フラッシュバック
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
────今でもあの光景を鮮明に思い出す。
「何をしている⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎! そいつも対象だ! 何故庇う!」
「だってまだこんなに小さいんだぜ?! こいつぐらい見逃してやっても……!」
「この地の住民を全て殺せと命が下ったのだ。例外はない」
「っ……! どう見たっておかしいだろ!? 戦う意思もないやつすら皆殺しにするなんて……! それに兄貴たちもおかしい! なんで……なんでっ、人殺してるってのにそんなに──笑ってるんだよ!?」
「──チィッ!」
そうして帰還して、私が得たものは。
夜になっても埋まらない、宿舎の二人部屋の、向かいのベッドだった。
* * *
寒いからと布団を被って寝た日。
夜中に突如、ドラスティアが布団越しに脚を掴んできた。
それが、私がいなくなったのではと不安に駆られた故の行為と知るのに、時間はかからなかった。
ドラスティアは夜に寝ない。というか常に寝ない。眠る私の代わりに、周囲を警戒してくれる。精霊といっても、むこうの世界で普通に生きるヒトなのだから、寝ないでいいことはないと思うのだが。訓練された軍人だから、の域を超えている。
そして彼の弟は部隊を裏切っている。そのぐらいはこの世界にも伝わっている。
彼が時たま見せる苦しげな顔は、この記憶によるものだろう。
「…………」
今日もその日だ。ベッドに横たわる私を見るドラスティアの目は、厳しくも、どこか苦しんでいるように見える。
ライトを常夜灯に変える。白く無機質に光を反射していた装甲が、夕方のような密やかな色に染まり、同時に、彼の表情が──彼自身は自覚していないかもしれないが──心配の比率を増やしたものになって、見下ろしている。
後毛じみた前髪の下の赤い目。切れ長で眼力の強い赤い目。片側だけの垂れ目。それが様々な色を見せていることを、知っている。
ならば、それに応えたって、いいはずだ。
「……一緒に寝ようよ」
私がそう言うと、ドラスティアは、軽く目を見開いた。
「……いいのか」
拒絶ではなく、確認をした時点で、彼の精神は限界に近かったのだろう。
「うん。窮屈だろうから、たまにはその装甲も脱いで……」
「……言い忘れていたが、この下は全裸だ」
「えっ」
眠気と気遣いでゆったりとしていた意識が、急に醒める。
「骨格から戦闘に適した形に改造される以上、インナーのようなものは着れない」
「えっ、そっ……」
流石に逡巡する。単に驚いたとか恥ずかしいから、ではない。正直なところ、私は男性が苦手だ。普段のドラスティアは『モンスター』のカテゴリのため平気だが、装備を脱ぐとなると、恐らく自分の中で『男性』のカテゴリに変わる。それでもいいと、平気だろうと思って声をかけたが、そんな事実を知ってしまうと躊躇ってしまう。
が。
ここはもう、押し切ってみることにした。
「それでもいいよ。寒くなければ……」
「──わかった。」
返事をしたドラスティアの眉は、ほんの少しだが、泣く時のように、顰められていた。
彼が私に背を向ける。多くのケーブルが目に入る。銃だけは、サイドテーブルに置かれた。機械が変形する音が聞こえたのを合図に、私は目を覆う。機械どころか、骨と肉が変わる音がする。バチバチと電気が弾ける。終刻変転のイラストでも分かる、あのシークエンスは痛いに違いない。それでも、彼は吐息一つ漏らさない。終わったであろう瞬間を察して、声をかける。
「フリーサイズのシャツがあるから、あれなら着れる、かも……」
素足がフローリングを歩く湿った音。ふわっと、彼の匂いが届いた。人間の男性とはまた違う、染みついた金属と血漿の匂いと、ほんの少し獣っぽい香り。クローゼットにかけてあるハンガーが動かされている。ほどなくして衣擦れの音がして、足音が近付いてきた。
「入るぞ」
目を開けると、私のシャツを肩にかけたドラスティアが、控えめに掛け布団を持ち上げていた。やっぱりサイズ的に着ることは叶わなかったらしい。なるべく奥に寄って、歓迎の意を示す。
初めて見る彼の躰は、腕も胸元も傷でいっぱいだった。顔がこれだけ傷を負っているのだから当然でもある。いつも上にある彼の顔が、この時ばかりは横に並んだ。ものすごく変な感じだ。眼帯についた細かな傷までよく見える。
そっと首に腕を回し、抱き寄せる。
「ここにいるよ」
彼の襟足が少しくすぐったい。長い耳も触れてくる。身を寄せると温かいどころか、熱い。彼がこんなにも熱いなんて知らなかった。ドラゴンだからだろうか? ドラゴンといえば、ある程度種族を問わず炎を吐けるイメージがある。だから内側に高熱を帯びるのかもしれない。
「私は寝ていても警戒は解かない。だから安心して寝るんだぞ」
そう言われても、この状況ではあまり眠れる気がしない。それにこの感じ、ドラスティアはまた寝ないつもりだろう。
「一緒に、眠れそうだったら寝ようよ。しばらく私寝れそうにないから……」
