よりあたたかな日々の始まり
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プロミスについて説明を受けた翌日、あまりは早速、自分だけで『サイン&チャキり会』を開いてみていた。
(まだまだ、あたし1人でやるのちょっと怖いけど……)
昨日初めて行った際には途中で逃げてしまい、大勢のアイドルたちに助けられた。そして参加してくれた子たちは、あまりが逃亡したにも関わらず、彼女が戻ってくるのを待ってくれていた。そういった恩に報いるため、自分を変えるため、あまりは今日も挑戦していた。
「もちきちちゃん! 今日も来てくれたんだ!」
「うん! あまりちゃん、私のこと覚えててくれたの!?」
「もちろんだよ!」
昨日ですっかり慣れたあまりは、色紙に滑らかにペンを走らせる。『見知った顔』の存在ができたお陰で、テンパりやすいあまりでも、比較的スムーズな応対ができるようになっていた。初めて来てくれたファンとも、問題なく会話できる。
「あまりちゃん、今日もライブするの?」
「うーん、今日はどうしようかな〜」
互いのアイドルキーをマイクに挿し、チャキる。その度に、ゆいを完全復活させるための『キラキラ』が溜まっていく。
列がかなり進んだ頃、とあるファンの順番がやってきた。
そのアイドルは執事風のコーデを纏っていて、ぎこちない動作で、視線すらどこに置けばいいのか迷っているようだった。
(ちょっと、あたしに似てるかも)
似た者同士だからか、あまりは彼女の様子を一目見て、親近感を覚えた。
「お名前は?」
「***……」
「初めて来てくれるよね? もしかして、あたしと同じで緊張しやすかったりする?」
「うん。それもあるんだけど、実は今日初めてプリパラに来て……」
「え!? 初めてプリパラに来たの!? 元パラとかでもなくて!?」
「元パラ……うーん、元パラと言いきれないような、微妙な感じで……」
「そっか、それじゃあ、すごい緊張してるよね……」
サラサラと赤ペンが走り、色紙にあまりのかわいらしいサインが描かれていく。出来上がった色紙を置くと、あまりは吃りながら口を開いた。
「こ、この後って、時間ある?」
「えっ、あるよ?」
「じゃあさ、プリパラを案内するよ!」
「えっ!?」
「あたしもまだあんまり、詳しくはないけど……。でも1人じゃきっと、心細いだろうし……だから、一緒に見て回ろうよ!」
「あ……ありがとう!」
***と名乗ったアイドルの表情が、ぱあっと明るくなる。
(よかった……)
自分と近い人間の助けになれた気がして、あまりもまた、胸の内があたたかいものに包まれていた。
「トモキーチャキろ!」
「うん!」
あまりと***が、それぞれのキーとマイクを構える。あまりのキーが***のマイクに、***のキーがあまりのマイクに、そっと先端が突き刺さる。チャキ、と軽い音がして、プリパラの大原則である、『みんなトモダチ』の象徴たる行為が、今この瞬間に完了する。
「初めてチャキる相手があまりちゃんで、本当によかった……」
「あたしも、初めてチャキる相手になれて嬉しい! じゃあごめんけど、チャキり会終わるまで、少しだけ待っててくれる……?」
「うん!」
***は満面の笑みで色紙を受け取り、返事をした。
サイン&チャキり会が終わると、あまりは会場の周囲を見回した。すると、すぐそばのベンチに***は座っていた。
「お待たせ!」
あまりが近付いてきたのを見て、***は立ち上がる。
「まずどこ行こう? どんなところ行ってみたい?」
あまりは話しながら、***の手に握られた色紙が目に入る。
「あ、それずっと持ってると邪魔だよね……。どうしよう、バッグとかあった方がいいかな? あでも、プリパラの中で売ってるのって結構かわいい系のデザインが多いし……」
***は執事風コーデや、落ち着いた雰囲気からして、タイプはクールかセレブのように見える。そして恐らく年頃も、あまりと同じかそれより上で、甘すぎるデザインを好むようには思えなかった。
「あああごめん! あたしばっか喋っちゃって!!」
「ううん、ありがとう。確かにバッグ欲しいな……。一緒に見てくれる?」
「うん!」
こうして、2人のプリパラ巡りが始まった。
「この辺に、バッグとかアクセとか売ってるお店があるはず……」
あまりと***は、多くの店が立ち並ぶストリートを歩く。各ブランドの専門店からアイドルがプロミスとして運営する店舗まで、アイドルランドには数多の選択肢が存在する。
「お店がたっくさんある……。あまりちゃんが連れてきてくれなかったら、絶対迷ってたよ」
「よかった、なんとなくでも道覚えてて……。どのお店に行こう? ***ちゃ、さ、ちゃ……」
あまりが呼び名に困っていることを察した***が、ふふ、と笑いを漏らす。
「『ちゃん』でも『さん』でも、あまりちゃんが呼びやすい方で大丈夫だよ」
「そ、そっか! ***さん、大人っぽい雰囲気だから、『ちゃん』って呼んだら失礼な感じがして……」
「……」
「ぁぁでも本当は『ちゃん』の方がよかったらいつでも言ってね!!」
テンパるあまりに、***は少し心配そうに言う。
