨をなぞる。そこはまさに、妖精族なら羽が生えている場所で。
「背中から切り裂いてあげよう」
低く、深い闇を孕んだ声。息がかかるほどの耳元で囁かれて、こんな状況でありながらも、脳髄は甘く痺れた。
続いて来る痛みに備え、体中をこわばらせる。───だが、あの鋸状の刃が、私の背を襲うことはなかった。
「なーんて、本当に殺されると思った? いつもおしゃべりしてくれるのに、こんな簡単には殺してあげないよ!」
じゃあ俺っちそろそろお仕事の時間だから、と、ヘルブラム卿は変身して出て行ってしまった。
「ど、どうして…………」
どうして私、こんなにドキドキしてるんだろう? 殺されかけたから? それとは違う、なにかいけない高揚感が、私の頭を支配している。
「可笑しい子だと思われるかも…」
それとも、ヘルブラム卿はここまで計算済みなのかな?
『こんな簡単には殺してあげないよ!』
つまり、いつかは殺してくれるってこと?
「ふふ、あはははは…!」
体で受け止めきれなくなった興奮が、ふいに哄笑として現れる。仕事が終わったらヘルブラム卿に訊いてみよう、全部諸々。