でも彼の温度のお陰で、芯から体が温まっている。もしかすると、案外すぐに眠りに落ちてしまうかもしれない。
「電気、消すね」
「何をしている⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎! そいつも対象だ! 何故庇う!」
「だってまだこんなに小さいんだぜ?! こいつぐらい見逃してやっても……!」
「この地の住民を全て殺せと命が下ったのだ。例外はない」
「っ……! どう見たっておかしいだろ!? 戦う意思もないやつすら皆殺しにするなんて……! それに兄貴たちもおかしい! なんで……なんでっ、人殺してるってのにそんなに──笑ってるんだよ!?」
「──チィッ!」
そうして帰還して、私が得たものは。
夜になっても埋まらない、宿舎の二人部屋の、向かいのベッドだった。
* * *
寒いからと布団を被って寝た日。
夜中に突如、ドラスティアが布団越しに脚を掴んできた。
それが、私がいなくなったのではと不安に駆られた故の行為と知るのに、時間はかからなかった。
ドラスティアは夜に寝ない。というか常に寝ない。眠る私の代わりに、周囲を警戒してくれる。精霊といっても、むこうの世界で普通に生きるヒトなのだから、寝ないでいいことはないと思うのだが。訓練された軍人だから、の域を超えている。
そして彼の弟は部隊を裏切っている。そのぐらいはこの世界にも伝わっている。
彼が時たま見せる苦しげな顔は、この記憶によるものだろう。
「…………」
今日もその日だ。ベッドに横たわる私を見るドラスティアの目は、厳しくも、どこか苦しんでいるように見える。
ライトを常夜灯に変える。白く無機質に光を反射していた装甲が、夕方のような密やかな色に染まり、同時に、彼の表情が──彼自身は自覚していないかもしれないが──心配の比率を増やしたものになって、見下ろしている。
後毛じみた前髪の下の赤い目。切れ長で眼力の強い赤い目。片側だけの垂れ目。それが様々な色を見せていることを、知っている。
ならば、それに応えたって、いいはずだ。
「……一緒に寝ようよ」
私がそう言うと、ドラスティアは、軽く目を見開いた。
「……いいのか」
拒絶ではなく、確認をした時点で、彼の精神は限界に近かったのだろう。
「うん。窮屈だろうから、たまにはその装甲も脱いで……」
「……言い忘れていたが、この下は全裸だ」
「えっ」
眠気と気遣いでゆったりとしていた意識が、急に醒める。
「骨格から戦闘に適した形に改造される以上、インナーのようなものは着れない」
「えっ、そっ……」
流石に逡巡する。単に驚いたとか恥ずかしいから、ではない。正直なところ、私は男性が苦手だ。普段のドラスティアは『モンスター』のカテゴリのため平気だが、装備を脱ぐとなると、恐らく自分の中で『男性』のカテゴリに変わる。それでもいいと、平気だろうと思って声をかけたが、そんな事実を知ってしまうと躊躇ってしまう。
が。
ここはもう、押し切ってみることにした。
「それでもいいよ。寒くなければ……」
「──わかった。」
返事をしたドラスティアの眉は、ほんの少しだが、泣く時のように、顰められていた。
彼が私に背を向ける。多くのケーブルが目に入る。銃だけは、サイドテーブルに置かれた。機械が変形する音が聞こえたのを合図に、私は目を覆う。機械どころか、骨と肉が変わる音がする。バチバチと電気が弾ける。終刻変転のイラストでも分かる、あのシークエンスは痛いに違いない。それでも、彼は吐息一つ漏らさない。終わったであろう瞬間を察して、声をかける。
「フリーサイズのシャツがあるから、あれなら着れる、かも……」
素足がフローリングを歩く湿った音。ふわっと、彼の匂いが届いた。人間の男性とはまた違う、染みついた金属と血漿の匂いと、ほんの少し獣っぽい香り。クローゼットにかけてあるハンガーが動かされている。ほどなくして衣擦れの音がして、足音が近付いてきた。
「入るぞ」
目を開けると、私のシャツを肩にかけたドラスティアが、控えめに掛け布団を持ち上げていた。やっぱりサイズ的に着ることは叶わなかったらしい。なるべく奥に寄って、歓迎の意を示す。
初めて見る彼の躰は、腕も胸元も傷でいっぱいだった。顔がこれだけ傷を負っているのだから当然でもある。いつも上にある彼の顔が、この時ばかりは横に並んだ。ものすごく変な感じだ。眼帯についた細かな傷までよく見える。
そっと首に腕を回し、抱き寄せる。
「ここにいるよ」
彼の襟足が少しくすぐったい。長い耳も触れてくる。身を寄せると温かいどころか、熱い。彼がこんなにも熱いなんて知らなかった。ドラゴンだからだろうか? ドラゴンといえば、ある程度種族を問わず炎を吐けるイメージがある。だから内側に高熱を帯びるのかもしれない。
「私は寝ていても警戒は解かない。だから安心して寝るんだぞ」
そう言われても、この状況ではあまり眠れる気がしない。それにこの感じ、ドラスティアはまた寝ないつもりだろう。
「一緒に、眠れそうだったら寝ようよ。しばらく私寝れそうにないから……」
でも彼の温度のお陰で、芯から体が温まっている。もしかすると、案外すぐに眠りに落ちてしまうかもしれない。
「電気、消すね」