「……気にならないの? 僕が何歳かとか」
「こっ、こういう時は確かに、分かった方がちょっと助かる、けど……」
あまりはその、冬の黄昏時のような目で、***を見据える。
「プリパラは、年齢なんて関係なく、誰でも好きな自分でいられる場所だから……。何歳とか気にしないよ!」
「……そっか」
***は安心して、少し頬を赤面させ、視線を逸らす。
「で、でも、***さんが敬語とか気にするタイプならあたしああああ」
「僕の方こそ、最初から馴れ馴れしく話しかけてごめんね……」
「ぜっ、ぜんぜん! 気にしてない! というかプリパラって、結構最初からフレンドリーに話しかけてくれる子多いし!」
会話が一段落して、あまりは当初の予定に気付く。
「あっじゃなくて! ***さんのブランドのこと聞きたかったんだ! 初めて見るコーデだけど、あたしのブランドと近い感じがして……」
「うん、Hysteric Bunnyとコンセプトは近いブランドだよ。着てる人がいないのは、プリパラに来る子にとってはちょっとかわいさが足りないからかな……」
「そうかな? 確かにクールなコーデだけど、かわいいポイントもあって、あたしは好きだな!」
「あ、ありがとう……」
コーデを褒められた***は再び赤面して、視線を逸らす。その姿を見てあまりは自然とときめいた。
(か、かわいい……)
が、自分が結局言わなければならないことを言いきれていないことに気付き、気を取り直す。
「あっ、だから、***さんのコーデのブランドのお店に行けば、良いバッグが買えるかなって」
「うん、そうだね。それが確実かも。どの辺にあるかな?」
「たしかHysteric Bunnyのお店がある辺りはハードなブランドが集まってたはずだから、その辺に行けばあるかも!」
「じゃあその辺に行こう!」
そのままトコトコと歩いていくと、順調に目的の店に辿り着いた。店内はゴシックやロック傾向の、特に大人っぽいアイテムが溢れている。
「わあ……! かわいい……!」
キラキラ輝いて見えるそれらに、あまりは感嘆の声を漏らす。特にヘアピンの類に目を惹かれた。
「あ、あたしも何か、買っちゃおっかな……」
小さなリボンがついた甘めのものや、ラインストーンの豪奢なもの。シンプルに洗練された、つけるコーデを選ばないようなものもある。
「……いやいや、今日は***さんを案内するために、しっかりしないと」
「僕なら大丈夫。あまりちゃんも、見たいものがあったら見て?」
「えっ!? い、いいの?」
「当たり前だよ」
***の声色は、どこまでも穏やかだ。
(***さん、優しいなぁ……)
***の言葉に甘えて、あまりは自分用のアクセを探し始めた。
しばらくした後、***が1つのバッグを持ってあまりの元へ来た。
「うん、これにしようかな」
それは肩掛けカバンで、厚さはないものの、プリパラ内で使うことを考えると十分な大きさだった。シンプルなデザインに、茶目っ気のあるチャームがついている。
「わあ、***さんのコーデにすごい似合う!」
「ありがとう……。あまりちゃんは? 欲しいのあった?」
「あっ、た、けど……欲しいのありすぎて……」
あまりが見ていたヘアアクセの並びを見てみると、確かにどれも好きそうなデザインだった。
「これは迷うねぇ」
「うん……」
「もうちょっと考える?」
「いっ、いいよいいよ。あたしはまた来ればいいし……」
「そう?」
「うん。なんか、今日は決めきれない気がする……」
元々あまりは何か買うことが目的で来たわけではない。こういう時の迷いは、大体延々と時間をかけた末に決断できずに終わる。あまりは経験則でそれが分かっていた。
「そっか……。もしよかったら、次来る時付き合わせてね」
「えっ!?」
「じゃ、これ買ってくるよ」
『余っている』あまりが『付き合わせてね』なんて言われるのは初めてで、脳内で***の言葉がリフレインする。
(付き合わせてね……付き合わせてね……)
「お待たせ! 次はどんなとこ行こうか?」
「あっ!」
***に声をかけられ、あまりの意識が戻ってくる。
同時に、「ぐ〜」とあまりのお腹が鳴った。
「あ……」
「ふふ、ご飯がいいかな」
「は、はずかしい……」
「大丈夫だって。僕もお腹空いてるから、ご飯でもどうかなって言おうとしてたんだ」
「ほ、ほんと……?」
「うん! 何がいいかな?」
「あたしはなんでも……***さんが行きたいところ行こうよ!」
「うーん、じゃあ、たこ焼きとかどう?」
「いいね!」
あまりが案内した先は、フードコートのようになっている場所で、たこ焼きプロミスの店だった。店主のアイドルがくるくるとたこ焼きをひっくり返しながら、二人に声をかける。
「おふたりさん初めてやろ? ウチは本場のたこ焼き屋の娘やから、そこらの店とは比べ物んならんぐらいうまいで!」
「へ〜!」
「ねぎ、チーズ、梅干し……味噌汁にチョコレート? 色んなトッピングがあるんだね」
「せや! 女の子はたくさんのものから選ぶんが大好きやからな!」
メニュー表には、鉄板のものから人を選ぶものまで、大量のトッピングの選択肢が載っている。その中で、あまりは一つのものに完全に釘付けになっていた。
(わさマヨ味……!)
