今はそのものを消せなくても
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三皇帝は稼働前、ゾーンに自らが使うカードを教えられている。それは石板が届いた際に滞りなくデュエルを含む活動を開始するためだ。
機皇帝のカード。それは未来の破滅の象徴。絶望を自らの力に変えて、三皇帝は歴史を変えんとする。
だが、その過程はスムーズに済んだわけではない。
最初の絶望。幼く弱く最も脆い頃。まだその時でないというのに、自らを守り、愛してくれる者を失った記憶。
機皇帝のカードを目にした瞬間、起動したてのルチアーノは、大きく姿勢を崩す。
「あ……、…………ぁ…………」
機械の体だというのに、呼吸を忘れ、血の気が引く気がしている。あの日襲ってきた無機質で冷酷な姿。自分の、目の前にあるものを壊すもの。『ぬくもり』を奪い去るもの。
自分の記憶に火が点く感覚で、ルチアーノは大きく目を見開いた。
「……っああああああああああ!!」
プラシドは何も言わなかった。動揺する姿は唾棄すべきものに見えたからだ。
ホセは何も言わなかった。その経験こそ立ち上がるために必要だと知っていたからだ。
今はそんなことはない。機皇帝の力を使って目的を果たしてやろうという気に満ち溢れている。スキエルに愛着もある。そもそも自分とアポリアは完全に等式で表されるものではない。
だが。
「う…………」
単純な機械ではなく、人間の感情を基にしているからか。回路のランダムな動きにより、一瞬、稼働したあの日のことがよぎった。玉座に座るルチアーノは、反射的に頭に手を当てた。
うんざりする。
「僕ちょっと休むから。プラシドちゃんと見といてよね」
「おい、」
文句を言うプラシドに目もくれず、ルチアーノは瞬間移動能力で部屋を替える。
着いた先には、三皇帝の玉座がある場とは違い、机や椅子、さらにはベッドと、人間が生活しても問題ない備品が揃っていた。気まぐれに拾った“ペット”のための部屋だ。
椅子に座ってくつろいでいたペット────***が、ルチアーノの方を向いた。
「ルチアーノたそ。どうかした?」
「別に。たまにはプラシドとホセの顔見ずに休みたいだけだよ」
ルチアーノは手をかざしデュエルディスクとなる装飾を移動させた。そこに向かって、白いベールを投げて脱ぎ去る。
どすん、とベッドに座る。足を広げたさまは、行儀の良いものではない。
「…………」
「…………。」
哄笑もなく黙っているルチアーノの姿を、***はつい不安で見つめてしまう。水晶体のない翠の瞳が、下を向いたまま止まっている。
そのまましばらく、***は様子を見た。ルチアーノがひとりで抱えるべきものなのか判断するためだ。だが、こんなに視線を送っているのに何も言ってこないことで、自分が介入してもいいことだと判断した。
***はそっと立ち、ベッドに向かう。ルチアーノの隣から少し奥に入り、後ろからルチアーノを抱きかかえる。普通ならこの時点で何か言われるか拒否される。そのまま少しずつ姿勢を変え、ルチアーノの体の向きはそのまま、自分はベッドのフットボードに背中を預け、ルチアーノを膝の上に乗せて抱いた。
するとようやく、ルチアーノがまばたきをした。抱き寄せる腕を払うことはせず、ほんの少しだけ、***に体重を預けた。
「……嫌だった?」
「悪くないね」
***の手が、腕が、体が熱い。自らの外から与えられる熱の感覚が新鮮で、金属の体の奥に沁み入っていくようだ。
こんなことで『安心』するなんて。と、自意識が言うが、瞬時に頭から追いやる。ただ心地良さに身を委ねる方が、いいに決まってる。
ルチアーノはしばし抱えられたまま、目を閉じた。
機皇帝のカード。それは未来の破滅の象徴。絶望を自らの力に変えて、三皇帝は歴史を変えんとする。
だが、その過程はスムーズに済んだわけではない。
最初の絶望。幼く弱く最も脆い頃。まだその時でないというのに、自らを守り、愛してくれる者を失った記憶。
機皇帝のカードを目にした瞬間、起動したてのルチアーノは、大きく姿勢を崩す。
「あ……、…………ぁ…………」
機械の体だというのに、呼吸を忘れ、血の気が引く気がしている。あの日襲ってきた無機質で冷酷な姿。自分の、目の前にあるものを壊すもの。『ぬくもり』を奪い去るもの。
自分の記憶に火が点く感覚で、ルチアーノは大きく目を見開いた。
「……っああああああああああ!!」
プラシドは何も言わなかった。動揺する姿は唾棄すべきものに見えたからだ。
ホセは何も言わなかった。その経験こそ立ち上がるために必要だと知っていたからだ。
今はそんなことはない。機皇帝の力を使って目的を果たしてやろうという気に満ち溢れている。スキエルに愛着もある。そもそも自分とアポリアは完全に等式で表されるものではない。
だが。
「う…………」
単純な機械ではなく、人間の感情を基にしているからか。回路のランダムな動きにより、一瞬、稼働したあの日のことがよぎった。玉座に座るルチアーノは、反射的に頭に手を当てた。
うんざりする。
「僕ちょっと休むから。プラシドちゃんと見といてよね」
「おい、」
文句を言うプラシドに目もくれず、ルチアーノは瞬間移動能力で部屋を替える。
着いた先には、三皇帝の玉座がある場とは違い、机や椅子、さらにはベッドと、人間が生活しても問題ない備品が揃っていた。気まぐれに拾った“ペット”のための部屋だ。
椅子に座ってくつろいでいたペット────***が、ルチアーノの方を向いた。
「ルチアーノたそ。どうかした?」
「別に。たまにはプラシドとホセの顔見ずに休みたいだけだよ」
ルチアーノは手をかざしデュエルディスクとなる装飾を移動させた。そこに向かって、白いベールを投げて脱ぎ去る。
どすん、とベッドに座る。足を広げたさまは、行儀の良いものではない。
「…………」
「…………。」
哄笑もなく黙っているルチアーノの姿を、***はつい不安で見つめてしまう。水晶体のない翠の瞳が、下を向いたまま止まっている。
そのまましばらく、***は様子を見た。ルチアーノがひとりで抱えるべきものなのか判断するためだ。だが、こんなに視線を送っているのに何も言ってこないことで、自分が介入してもいいことだと判断した。
***はそっと立ち、ベッドに向かう。ルチアーノの隣から少し奥に入り、後ろからルチアーノを抱きかかえる。普通ならこの時点で何か言われるか拒否される。そのまま少しずつ姿勢を変え、ルチアーノの体の向きはそのまま、自分はベッドのフットボードに背中を預け、ルチアーノを膝の上に乗せて抱いた。
するとようやく、ルチアーノがまばたきをした。抱き寄せる腕を払うことはせず、ほんの少しだけ、***に体重を預けた。
「……嫌だった?」
「悪くないね」
***の手が、腕が、体が熱い。自らの外から与えられる熱の感覚が新鮮で、金属の体の奥に沁み入っていくようだ。
こんなことで『安心』するなんて。と、自意識が言うが、瞬時に頭から追いやる。ただ心地良さに身を委ねる方が、いいに決まってる。
ルチアーノはしばし抱えられたまま、目を閉じた。