第二章
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エンジンシティ
ここのジムスタジアムは毎年行われるガラルの祭典の開会式に使われている
今年も例年通り開会式が行われ町は普段よりも人が多く期待の声で賑わっていた
「(さ〜て、そろそろ戻らねぇとな)」
式の時間まで町をぶらついていたキバナは買ったばかりのコーヒー片手にのんびりとジムへと戻ろうとしていた
「(今年はどんなルーキーがいっかな、去年はオレさまの元に辿り着いた奴さえいなかったから拍子抜けだったんだよぁ)」
強い相手と戦ってこそ楽しい
ダンデに負けず劣らずキバナもバトルを愛しており勝利に飢えている
チャンピオンと戦うのは勿論だが、新しいライバルが欲しいところだ
「(とりあえずメロンさん対策も考えねぇとな…)」
ぼんやりと考え事をしながら歩いていると角を曲った途端見えた影に反応するのが遅れ、彼のコーヒーを持つ手が相手にぶつかってしまった
『わあっ!』
「うおっ!わりぃっ!大丈夫かっ!」
慌てて距離を取るが既に遅い
ぶつかった事によりコーヒーは彼女の白いパーカーに少しかかってしまい黒いシミになった
『大丈夫ですっ、こちらこそすみません!あの貴方は大丈夫でしたか?』
「いやいやオレは平気だけどよ!お嬢さんこそ熱くなかった?火傷とかしてねぇ?」
『少しだったから平気です(ダンデさんの事考えてたらぼーとしちゃってた)』
ぼんやりとしていたのは彼女も同じだ
数日前にダンデと想いが通じ合ったせいか旅に出てからエンジンシティに着くまでずっと思い出してしまっていた
あの日のキスは触れるだけの可愛らしいものだったが、とても甘く心を満たしてくれた
もっと先を望みそうになったがお互いに未経験という事もありぎこち無い雰囲気を感じ
結局ダンデが我慢する形でその日は別れ、慌ただしい日々が二人とも続き会えていない
『(開会式ならあの日以来久しぶりに会えるかもって気になって…不注意になってたのかも)』
自分も悪いのだと考えたナマエは、キバナには平気と言うが胸元にかかってしまったコーヒーはぬるくはないだろう
女性の服を汚し気を使われたキバナは男として黙って別れる事が出来ず焦りながら辺りを見回した
「そのままじゃ…あ!ちょっと付き合え!」
『え?あのっ!』
腕を掴み大股で歩く彼は目に止まった服屋へと駆け込み突然現れたドラゴンストームに店員が驚き目を丸くさせる
「キバナさま?いらっしゃいませ今日はどのような服をお探しで」
「この子に合うサイズの服見せてくれ」
「承知しました、こちらへどうぞ」
店員とキバナの会話に頭がついていかないナマエはおろおろと何かを言いたそうに眉を下げるが、キバナはすぐに用意された服を物色し始めその声は聞こえない
「ん〜色白いからな…こっちの方が似合うかもな」
候補を手に持つ彼はやっとナマエを見るといそいそと試着室へと連れ出し中へと押し込んだ
『え?待ってください!』
「いいから、それに着替えてみろよ」
服を無理矢理押し付けられたと思えば試着室のカーテンを勢いよく閉められた
困りながら自分のパーカーの汚れ具合を鏡で確認してみる、確かにこのまま歩くには恥ずかしいものがあるが今日初めてあった男性に服を準備されるとは思わなかった
『(そうだ!着換えたらあたしがお金を先に払えばいいんだ!)』
自分で買うなら問題ない
名案だと思い渡された服を着替えてみると、薄いピンク色のパーカーは彼女の肌や髪色とよく似合っていた
『(………可愛い)』
袖はふんわりと膨らみわざと大きめに見えるデザイン、今履いていた短パンとの相性もよく気に入った
『(あ…ちょっとヒリヒリすると思ったら赤くなってる)』
首元を引っ張り中を覗き込むと胸元がほんのり赤くなり軽い火傷をしていたようだ
『(ん〜でも…このくらいの火傷なら我慢できるか)』
鏡へと視線を戻し横から見た姿や後ろ姿を確認していると
「着替えた?」