「決まった?」
「うん!」
***からの問いかけに、あまりは大きく頷く。
「あたしわさびマヨネーズ!」
「僕は、明太子で」
「あいよ!」
店主のアイドルは注文を受けると、丸く焼けたたこ焼きをひょいひょいと盛り付けて、ソースにおかか、さらにわさマヨと明太子をそれぞれかけて、二人の前に出した。
「はい、おまちどう!」
「ありがとう!」
二人は皿と箸を受け取ると、座るテーブルを探す。
「どこ座る?」
「あたしはどこでも……」
「じゃ、あそこにしよっか」
***が指さすと、その先に二人で向かった。
二人は向かい合わせで座ると、一緒に手を合わせた。
「「いただきます」」
声が重なって、食事が始まる。焼きたてのたこ焼きがほかほかと湯気を立てている。少しやけどしそうな熱さに、はふはふと息を漏らしながら噛めば、生地の外側がカリ、と気持ち良い食感。そこに奥からとろりとした感触が合わさり、出汁とソースの旨味が沁み渡る。
「おいしい!」
「うん! 確かにレベルが違う!」
それはあまりにとって、今までの中で一番美味しいたこ焼きだった。わさマヨの少しピリっとしたアクセントも、全体を引き締めるのにちょうどいい。
ここまで美味だと、他のトッピングも気になってしまう。
(***さん、明太子好きなのかな。あたしも結構好き……。こういう時、仲の良い子どうしだったら、『ひとつ交換しよ』とかって言うのかな……)
あまりは、理想の友達像に想いを馳せる。
「どうかした?」
「えっ!? なっ、なんでもない!」
じっと見すぎたのか、***が不思議そうにあまりを見つめてきた。
(そっ、そういえば、全然会話がはずんでない! 話題、話題……)
テンパりながら、***との出会いから必死に思い起こす。何をして、何を話していたか。
(あ……)
そこで、あまりは一つ気になる点があることに気付く。
「そういえば、***さんは今日初めてプリパラに来たって言ってたけど、どうやってあたしのこと知ってくれたの?」
「……プリパラの外でも、プリパラTVでライブを見ることはできるからね。元々、アイドルとかには興味なかったんだけど、たまたまあまりちゃんのライブを見たんだ。それで、すっごく素敵だなぁって……」
「そ、そんな……」
真っ直ぐに褒められて、あまりは赤面してしまう。
「しかも、元々アイドルに興味なかったって……」
「そんな僕でもプリパラに来てみようって思えるぐらい、あまりちゃんのライブには力があるんだよ」
***は水を一口飲むと、改めてあまりを見つめた。
「僕は、君に会うためだけにここに来たんだ」
「あたしに、会うためだけ……」
「うん」
「そ、そんな、あたしなんて……。ほ、他にも魅力的なアイドルはたくさんいるから、そういう子たちのライブ見た方がアイドルの良さは分かるんじゃ……」
「あまりちゃん……」
あまりは強く褒められた反動で自己卑下してしまう。しかし、***も引かない。
「もしかしたらそうかもしれない。所謂王道なアイドルの良さは、他の子の方が持ってるかも。でも僕にとっては、あまりちゃんが既存のアイドルの枠に囚われないライブをしてくれたから、アイドルっていうものに興味を持てたんだよ」
「***、さん……」
「それにそんなこと言ってたら、また『アイドルは「私なんて」と言ってはいけない』って、南委員長に怒られちゃうよ?」
「あれ? みれぃちゃんのこと知ってるの?」
「く、来る前に少しだけ、プリパラについて調べはしたからね」
そうして会話が弾むうちに、二人はいつの間にやら食べ終わっていた。
「「ごちそうさまでした」」
それぞれ皿と箸を返しに、返却口に向かう。裏方担当のアイドルが微笑んで受け取る中、***は自然と言った。
「おいしかったよ、ごちそうさま」
「!!」
その姿に、あまりは衝撃を受ける。
(すごい……!! ***さん、お店の人に『ごちそうさま』言えるんだ……! いつも言わなきゃって思ってるけどテンパっちゃって、今まで言えたことない……!)
