調香師のノート RecipeⅠ フィガロ
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立ち寄った南の国で、私に寝床と食事を提供してくれたのはこの小さな村で診療所を営む家族だった。南の国の住人らしく温厚で優しい気遣いに満ちた魔法使いの家族。
人間の医学と、魔法の知識を駆使して、村の人々の病を怪我を治す彼らは、旅人の私にも手厚い歓迎をしてくれた。
夕食の折、旅の目的を聞かれ賢者の魔法使いたちの逸話の収集だと答えると、主人は穏やかな瞳を瞠り、暖炉横の本棚から古びた一冊のノートを私に手渡した。
先祖代々伝わる、医療ノートだという。
彼の祖先が学んだ薬草の調合や治癒魔法の方法が書き込まれ、今も受け継がれ、彼自身も後の後継者に残すために日々記録しているそうなのだが、過去のノートには治療に関することだけでなく患者のカルテのようなもの、日々の日記のようなものを書かれている、そう語りながら、主人はボロボロのノートのページに挟まれた紙切れを抜き出した。
彼らの祖先で最初に医学を志したひとの日記だという。それ以前の祖先は、畑を耕して暮らしていたらしい。そのひとが医者になり、その子供が、またその子供が引き継ぎ、そして今現在、目の前の穏やかな瞳の主人が診療所を担っている。
「彼がいなければ、この診療所が存在することも、僕が医者になることもなかったでしょう。これは、その彼が、まだ子供の頃の日記のようです。他の子供時代の日記は残っていないのですが、このページだけ彼の医療ノートに大切に畳んで挟まれていて。これは、僕の推測ですが…この日記に書かれている出来事がきっかけで、彼は医者になることを志したんじゃないかな」
黄ばんだ紙を開くと、紙魚たちが慌てて散っていくのが見える。埃と黴の匂い。インクがところどころ滲んでいる。
私は彼が注いでくれたハーブ酒を一口飲み下した。彼の妻が栽培するハーブでつくったものだという。まろやかなラベンダーの香りが喉をあためる感覚を楽しみながら、拙い文字で書かれた日記を読んだ。
─これは、その日記の中に記録されていた、かつての賢者の魔法使いの一人の在りし日の姿である。
人間の医学と、魔法の知識を駆使して、村の人々の病を怪我を治す彼らは、旅人の私にも手厚い歓迎をしてくれた。
夕食の折、旅の目的を聞かれ賢者の魔法使いたちの逸話の収集だと答えると、主人は穏やかな瞳を瞠り、暖炉横の本棚から古びた一冊のノートを私に手渡した。
先祖代々伝わる、医療ノートだという。
彼の祖先が学んだ薬草の調合や治癒魔法の方法が書き込まれ、今も受け継がれ、彼自身も後の後継者に残すために日々記録しているそうなのだが、過去のノートには治療に関することだけでなく患者のカルテのようなもの、日々の日記のようなものを書かれている、そう語りながら、主人はボロボロのノートのページに挟まれた紙切れを抜き出した。
彼らの祖先で最初に医学を志したひとの日記だという。それ以前の祖先は、畑を耕して暮らしていたらしい。そのひとが医者になり、その子供が、またその子供が引き継ぎ、そして今現在、目の前の穏やかな瞳の主人が診療所を担っている。
「彼がいなければ、この診療所が存在することも、僕が医者になることもなかったでしょう。これは、その彼が、まだ子供の頃の日記のようです。他の子供時代の日記は残っていないのですが、このページだけ彼の医療ノートに大切に畳んで挟まれていて。これは、僕の推測ですが…この日記に書かれている出来事がきっかけで、彼は医者になることを志したんじゃないかな」
黄ばんだ紙を開くと、紙魚たちが慌てて散っていくのが見える。埃と黴の匂い。インクがところどころ滲んでいる。
私は彼が注いでくれたハーブ酒を一口飲み下した。彼の妻が栽培するハーブでつくったものだという。まろやかなラベンダーの香りが喉をあためる感覚を楽しみながら、拙い文字で書かれた日記を読んだ。
─これは、その日記の中に記録されていた、かつての賢者の魔法使いの一人の在りし日の姿である。