カーテンの向こうから声をかけられ鏡からカーテンへと体の向きを変えるとナマエは作戦通り料金を早く払ってしまおうと身構えカーテンを開けた
「お!似合うじゃん」
カーテンを開けばそこには腕組みをしたキバナと店員の女性が待っていた
彼は自分の見立てが間違いなかった事に機嫌を良くしふにゃりとヌメラのように微笑む
元々整った顔をした男性だが笑った顔は何処か親しみを感じナマエは見惚れそうになる自分に気がつくと慌てて声をあげた
『あっありがとうございます!あの店員さん!この服のお金なんですが、いくらですか?』
「そちらの商品は既にキバナさまがお支払いなさいました」
『えっ!そんなっあの!あたし払います!』
「あ〜いいのいいの、オレさまが自己満足の為にやってるだけだからさ」
着替えている隙に会計をすませていたようだ
女性の扱いに長けている彼らしいスマートな行動は、普段男性に慣れていない彼女には落ち着かないものがある
なんとか払おうと策を考えているとキバナは試着室に脱いであった汚れた服に手を伸ばし
「これクリーニング出しとくわ」
『っ!いえっ本当に大丈夫ですからっ』
「急ぎでよろしく、後さっきオレが見たやつも包んどいて」
「畏まりました」
何から何まで先に手を打たれナマエは上手く動けず頭の中がぐるぐると混乱していく
『(何かっ、何かっしないと!)…っ、あの!』
思ったより大きな声が出てしまうが今は仕方ない、ナマエはこれ以上彼が何かしないようにとキバナの服を掴み
『コーヒー!奢ります!あたしの服が貴方のコーヒー飲んじゃったからっ』
咄嗟に出た提案だったが若干変な事も口走ってしまった
まだ頭が混乱しているのだろう
必死に声をあげた彼女にキバナは口元を片手で隠すと吹き出して笑った
「ふはっ!飲んじゃったって、っ、ハハッ!なんだそりゃ、フフッ、くっ、…はぁ……あ〜確かに飲んじゃったわな?」
喉奥でククッとまだ笑う彼に彼女は今更恥ずかしくなり顔を真っ赤にさせ掴んだ服から手を離そうとするが、その手を褐色の大きな手が掴んだ
「いいぜ、じゃあお茶を御馳走になるかな?」
その後は近場の喫茶店によりテイクアウトでコーヒーを二つ買い服屋へと戻る道すがら会話を楽しんだ
プレゼントされた数枚分の洋服にクリーニング代、それらと比べると釣り合わないがキバナがコーヒー以外受け取る気はないと先に言い放ち今に至る
「え?お嬢さんチャレンジャーなの?」
『はい、ポケモンを持ったのも最近なんですが…昔から憧れてたので』
苦笑いして見せる彼女を見下ろしキバナは改めて彼女を観察した
「(小せぇけど…年いくつだ?最近トレーナーデビューしたならオレさまには辿り着く可能性は低いな)」
ついトレーナーとして相手を見てしまう自分に嘲笑いしてしまう
観察をやめようかとすると、ふと彼女の顔が赤い事に気がついた
「ちょいストップ」
『どうしました?』
足を止めさせるとキバナはじっと彼女を見つめる、青い瞳は海のように美しく見つめられるとどうしたらいいのかと緊張しぎこちなく唇を結ぶ
「…………オマエさ」
同時に伸びてきた大きな手のひら
何をされるのかと身構え首をすくめると彼の手はナマエの額に優しく触れた
『ん?』
「やっぱりな…熱あんぞ?だからコーヒーぶっかけられても熱さに鈍かったんじゃね?」
呆れながら言う彼は直ぐ様手を離すとスマホロトムを呼び寄せ何処かへと電話しようとしていた
『何処に電話するんですか?』
「あ?受付スタッフ、こんなんじゃ開会式出れねぇだろ?一人欠席するって連絡いれんだよ」
『いやです!開会式は出たいんです!これくらい平気ですから言わないでっ!』
咄嗟に彼のスマホを操作する手を掴み懇願するとキバナは片眉を吊り上げじっと彼女を見つめ返した
「本当に出んのか?ぶっ倒れたらシャレになんねぇぞ?」
『大丈夫です!終わるまで倒れませんから!』
何処からの自信なのか、鼻息荒く断言する彼女にそういう問題じゃないだろうと頭の中で突っ込みを入れつつキバナは肩を上下に揺らし大袈裟にため息をしてみせた
「ったく、お嬢さんは真面目っつーか…頑固だな」
『ぅっ、…そうですかね?』