一瞬のうちに、あまりの脳内に様々な思考が走る。
(い、今言わなきゃ! ***さんが先に言ってくれたから、いつもより言いやすいはず! がんばれ! あまり!)
そんな脳内格闘の末、あまりの口から言葉が放たれた。
「ごっ、ごちそうさまです!」
「はい、きれいに食べてくれてありがとう〜!」
(い、言えた……!)
店を離れながら、あまりはほっと胸を撫で下ろした。
広場に出ると、あまりと***は一度立ち止まって、顔を見合わせた。
「次はどこ行く?」
「あそうだ、案内してもらってる立場であれなんだけど、今日他のアイドルとの予定って入ってなかったの? このまま付き合わせても大丈夫?」
「予定? 何かあったっけ……?」
んー、とあまりは頭の中を探ってみる。大きな予定はなかったが、一つ気になるものはあった。
「もう少ししたら、毎日やってるWITHのライブがあるから、もしかしたらゆいちゃんが今日こそ完全復活するかも」
「そっか。じゃあ僕はこの辺で大丈夫だから、ゆいちゃんを見届けてあげて?」
そう言い残すと、***は一方的に去ろうとする。
「ま……待って!」
その背中を、あまりは呼び止めた。
「まだ全然、案内できてない! それに……」
振り返った***は、あまりが言うことを、黙って待っているようだった。
『余っている』あまりにとって、今日はたくさん初めてのことがあった。誰かを案内するのも、誰かとショッピングをするのも、誰かとふたりでご飯を食べるのも、初めての経験で、とても楽しかった。さらに***はあまりと近いところがあって、一緒にいて気が楽だった。もっと言えば、どうしても年下が多いプリパラの中で、なんとなく甘えても大丈夫な雰囲気がある***は、隣にいて落ち着く感じがした。
そんな溢れんばかりの感情を、あまりは懸命に言葉にする。
「あたし、***さんと……」
続く言葉は、既に明白だった。
(もっと一緒にいたい!)
だが言葉に込めた感情の大きさ故に、緊張し、舌はもつれ、あまりの意図とは違う言葉として出てきてしまう。
「オットセイの真似がしたい!」
「え?」
「あ……」
──やらかした。あまりの脳内を、その感情が埋め尽くす。視界がぐるぐると回り、『どうにかしなきゃ』という信号が全身に伝わる。
あまりはいつものように、走ってその場から離れようとした。
「まま、間違えた──」
「待って!」
しかし***は、素早く反応し、走り去ろうとするあまりの右腕を掴んだ。
「別のこと、言おうとしてたんじゃない?」
「な、なんで分かるの……?」
「僕も、あまりちゃんと同じタイプだから……」
***が、複雑に微笑む。
「一回、深呼吸してみよ。吸って……」
「すーっ……」
「吐いて……」
「はー……」
「どう?」
「ちょ、ちょっと緊張がほぐれた、かも」
胸に手を当てると、もっと早鐘を打っていたらしい心臓が、少し落ち着きを取り戻していることが分かった。
「ゆっくりで大丈夫だから、あまりちゃんが思ってること、教えてくれる?」
「うん……」
優しい***の声色を聞いていると、あまりの心の中に、『ちゃんと言えそう』という気持ちが芽生えてきた。
そっと唇を開いて、あまりは言葉を紡ぐ。
「あたし、***さんともっと一緒にいたい。い、嫌かな……?」
あまりは照れて、少し上目遣いで***を見る。
***もまた少し照れながら、喜色満面で返事をした。
「ううん、むしろそう言ってもらえて、すっごく嬉しいよ!」
──その時、***の頭に、獣の耳が生える。
「えっ!?」
そして腰の辺りに、ぶんぶん揺れる尻尾が出現する。
「あっ! こ、これは……!」
驚くあまりに、***も動揺して一度耳を隠そうとするが、それも何か違うと思ったのか、結局両手が宙を彷徨う。
「こ、このコーデ、というかアクセが感情が昂ると犬の耳と尻尾が生えるらしくて、だから……!」
***は顔を赤くしながら、必死に説明しようとする。その間にも、尻尾はずっと激しく振られている。あまりもなんとか言葉を返す。
「そっ、そうなんだ!」
「うう……耳と尻尾に全部出るの、思ったより恥ずかしい……」
***がそう言うと、耳は垂れ、尻尾は動きをやめた。
先程とはうってかわってしょぼくれる***に、今度はあまりがフォローする。
「かっ、かわいいし、喜んでもらえてるのが分かって嬉しいよ!」
「ほ、本当に……?」
「うん! じゃあ、一緒に行こ!」
「うん!」
そうして二人は連れ立って、他のアイドルが待つ場所へと向かった。
(まだまだ、あたし1人でやるのちょっと怖いけど……)
昨日初めて行った際には途中で逃げてしまい、大勢のアイドルたちに助けられた。そして参加してくれた子たちは、あまりが逃亡したにも関わらず、彼女が戻ってくるのを待ってくれていた。そういった恩に報いるため、自分を変えるため、あまりは今日も挑戦していた。
