短編⑥
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会社で出会ったマルコと結婚してはや数年。
真面目で優しいマルコに、不満はない。
全くないと言えばウソになるけど、
まあ大人の結婚だしこんなもの。
ただ最近残業が増えたかな、ってくらいだったんだけど。
「お宅の旦那さんが駅前で女性と歩いてるところ見たのよぉ」
とお隣のおばさんに聞くまでは。
しかも時間は夜。
1度や2度じゃないらしい。
仲良さそうに並んで歩いていたとの情報。
「まさかオタクの旦那さんに限ってねえ、とは思ったんだけど」
一応、ね?
と苦笑を浮かべながら忠告してくれたお隣さんに笑って回覧板を受け取り、
「有難う御座います。いざって時は証人としてよろしくお願いしますね」
とドアを閉めた。
・・・・マルコが浮気?
まあマルコも男。
したい気持ちはいくらでもあるだろうけど。
この情報を鵜吞みにするかどうかは迷うけど、
隣のおばちゃんがこの嘘を私についたところでメリットはないと思うし。
真実だとして、
女性と歩いていたイコールが浮気になるとは限らない。
さてこれをマルコに問い詰めるか否か。
それが問題。
っていう時に限って早く帰って来たマルコ。
「帰ったよい」
「・・・・おかえり」
私は割とすべてのことに鈍感だけど、
マルコは私と正反対で、結構気が付く。
なので、
「何かあったかい?」
・・・今回も気づかれてしまった。
「・・・なかった、と言えばウソになるけど」
「俺には言えねェ、と」
「マルコにもあるでしょ?」
私に言えないことが。
と、暗に問い詰めてみた。
マルコは怪訝な顔で首を傾げた。
「心当たりはないよい。言いたいことがあるならはっきり言ってくれねェか」
「・・・別に。最近残業が多いから少し寂しいだけ」
本当のことを聞く勇気はまだなかった。
鋭いマルコがこれで胡麻化されてくれるとは思ってないけど、
「確かに残業が多かったからねい、寂しい思いをさせちまって悪かったよい」
マルコは優しいから。
誤魔化されてくれた。
「・・・・仕事だから仕方ないのはわかってるんだけどね」
「いや、アコには寂しい思いをさせちまったよい」
「仕事、忙しいんでしょ」
「もう少ししたら落ち着く。・・・と思う」
「そっか」
「今度の休みには何処か行くかい?」
「マルコ疲れてるでしょ。身体休ませて」
と言いつつ、
家でマルコがスマホをいじるところを見たいという算段なのだけど。
「そうかい?悪いねい」
マルコは私の思惑を知ってか知らずか、
笑顔で頷いた。
もし浮気してたとして、マルコがそう簡単に襤褸を出すとは思えないけど。
でもチャンスではある。
・・・・・と思ってた休日。
「起きたかい?おはよう」
「・・・・おはよ。ごめん寝坊した」
絶対に何か暴いてやると意気込んでベッドに入ったら眠れなくて、
気が付いたら朝で、
しかもマルコは恐らくとっくに起きていて、
「朝飯出来てるよい」
「え!?嘘!?ごめっ」
キッチンから美味しそうな音と匂いが漂って来てて。
「ご飯も炊きたてだよい」
珍しい。
マルコが朝ごはんを作ってくれるなんて。
しかもマルコいつもはパン派なのに!!
「・・・・あり、がと」
2人揃って頂きますをして、
ぱくり。
「・・・・おいっしい」
カリカリベーコン。
「後片付けも俺がやるからアコは休んでていいよい」
「作ってくれたんだから片付けくらい私にやらせて」
「いつもやってくれてんだ、気にすんない」
・・・・これはどういうこと?
浮気の罪悪感から?
それとも本当に日々の感謝から?
あーダメだ、もし本当に後者だったとしたら私これからマルコに足向けて寝られないわ。
「珍しいね、マルコが作ってくれるなんて」
「最近残業続きで寂しい思いをさせちまったからよい」
「ホント。浮気かと思っちゃった」
素直にそう告げればマルコが目を丸くして、
大爆笑し始めた。
「はははっ、素直だねい」
「だって怪しいじゃない。女の人と居たって目撃情報もあったし」
「へえ?」
「突然ご飯作りだすし」
「それで浮気じゃないと確信した理由は?」
「マルコはバカじゃないのよ」
「そりゃ光栄だねい」
そう、マルコは頭が良い。
だから、
「浮気したら慰謝料取られるのはわかってるんだから」
目撃されそうな場所で女と会うハズがない。
駅前なんて知り合いに見られるのはわかってるはず。
「魔が差した、ってこともあるだろい」
「絶対ないとは言わないけど、魔が差したとして罪悪感を抱かない人じゃないわ」
「罪悪感から飯を作ったかもしれねェだろい?」
「罪悪感で作ったご飯がこんなに美味しい訳ない」
言い切った私の唇に突然マルコの唇が重なった。
「アコのそういうところ好きだよい」
「簡単に騙されそうなとこ?」
「騙されねェとこだよい」
もう1度優しい口づけを交わしたら、
「それでその女の人って何?」
これだけはやっぱり問い詰めてみる。
「師匠だよい」
「師匠・・・・?」
何の?
「いつもアコに任せっきりじゃ悪いだろい?」
だから俺も休みの日くらいはしようと思ってねい。
と笑うマルコに涙が溢れた。
「・・・・好き・・・・!」
「惚れ直したかい?」
「しました!!」
でも今度からちゃんと相談してね。
と添えて、
さあ素晴らしい1日の始まり。
