good night sweetheart
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おやすみ」
「おやすみ」
私は彼と言葉を交わし、照明を消す。
時刻は丁度0時。社会人として、常識的な就寝時間だろう。……が、眠れるわけがなかった。
「…………」
今日は上司のミスで仕事が長引いて、いつもより退勤が遅かった。つまり、自由に使える時間が少なかった! やりたいこといっぱいあるのに!
しかしそんな事情があろうと、彼は私に夜更かしを許さない。特に今日は週半ば、明日には普通に仕事がある。社会人として、そして彼の『親方』として、娯しみを優先することはできない。
(……とは、わかってるけどぉぉ……)
今日という日への無念は、私を明日から遠ざけた。眠れない。目が冴える。SNS見たい。絵描きたい。
「………………」
その状態のまま、しばらく経った。そして私はごそごそ、布団の中で動いた。スマホは枕元に置いてある。もう彼は寝ているはず。寒い夜だ、布団をかぶっても違和感はない。そろりと手をスマホへ伸ばす。取る。そのまま、布団の中にくるまる。
タイコンをタップすれば、彼の画像を使ったホーム画面が現れる。煌々とディスプレイが光る中、慣れた手つきでSNSを開いて、タイムラインを眺める。結構の数のフォロワーが、まだ起きて投稿している。あ、この商品気になる……。
「あっ」
だがそんな時間は長く続かず、外から布団をめくられると共に、タイコンの光越しに白い機体が見えた。
軽蔑するように細めた水色の眼。太陽のような差し色の橙。先程寝る前の挨拶をした彼────刀の神、ザンギエンだ。
「……」
「言い訳は、あるか?」
「……な、ないです……」
はあ、と短く溜息。タイコンの画面から光が消える。暗闇になった中で、彼の眼が光っている。
「寝ろ」
「ね、眠れなくて……」
「なら余計タイコンを見るな。ブルーライトは眠りを妨げる原因になるんだぞ」
「わ、わかってるけど、」
「…………」
ザンギエンの眼光が余計鋭くなる。私はなんとかこれ以上怒られまいと、首を傾げてみる。すると、先程より長い溜息が聞こえた。
「眠れない理由も分かる。だが、それでも寝ろ。健康が一番なんだぞ」
「ザンギエン……」
今の流れなら言えそう。今までずっと、ザンギエンにやってもらいたかったこと。
「だったら……寝かしつけてほしいな……、なんて、」
「いいだろう」
「えっ!?」
私の予想を飛び超えて、ザンギエンはあっさりと私の頼みを承諾した。
「いいの……?」
「ああ。親方が困っているならば、それを解決するのは当たり前だ」
──流石はザンギエン。私の好きなひと。どんな時でも頼れる。
「じゃあ……お願いします」
「よし。まずは、少し冷えているのかもしれないな。体が冷えると眠りにくくなる。待っていろ、白湯を作ってくる」
そう言うとザンギエンはキッチンに向かい、やかんに水を注いで、コンロに置いて火にかけた。ほどなくして、沸騰する音がする。ザンギエンはお湯をカップに少し入れると、両手で持って戻ってきた。
「ふーっ、ふーっ……」
ザンギエンの眼のライトだけが照らす中、ザンギエンはカップに注いだお湯を冷ましてくれている。自分でできるよ、と言おうかとも思ったが、彼に甘えることにした。
「ほら、丁度いい温度になったぞ」
ほどなくして、ザンギエンはそう言ってカップを差し出してくれる。ザンギエンはロボの特徴を持った神だから、もしかすると物の温度を見ることもできるのかもしれない。
口をつけてそっとカップを傾けると、まさに最適な熱さの白湯が流れ込んできた。少しだけ体温より熱くて、体を芯から温めてくれる。
「ふぅ……」
ふと、そんな声が自然と漏れた。ザンギエンを見ると、薄く微笑んでくれている。
「どうだ?」
「おいしい……今まで飲んだ白湯の中で一番だよ」
「はは、大袈裟だな」
もう一口飲むと、さらにじんわり温かくなってくる。
「ちょっと眠くなってきたかも」
「そうか。なら、横になってみるといい」
言われるまま、改めて布団に潜り込む。
「焦ると余計眠れなくなる。ゆっくり、日常生活とは違うことを考えてみるといい。そうだな……例えば、深い森の奥で暮らしてみる、なんてことを」
深い森の奥……良いな、ザンギエンと一緒に、そういうところで暮らしてみたい。
ザンギエンの眼のライトが消える。人間で言うと、目を閉じた状態なのだろう。そしてザンギエンは、ぽん、ぽん、と、布団越しに優しく叩いてくれる。
森の奥の、澄んだ青い香りの空気に想いを馳せながら、目を閉じる。『ザンギエンが寝かしつけてくれている』という安心感から、すっと体から力が抜けていく。
「おやすみ」
「おやすみ」
私は彼と言葉を交わし、照明を消す。
時刻は丁度0時。社会人として、常識的な就寝時間だろう。……が、眠れるわけがなかった。
「…………」
今日は上司のミスで仕事が長引いて、いつもより退勤が遅かった。つまり、自由に使える時間が少なかった! やりたいこといっぱいあるのに!