「もちきちちゃん! 今日も来てくれたんだ!」
「うん! あまりちゃん、私のこと覚えててくれたの!?」
「もちろんだよ!」
昨日ですっかり慣れたあまりは、色紙に滑らかにペンを走らせる。『見知った顔』の存在ができたお陰で、テンパりやすいあまりでも、比較的スムーズな応対ができるようになっていた。初めて来てくれたファンとも、問題なく会話できる。
「あまりちゃん、今日もライブするの?」
「うーん、今日はどうしようかな〜」
互いのアイドルキーをマイクに挿し、チャキる。その度に、ゆいを完全復活させるための『キラキラ』が溜まっていく。
列がかなり進んだ頃、とあるファンの順番がやってきた。
そのアイドルは執事風のコーデを纏っていて、ぎこちない動作で、視線すらどこに置けばいいのか迷っているようだった。
(ちょっと、あたしに似てるかも)
似た者同士だからか、あまりは彼女の様子を一目見て、親近感を覚えた。
「お名前は?」
「***……」
「初めて来てくれるよね? もしかして、あたしと同じで緊張しやすかったりする?」
「うん。それもあるんだけど、実は今日初めてプリパラに来て……」
「え!? 初めてプリパラに来たの!? 元パラとかでもなくて!?」
「元パラ……うーん、元パラと言いきれないような、微妙な感じで……」
「そっか、それじゃあ、すごい緊張してるよね……」
サラサラと赤ペンが走り、色紙にあまりのかわいらしいサインが描かれていく。出来上がった色紙を置くと、あまりは吃りながら口を開いた。
「こ、この後って、時間ある?」
「えっ、あるよ?」
「じゃあさ、プリパラを案内するよ!」
「えっ!?」
「あたしもまだあんまり、詳しくはないけど……。でも1人じゃきっと、心細いだろうし……だから、一緒に見て回ろうよ!」
「あ……ありがとう!」
***と名乗ったアイドルの表情が、ぱあっと明るくなる。
(よかった……)
自分と近い人間の助けになれた気がして、あまりもまた、胸の内があたたかいものに包まれていた。
「トモキーチャキろ!」
「うん!」
あまりと***が、それぞれのキーとマイクを構える。あまりのキーが***のマイクに、***のキーがあまりのマイクに、そっと先端が突き刺さる。チャキ、と軽い音がして、プリパラの大原則である、『みんなトモダチ』の象徴たる行為が、今この瞬間に完了する。
「初めてチャキる相手があまりちゃんで、本当によかった……」
「あたしも、初めてチャキる相手になれて嬉しい! じゃあごめんけど、チャキり会終わるまで、少しだけ待っててくれる……?」
「うん!」
***は満面の笑みで色紙を受け取り、返事をした。
サイン&チャキり会が終わると、あまりは会場の周囲を見回した。すると、すぐそばのベンチに***は座っていた。
「お待たせ!」
あまりが近付いてきたのを見て、***は立ち上がる。
「まずどこ行こう? どんなところ行ってみたい?」
あまりは話しながら、***の手に握られた色紙が目に入る。
「あ、それずっと持ってると邪魔だよね……。どうしよう、バッグとかあった方がいいかな? あでも、プリパラの中で売ってるのって結構かわいい系のデザインが多いし……」
***は執事風コーデや、落ち着いた雰囲気からして、タイプはクールかセレブのように見える。そして恐らく年頃も、あまりと同じかそれより上で、甘すぎるデザインを好むようには思えなかった。
「あああごめん! あたしばっか喋っちゃって!!」
「ううん、ありがとう。確かにバッグ欲しいな……。一緒に見てくれる?」
「うん!」
こうして、2人のプリパラ巡りが始まった。
「この辺に、バッグとかアクセとか売ってるお店があるはず……」
あまりと***は、多くの店が立ち並ぶストリートを歩く。各ブランドの専門店からアイドルがプロミスとして運営する店舗まで、アイドルランドには数多の選択肢が存在する。
「お店がたっくさんある……。あまりちゃんが連れてきてくれなかったら、絶対迷ってたよ」
「よかった、なんとなくでも道覚えてて……。どのお店に行こう? ***ちゃ、さ、ちゃ……」
あまりが呼び名に困っていることを察した***が、ふふ、と笑いを漏らす。
「『ちゃん』でも『さん』でも、あまりちゃんが呼びやすい方で大丈夫だよ」
「そ、そっか! ***さん、大人っぽい雰囲気だから、『ちゃん』って呼んだら失礼な感じがして……」
「……」
「ぁぁでも本当は『ちゃん』の方がよかったらいつでも言ってね!!」
テンパるあまりに、***は少し心配そうに言う。
「……気にならないの? 僕が何歳かとか」
「こっ、こういう時は確かに、分かった方がちょっと助かる、けど……」
あまりはその、冬の黄昏時のような目で、***を見据える。
「プリパラは、年齢なんて関係なく、誰でも好きな自分でいられる場所だから……。何歳とか気にしないよ!」
「……そっか」
