神ミ真ん中BD
高校の体育祭なんてかったるいだけと思ったが、小中学校と違って保護者が関わってこないのは気が楽だった。
三木は参加が決められた種目を目立たぬように適当にこなした。後は退屈すぎて昼寝に行きたいところだが、さすがにそこまでは許されないだろう。席でおとなしく、時に応援の声出しに合わせて過ごす。
眺める先で、障害物競走が行われていた。平均台の上に立つこともできず、よつんばいで進んでいる男子がいる。神在月だ。
個人競技は出ないはずなのに、あそこで何をやっているのか。
ハラハラと見守る先で、どうにか前進した神在月は次に網にかかっていた。長い手足が引っかかった上に、パニックで前後がわからなくなっている。
よく見ようと三木が思わず立ち上がると、クラスメイトたちに声をかけられる。
「三木、神在月がピンチだぞ」
「誰か助けないとマジであのままじゃね?」
三木が普段なにかとミスをしがちの神在月の面倒をみているのは、クラスではなじみの光景だ。
「…さすがにあれは俺じゃないだろ」
言ってる間にも運営の生徒が絡んだ網を広げて、神在月を通してやっていた。
三木の口元に少し力がこもる。
最後のパン食いエリアは身長の高さとダンピールの牙が効を奏して、意外なほどスムーズにクリアした。ようやくゴールして、運営席にほっとした空気が見える。
よれよれとしながら神在月がクラス席に戻ってきた。おつかれと何人かに声をかけられて、へらっと笑っている。疲れた笑顔のまま、後ろの方で一人でいる三木の隣にきて座った。
「おつかれ。…今の参加してたんだな」
「いや、なんかさっきトイレ行って戻る途中で呼び止められて連れてかれて、気付いたらスタートだった」
「…俺も連れション行っときゃよかった」
「ん、ミッキー、トイレ行く?」
神在月の反応に、三木はそういうことじゃないと言いそうなのを飲み込んで「行かない」とだけ返した。
「あの、袋は俺が少しかじっちゃったけど、パン食べない?」
先ほどのレースでそのままもらってきたパンを、神在月が差し出してくる。
「…後で飲み物あれば自分で食えるんじゃないか?」
一応聞き返してみたが、神在月は困ったように見つめてくる。
「じゃあ、もらう。サンキュ」
三木の返事に神在月は本当にほっとしたようだった。
パンを受け取って、三木は少し気力が戻った様子の神在月の姿をチェックする。くたびれた様子は多少落ち着いたが、見た目がぼろぼろだ。転んだり網にかかった時のものだろう。体操服は何カ所か汚れが目につく。髪は砂埃でぱさついていて、眼鏡が少しくすんでいる。砂で汚れたからうっかり拭けないのかもしれない。
頬にも砂がついていて、三木は手を伸ばしてぬぐう。神在月の顔が赤くなる。
「み、みき、顔が赤い」
落ち着かなげに神在月が声を上げた。と思ったら三木に向かって手を伸ばしてくる。
頬に触れられ、三木はびくりとした。
「ごめん、いたかった? 日焼けだと思う」
赤いと言うのは神在月の自己申告ではなく、三木のことだったようだ。自分の腕を見るとうっすら赤い。顔も焼けてしまっているだろう。ただ今は、それ以上に赤くなっている気がした。
「なあ、トイレ行ってくる」
三木は前にいるクラスメイトに声をかけた。おう、と返事を受けてから、神在月を振り返る。
「お前も付き合って。顔とか眼鏡洗えよ」
「う、うん、ありがと」
立ち上がって促すと、神在月ももじもじとついてくる。
喧噪を揃って抜け出す中、なんとなく視線を逸らしたままだったのは、やましさのせいだった。
三木は参加が決められた種目を目立たぬように適当にこなした。後は退屈すぎて昼寝に行きたいところだが、さすがにそこまでは許されないだろう。席でおとなしく、時に応援の声出しに合わせて過ごす。
眺める先で、障害物競走が行われていた。平均台の上に立つこともできず、よつんばいで進んでいる男子がいる。神在月だ。
個人競技は出ないはずなのに、あそこで何をやっているのか。
ハラハラと見守る先で、どうにか前進した神在月は次に網にかかっていた。長い手足が引っかかった上に、パニックで前後がわからなくなっている。
よく見ようと三木が思わず立ち上がると、クラスメイトたちに声をかけられる。
「三木、神在月がピンチだぞ」
「誰か助けないとマジであのままじゃね?」
三木が普段なにかとミスをしがちの神在月の面倒をみているのは、クラスではなじみの光景だ。
「…さすがにあれは俺じゃないだろ」
言ってる間にも運営の生徒が絡んだ網を広げて、神在月を通してやっていた。
三木の口元に少し力がこもる。
最後のパン食いエリアは身長の高さとダンピールの牙が効を奏して、意外なほどスムーズにクリアした。ようやくゴールして、運営席にほっとした空気が見える。
よれよれとしながら神在月がクラス席に戻ってきた。おつかれと何人かに声をかけられて、へらっと笑っている。疲れた笑顔のまま、後ろの方で一人でいる三木の隣にきて座った。
「おつかれ。…今の参加してたんだな」
「いや、なんかさっきトイレ行って戻る途中で呼び止められて連れてかれて、気付いたらスタートだった」
「…俺も連れション行っときゃよかった」
「ん、ミッキー、トイレ行く?」
神在月の反応に、三木はそういうことじゃないと言いそうなのを飲み込んで「行かない」とだけ返した。
「あの、袋は俺が少しかじっちゃったけど、パン食べない?」
先ほどのレースでそのままもらってきたパンを、神在月が差し出してくる。
「…後で飲み物あれば自分で食えるんじゃないか?」
一応聞き返してみたが、神在月は困ったように見つめてくる。
「じゃあ、もらう。サンキュ」
三木の返事に神在月は本当にほっとしたようだった。
パンを受け取って、三木は少し気力が戻った様子の神在月の姿をチェックする。くたびれた様子は多少落ち着いたが、見た目がぼろぼろだ。転んだり網にかかった時のものだろう。体操服は何カ所か汚れが目につく。髪は砂埃でぱさついていて、眼鏡が少しくすんでいる。砂で汚れたからうっかり拭けないのかもしれない。
頬にも砂がついていて、三木は手を伸ばしてぬぐう。神在月の顔が赤くなる。
「み、みき、顔が赤い」
落ち着かなげに神在月が声を上げた。と思ったら三木に向かって手を伸ばしてくる。
頬に触れられ、三木はびくりとした。
「ごめん、いたかった? 日焼けだと思う」
赤いと言うのは神在月の自己申告ではなく、三木のことだったようだ。自分の腕を見るとうっすら赤い。顔も焼けてしまっているだろう。ただ今は、それ以上に赤くなっている気がした。
「なあ、トイレ行ってくる」
三木は前にいるクラスメイトに声をかけた。おう、と返事を受けてから、神在月を振り返る。
「お前も付き合って。顔とか眼鏡洗えよ」
「う、うん、ありがと」
立ち上がって促すと、神在月ももじもじとついてくる。
喧噪を揃って抜け出す中、なんとなく視線を逸らしたままだったのは、やましさのせいだった。
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