しかしそんな事情があろうと、彼は私に夜更かしを許さない。特に今日は週半ば、明日には普通に仕事がある。社会人として、そして彼の『親方』として、娯しみを優先することはできない。
(……とは、わかってるけどぉぉ……)
今日という日への無念は、私を明日から遠ざけた。眠れない。目が冴える。SNS見たい。絵描きたい。
「………………」
その状態のまま、しばらく経った。そして私はごそごそ、布団の中で動いた。スマホは枕元に置いてある。もう彼は寝ているはず。寒い夜だ、布団をかぶっても違和感はない。そろりと手をスマホへ伸ばす。取る。そのまま、布団の中にくるまる。
タイコンをタップすれば、彼の画像を使ったホーム画面が現れる。煌々とディスプレイが光る中、慣れた手つきでSNSを開いて、タイムラインを眺める。結構の数のフォロワーが、まだ起きて投稿している。あ、この商品気になる……。
「あっ」
だがそんな時間は長く続かず、外から布団をめくられると共に、タイコンの光越しに白い機体が見えた。
軽蔑するように細めた水色の眼。太陽のような差し色の橙。先程寝る前の挨拶をした彼────刀の神、ザンギエンだ。
「……」
「言い訳は、あるか?」
「……な、ないです……」
はあ、と短く溜息。タイコンの画面から光が消える。暗闇になった中で、彼の眼が光っている。
「寝ろ」
「ね、眠れなくて……」
「なら余計タイコンを見るな。ブルーライトは眠りを妨げる原因になるんだぞ」
「わ、わかってるけど、」
「…………」
ザンギエンの眼光が余計鋭くなる。私はなんとかこれ以上怒られまいと、首を傾げてみる。すると、先程より長い溜息が聞こえた。
「眠れない理由も分かる。だが、それでも寝ろ。健康が一番なんだぞ」
「ザンギエン……」
今の流れなら言えそう。今までずっと、ザンギエンにやってもらいたかったこと。
「だったら……寝かしつけてほしいな……、なんて、」
「いいだろう」
「えっ!?」
私の予想を飛び超えて、ザンギエンはあっさりと私の頼みを承諾した。
「いいの……?」
「ああ。親方が困っているならば、それを解決するのは当たり前だ」
──流石はザンギエン。私の好きなひと。どんな時でも頼れる。
「じゃあ……お願いします」
「よし。まずは、少し冷えているのかもしれないな。体が冷えると眠りにくくなる。待っていろ、白湯を作ってくる」
そう言うとザンギエンはキッチンに向かい、やかんに水を注いで、コンロに置いて火にかけた。ほどなくして、沸騰する音がする。ザンギエンはお湯をカップに少し入れると、両手で持って戻ってきた。
「ふーっ、ふーっ……」
ザンギエンの眼のライトだけが照らす中、ザンギエンはカップに注いだお湯を冷ましてくれている。自分でできるよ、と言おうかとも思ったが、彼に甘えることにした。
「ほら、丁度いい温度になったぞ」
ほどなくして、ザンギエンはそう言ってカップを差し出してくれる。ザンギエンはロボの特徴を持った神だから、もしかすると物の温度を見ることもできるのかもしれない。
口をつけてそっとカップを傾けると、まさに最適な熱さの白湯が流れ込んできた。少しだけ体温より熱くて、体を芯から温めてくれる。
「ふぅ……」
ふと、そんな声が自然と漏れた。ザンギエンを見ると、薄く微笑んでくれている。
「どうだ?」
「おいしい……今まで飲んだ白湯の中で一番だよ」
「はは、大袈裟だな」
もう一口飲むと、さらにじんわり温かくなってくる。
「ちょっと眠くなってきたかも」
「そうか。なら、横になってみるといい」
言われるまま、改めて布団に潜り込む。
「焦ると余計眠れなくなる。ゆっくり、日常生活とは違うことを考えてみるといい。そうだな……例えば、深い森の奥で暮らしてみる、なんてことを」
深い森の奥……良いな、ザンギエンと一緒に、そういうところで暮らしてみたい。
ザンギエンの眼のライトが消える。人間で言うと、目を閉じた状態なのだろう。そしてザンギエンは、ぽん、ぽん、と、布団越しに優しく叩いてくれる。
森の奥の、澄んだ青い香りの空気に想いを馳せながら、目を閉じる。『ザンギエンが寝かしつけてくれている』という安心感から、すっと体から力が抜けていく。
「おやすみ」