***は安心して、少し頬を赤面させ、視線を逸らす。
「で、でも、***さんが敬語とか気にするタイプならあたしああああ」
「僕の方こそ、最初から馴れ馴れしく話しかけてごめんね……」
「ぜっ、ぜんぜん! 気にしてない! というかプリパラって、結構最初からフレンドリーに話しかけてくれる子多いし!」
会話が一段落して、あまりは当初の予定に気付く。
「あっじゃなくて! ***さんのブランドのこと聞きたかったんだ! 初めて見るコーデだけど、あたしのブランドと近い感じがして……」
「うん、Hysteric Bunnyとコンセプトは近いブランドだよ。着てる人がいないのは、プリパラに来る子にとってはちょっとかわいさが足りないからかな……」
「そうかな? 確かにクールなコーデだけど、かわいいポイントもあって、あたしは好きだな!」
「あ、ありがとう……」
コーデを褒められた***は再び赤面して、視線を逸らす。その姿を見てあまりは自然とときめいた。
(か、かわいい……)
が、自分が結局言わなければならないことを言いきれていないことに気付き、気を取り直す。
「あっ、だから、***さんのコーデのブランドのお店に行けば、良いバッグが買えるかなって」
「うん、そうだね。それが確実かも。どの辺にあるかな?」
「たしかHysteric Bunnyのお店がある辺りはハードなブランドが集まってたはずだから、その辺に行けばあるかも!」
「じゃあその辺に行こう!」
そのままトコトコと歩いていくと、順調に目的の店に辿り着いた。店内はゴシックやロック傾向の、特に大人っぽいアイテムが溢れている。
「わあ……! かわいい……!」
キラキラ輝いて見えるそれらに、あまりは感嘆の声を漏らす。特にヘアピンの類に目を惹かれた。
「あ、あたしも何か、買っちゃおっかな……」
小さなリボンがついた甘めのものや、ラインストーンの豪奢なもの。シンプルに洗練された、つけるコーデを選ばないようなものもある。
「……いやいや、今日は***さんを案内するために、しっかりしないと」
「僕なら大丈夫。あまりちゃんも、見たいものがあったら見て?」
「えっ!? い、いいの?」
「当たり前だよ」
***の声色は、どこまでも穏やかだ。
(***さん、優しいなぁ……)
***の言葉に甘えて、あまりは自分用のアクセを探し始めた。
しばらくした後、***が1つのバッグを持ってあまりの元へ来た。
「うん、これにしようかな」
それは肩掛けカバンで、厚さはないものの、プリパラ内で使うことを考えると十分な大きさだった。シンプルなデザインに、茶目っ気のあるチャームがついている。
「わあ、***さんのコーデにすごい似合う!」
「ありがとう……。あまりちゃんは? 欲しいのあった?」
「あっ、た、けど……欲しいのありすぎて……」
あまりが見ていたヘアアクセの並びを見てみると、確かにどれも好きそうなデザインだった。
「これは迷うねぇ」
「うん……」
「もうちょっと考える?」
「いっ、いいよいいよ。あたしはまた来ればいいし……」
「そう?」
「うん。なんか、今日は決めきれない気がする……」
元々あまりは何か買うことが目的で来たわけではない。こういう時の迷いは、大体延々と時間をかけた末に決断できずに終わる。あまりは経験則でそれが分かっていた。
「そっか……。もしよかったら、次来る時付き合わせてね」
「えっ!?」
「じゃ、これ買ってくるよ」
『余っている』あまりが『付き合わせてね』なんて言われるのは初めてで、脳内で***の言葉がリフレインする。
(付き合わせてね……付き合わせてね……)
「お待たせ! 次はどんなとこ行こうか?」
「あっ!」
***に声をかけられ、あまりの意識が戻ってくる。
同時に、「ぐ〜」とあまりのお腹が鳴った。
「あ……」
「ふふ、ご飯がいいかな」
「は、はずかしい……」
「大丈夫だって。僕もお腹空いてるから、ご飯でもどうかなって言おうとしてたんだ」
「ほ、ほんと……?」
「うん! 何がいいかな?」
「あたしはなんでも……***さんが行きたいところ行こうよ!」
「うーん、じゃあ、たこ焼きとかどう?」
「いいね!」
あまりが案内した先は、フードコートのようになっている場所で、たこ焼きプロミスの店だった。店主のアイドルがくるくるとたこ焼きをひっくり返しながら、二人に声をかける。
「おふたりさん初めてやろ? ウチは本場のたこ焼き屋の娘やから、そこらの店とは比べ物んならんぐらいうまいで!」
「へ〜!」
「ねぎ、チーズ、梅干し……味噌汁にチョコレート? 色んなトッピングがあるんだね」
「せや! 女の子はたくさんのものから選ぶんが大好きやからな!」
メニュー表には、鉄板のものから人を選ぶものまで、大量のトッピングの選択肢が載っている。その中で、あまりは一つのものに完全に釘付けになっていた。
(わさマヨ味……!)
