創作企画「境界霊姫」
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贅沢三昧がしたい訳じゃない。
ただ、狭いところに閉じ込められていたくない。
貧すれば鈍するって言うじゃない。
あたしは、そうなりたくない。
それだけだよ。
◆◆◆
プリズムシティの片隅に、古びたアパートがある。
そこの一室には、黒須星鳴と両親が住んでいた。
「お父ちゃん、お母ちゃん、お弁当出来たよ」
黒須家のひとり娘が、エプロンを着けて狭い台所に立っている。
「ありがとう、星鳴」
「毎日大変でしょう? 無理しなくていいわよ」
「あたし、無理してないよ。ふたりが疲れたり、仕事してる間は家事するかんね」
両親を送り出してから、星鳴は登校した。
「おはよう、黒須さん」
「ご機嫌よう」
クラスメイトたちに優雅に挨拶を返しながら、星鳴は歩く。
「黒須さん、次のお茶会はいつ?」
「そうですわね、次のお休みの日にいたしましょうか?」
「わぁ、楽しみ」
「わたくしもですわ」
黒須星鳴は、嘘をついていた。
自分は、古くはフランス貴族に縁のある高貴な家の令嬢であると。
ノブレス・オブリージュ。
彼女が度々口にするそれは、図書館で借りた本から得た知識。
星鳴の高校生活は、嘘で塗り固められている。
学友と新作のフラペチーノを飲む時も、期間限定フレーバーのアイスクリームを食べる時も。脳内では、家計簿をつけて苦い顔をしていることがあった。
染み付いた貧乏性である。
生まれた時から貧困層で。家計は火の車で。
サンタクロースが来た覚えがなかった。
誕生日にホールケーキを食べたことがなかった。
そんな彼女が、10歳の頃から霊姫機関に所属している訳は、容易に察せるだろう。
金のためだ。
それに、かつて夢見た魔法少女になれるなら、星鳴はそれでよかった。
幼い頃、型落ちのテレビで見ていた魔法少女アニメ。魔法少女は、星鳴を照らす星灯り。生きる希望だった。
今日も、彼女は境界侵食体の脅威と戦う。
「わたくし、ノブレス・オブリージュを果たしますわ!」
それは、おまじないだった。小心者である自分を奮い立たせる魔法の呪文。
ではあるのだが。
「ぎゃーっ!? あたし、クソザコナメクジだから! 見逃してよ~!」
本日の相方が気を失い、星鳴こと、エトワールが孤独に戦う羽目になり、ついお嬢様が解けてしまう。
「仕方ないな! あたしは、星を纏う者! 食らえ! メテオール!」
魔法で流星を降らせて、辛勝した。
「や、やった…………」
へなっと膝から崩れ落ち、星鳴は涙を堪える。
「はぁ。帰 ぇるか」
相方を起こして、機関の医務室へ向かった。
その後。
「ただいま」
誰もいない家に帰り、星鳴は、安売りしていた食材で3人分の料理を作った。
「いただきます」
ひとりで晩ごはんを済ませて、星鳴は自室に行く。
狭いながらも、その部屋は、ゆめかわグッズで飾られている。
紫色とピンク色に囲まれ、黒須星鳴は、ほっと一息ついた。
お腹が満たされれば、良い夢を見ることが出来る。
ただ、狭いところに閉じ込められていたくない。
貧すれば鈍するって言うじゃない。
あたしは、そうなりたくない。
それだけだよ。
◆◆◆
プリズムシティの片隅に、古びたアパートがある。
そこの一室には、黒須星鳴と両親が住んでいた。
「お父ちゃん、お母ちゃん、お弁当出来たよ」
黒須家のひとり娘が、エプロンを着けて狭い台所に立っている。
「ありがとう、星鳴」
「毎日大変でしょう? 無理しなくていいわよ」
「あたし、無理してないよ。ふたりが疲れたり、仕事してる間は家事するかんね」
両親を送り出してから、星鳴は登校した。
「おはよう、黒須さん」
「ご機嫌よう」
クラスメイトたちに優雅に挨拶を返しながら、星鳴は歩く。
「黒須さん、次のお茶会はいつ?」
「そうですわね、次のお休みの日にいたしましょうか?」
「わぁ、楽しみ」
「わたくしもですわ」
黒須星鳴は、嘘をついていた。
自分は、古くはフランス貴族に縁のある高貴な家の令嬢であると。
ノブレス・オブリージュ。
彼女が度々口にするそれは、図書館で借りた本から得た知識。
星鳴の高校生活は、嘘で塗り固められている。
学友と新作のフラペチーノを飲む時も、期間限定フレーバーのアイスクリームを食べる時も。脳内では、家計簿をつけて苦い顔をしていることがあった。
染み付いた貧乏性である。
生まれた時から貧困層で。家計は火の車で。
サンタクロースが来た覚えがなかった。
誕生日にホールケーキを食べたことがなかった。
そんな彼女が、10歳の頃から霊姫機関に所属している訳は、容易に察せるだろう。
金のためだ。
それに、かつて夢見た魔法少女になれるなら、星鳴はそれでよかった。
幼い頃、型落ちのテレビで見ていた魔法少女アニメ。魔法少女は、星鳴を照らす星灯り。生きる希望だった。
今日も、彼女は境界侵食体の脅威と戦う。
「わたくし、ノブレス・オブリージュを果たしますわ!」
それは、おまじないだった。小心者である自分を奮い立たせる魔法の呪文。
ではあるのだが。
「ぎゃーっ!? あたし、クソザコナメクジだから! 見逃してよ~!」
本日の相方が気を失い、星鳴こと、エトワールが孤独に戦う羽目になり、ついお嬢様が解けてしまう。
「仕方ないな! あたしは、星を纏う者! 食らえ! メテオール!」
魔法で流星を降らせて、辛勝した。
「や、やった…………」
へなっと膝から崩れ落ち、星鳴は涙を堪える。
「はぁ。
相方を起こして、機関の医務室へ向かった。
その後。
「ただいま」
誰もいない家に帰り、星鳴は、安売りしていた食材で3人分の料理を作った。
「いただきます」
ひとりで晩ごはんを済ませて、星鳴は自室に行く。
狭いながらも、その部屋は、ゆめかわグッズで飾られている。
紫色とピンク色に囲まれ、黒須星鳴は、ほっと一息ついた。
お腹が満たされれば、良い夢を見ることが出来る。