「決まった?」
「うん!」
***からの問いかけに、あまりは大きく頷く。
「あたしわさびマヨネーズ!」
「僕は、明太子で」
「あいよ!」
店主のアイドルは注文を受けると、丸く焼けたたこ焼きをひょいひょいと盛り付けて、ソースにおかか、さらにわさマヨと明太子をそれぞれかけて、二人の前に出した。
「はい、おまちどう!」
「ありがとう!」
二人は皿と箸を受け取ると、座るテーブルを探す。
「どこ座る?」
「あたしはどこでも……」
「じゃ、あそこにしよっか」
***が指さすと、その先に二人で向かった。
二人は向かい合わせで座ると、一緒に手を合わせた。
「「いただきます」」
声が重なって、食事が始まる。焼きたてのたこ焼きがほかほかと湯気を立てている。少しやけどしそうな熱さに、はふはふと息を漏らしながら噛めば、生地の外側がカリ、と気持ち良い食感。そこに奥からとろりとした感触が合わさり、出汁とソースの旨味が沁み渡る。
「おいしい!」
「うん! 確かにレベルが違う!」
それはあまりにとって、今までの中で一番美味しいたこ焼きだった。わさマヨの少しピリっとしたアクセントも、全体を引き締めるのにちょうどいい。
ここまで美味だと、他のトッピングも気になってしまう。
(***さん、明太子好きなのかな。あたしも結構好き……。こういう時、仲の良い子どうしだったら、『ひとつ交換しよ』とかって言うのかな……)
あまりは、理想の友達像に想いを馳せる。
「どうかした?」
「えっ!? なっ、なんでもない!」
じっと見すぎたのか、***が不思議そうにあまりを見つめてきた。
(そっ、そういえば、全然会話がはずんでない! 話題、話題……)
テンパりながら、***との出会いから必死に思い起こす。何をして、何を話していたか。
(あ……)
そこで、あまりは一つ気になる点があることに気付く。
「そういえば、***さんは今日初めてプリパラに来たって言ってたけど、どうやってあたしのこと知ってくれたの?」
「……プリパラの外でも、プリパラTVでライブを見ることはできるからね。元々、アイドルとかには興味なかったんだけど、たまたまあまりちゃんのライブを見たんだ。それで、すっごく素敵だなぁって……」
「そ、そんな……」
真っ直ぐに褒められて、あまりは赤面してしまう。
「しかも、元々アイドルに興味なかったって……」
「そんな僕でもプリパラに来てみようって思えるぐらい、あまりちゃんのライブには力があるんだよ」
***は水を一口飲むと、改めてあまりを見つめた。
「僕は、君に会うためだけにここに来たんだ」
「あたしに、会うためだけ……」
「うん」
「そ、そんな、あたしなんて……。ほ、他にも魅力的なアイドルはたくさんいるから、そういう子たちのライブ見た方がアイドルの良さは分かるんじゃ……」
「あまりちゃん……」
あまりは強く褒められた反動で自己卑下してしまう。しかし、***も引かない。
「もしかしたらそうかもしれない。所謂王道なアイドルの良さは、他の子の方が持ってるかも。でも僕にとっては、あまりちゃんが既存のアイドルの枠に囚われないライブをしてくれたから、アイドルっていうものに興味を持てたんだよ」
「***、さん……」
「それにそんなこと言ってたら、また『アイドルは「私なんて」と言ってはいけない』って、南委員長に怒られちゃうよ?」
「あれ? みれぃちゃんのこと知ってるの?」
「く、来る前に少しだけ、プリパラについて調べはしたからね」
そうして会話が弾むうちに、二人はいつの間にやら食べ終わっていた。
「「ごちそうさまでした」」
それぞれ皿と箸を返しに、返却口に向かう。裏方担当のアイドルが微笑んで受け取る中、***は自然と言った。
「おいしかったよ、ごちそうさま」
「!!」
その姿に、あまりは衝撃を受ける。
(すごい……!! ***さん、お店の人に『ごちそうさま』言えるんだ……! いつも言わなきゃって思ってるけどテンパっちゃって、今まで言えたことない……!)
一瞬のうちに、あまりの脳内に様々な思考が走る。
(い、今言わなきゃ! ***さんが先に言ってくれたから、いつもより言いやすいはず! がんばれ! あまり!)
そんな脳内格闘の末、あまりの口から言葉が放たれた。
「ごっ、ごちそうさまです!」
「はい、きれいに食べてくれてありがとう〜!」
(い、言えた……!)
店を離れながら、あまりはほっと胸を撫で下ろした。
広場に出ると、あまりと***は一度立ち止まって、顔を見合わせた。
「次はどこ行く?」
「あそうだ、案内してもらってる立場であれなんだけど、今日他のアイドルとの予定って入ってなかったの? このまま付き合わせても大丈夫?」
「予定? 何かあったっけ……?」
んー、とあまりは頭の中を探ってみる。大きな予定はなかったが、一つ気になるものはあった。
「もう少ししたら、毎日やってるWITHのライブがあるから、もしかしたらゆいちゃんが今日こそ完全復活するかも」
「そっか。じゃあ僕はこの辺で大丈夫だから、ゆいちゃんを見届けてあげて?」
そう言い残すと、***は一方的に去ろうとする。
「ま……待って!」
その背中を、あまりは呼び止めた。
「まだ全然、案内できてない! それに……」
振り返った***は、あまりが言うことを、黙って待っているようだった。
『余っている』あまりにとって、今日はたくさん初めてのことがあった。誰かを案内するのも、誰かとショッピングをするのも、誰かとふたりでご飯を食べるのも、初めての経験で、とても楽しかった。さらに***はあまりと近いところがあって、一緒にいて気が楽だった。もっと言えば、どうしても年下が多いプリパラの中で、なんとなく甘えても大丈夫な雰囲気がある***は、隣にいて落ち着く感じがした。
そんな溢れんばかりの感情を、あまりは懸命に言葉にする。
「あたし、***さんと……」
続く言葉は、既に明白だった。
(もっと一緒にいたい!)
だが言葉に込めた感情の大きさ故に、緊張し、舌はもつれ、あまりの意図とは違う言葉として出てきてしまう。
「オットセイの真似がしたい!」
「え?」
「あ……」
──やらかした。あまりの脳内を、その感情が埋め尽くす。視界がぐるぐると回り、『どうにかしなきゃ』という信号が全身に伝わる。
あまりはいつものように、走ってその場から離れようとした。
「まま、間違えた──」
「待って!」
しかし***は、素早く反応し、走り去ろうとするあまりの右腕を掴んだ。
「別のこと、言おうとしてたんじゃない?」
「な、なんで分かるの……?」
「僕も、あまりちゃんと同じタイプだから……」
***が、複雑に微笑む。
「一回、深呼吸してみよ。吸って……」
「すーっ……」
「吐いて……」
「はー……」
「どう?」
「ちょ、ちょっと緊張がほぐれた、かも」
胸に手を当てると、もっと早鐘を打っていたらしい心臓が、少し落ち着きを取り戻していることが分かった。
「ゆっくりで大丈夫だから、あまりちゃんが思ってること、教えてくれる?」
「うん……」
優しい***の声色を聞いていると、あまりの心の中に、『ちゃんと言えそう』という気持ちが芽生えてきた。
そっと唇を開いて、あまりは言葉を紡ぐ。
「あたし、***さんともっと一緒にいたい。い、嫌かな……?」
あまりは照れて、少し上目遣いで***を見る。
***もまた少し照れながら、喜色満面で返事をした。
「ううん、むしろそう言ってもらえて、すっごく嬉しいよ!」
──その時、***の頭に、獣の耳が生える。
「えっ!?」
そして腰の辺りに、ぶんぶん揺れる尻尾が出現する。
「あっ! こ、これは……!」
驚くあまりに、***も動揺して一度耳を隠そうとするが、それも何か違うと思ったのか、結局両手が宙を彷徨う。
「こ、このコーデ、というかアクセが感情が昂ると犬の耳と尻尾が生えるらしくて、だから……!」
***は顔を赤くしながら、必死に説明しようとする。その間にも、尻尾はずっと激しく振られている。あまりもなんとか言葉を返す。
「そっ、そうなんだ!」
「うう……耳と尻尾に全部出るの、思ったより恥ずかしい……」
***がそう言うと、耳は垂れ、尻尾は動きをやめた。
先程とはうってかわってしょぼくれる***に、今度はあまりがフォローする。
「かっ、かわいいし、喜んでもらえてるのが分かって嬉しいよ!」
「ほ、本当に……?」
「うん! じゃあ、一緒に行こ!」
「うん!」
そうして二人は連れ立って、他のアイドルが待つ場所へと向かった。