手を離しコーヒーの紙コップを両手で持ち直した彼女は居心地悪そうに視線を彷徨わせてしまう
「ガラルでは珍しいタイプだな?さっきもだけど服の金払おうと必死になったりする女の子なんてオレ初めてだわ」
『そうなんですか?ちょっとあたしには分かりません』
キバナが知る女性といえば
物を買ってやれば喜んで受け取り、体が弱れば自分に擦り寄り甘えてくる者が殆どだった
勿論違うタイプもいるが、付き合えば皆同じようになり結果的にキバナに依存してくる
自分は金もルックスもあるから仕方ないと思っていたが……彼女は何処か違うようだ
「…………そういえばお嬢さんの名前聞いてないよな?」
『あ、すみません!あたしはナマエといいます!』
「ナマエちゃんね?覚えたぜ!」
ニッコリと微笑んだ彼は操作しかけたスマホをポケットへとしまいこみ、代わりに自分の小指を彼女へと向ける
『なんですか?』
「黙っててやるからオレさまと約束してくんない?助けが欲しくなったら遠慮なくキバナに言うって」
背中を丸め視線を合わせようとしてくれる彼にナマエは緊張した顔から漸く表情を柔らかくさせ心から微笑んだ
『ふふっ…分かりました、約束します!』
「ん、素直でよろしい」
グローブをつけていない方の手で小指を絡ませ合うと数回上下に揺らし約束を交わす
「(…ナマエちゃんにはオレさまの悪い癖出ないといいけどな)」
何気ない約束だが、キバナはこの約束をその後一生忘れられなくなる事になる
ここのジムスタジアムは毎年行われるガラルの祭典の開会式に使われている
今年も例年通り開会式が行われ町は普段よりも人が多く期待の声で賑わっていた
「(さ〜て、そろそろ戻らねぇとな)」
式の時間まで町をぶらついていたキバナは買ったばかりのコーヒー片手にのんびりとジムへと戻ろうとしていた
「(今年はどんなルーキーがいっかな、去年はオレさまの元に辿り着いた奴さえいなかったから拍子抜けだったんだよぁ)」
強い相手と戦ってこそ楽しい
ダンデに負けず劣らずキバナもバトルを愛しており勝利に飢えている
チャンピオンと戦うのは勿論だが、新しいライバルが欲しいところだ
「(とりあえずメロンさん対策も考えねぇとな…)」
ぼんやりと考え事をしながら歩いていると角を曲った途端見えた影に反応するのが遅れ、彼のコーヒーを持つ手が相手にぶつかってしまった
『わあっ!』
「うおっ!わりぃっ!大丈夫かっ!」
慌てて距離を取るが既に遅い
ぶつかった事によりコーヒーは彼女の白いパーカーに少しかかってしまい黒いシミになった
『大丈夫ですっ、こちらこそすみません!あの貴方は大丈夫でしたか?』
「いやいやオレは平気だけどよ!お嬢さんこそ熱くなかった?火傷とかしてねぇ?」
『少しだったから平気です(ダンデさんの事考えてたらぼーとしちゃってた)』
ぼんやりとしていたのは彼女も同じだ
数日前にダンデと想いが通じ合ったせいか旅に出てからエンジンシティに着くまでずっと思い出してしまっていた
あの日のキスは触れるだけの可愛らしいものだったが、とても甘く心を満たしてくれた
もっと先を望みそうになったがお互いに未経験という事もありぎこち無い雰囲気を感じ
結局ダンデが我慢する形でその日は別れ、慌ただしい日々が二人とも続き会えていない
『(開会式ならあの日以来久しぶりに会えるかもって気になって…不注意になってたのかも)』
自分も悪いのだと考えたナマエは、キバナには平気と言うが胸元にかかってしまったコーヒーはぬるくはないだろう
女性の服を汚し気を使われたキバナは男として黙って別れる事が出来ず焦りながら辺りを見回した
「そのままじゃ…あ!ちょっと付き合え!」
『え?あのっ!』
腕を掴み大股で歩く彼は目に止まった服屋へと駆け込み突然現れたドラゴンストームに店員が驚き目を丸くさせる
「キバナさま?いらっしゃいませ今日はどのような服をお探しで」
「この子に合うサイズの服見せてくれ」
「承知しました、こちらへどうぞ」
店員とキバナの会話に頭がついていかないナマエはおろおろと何かを言いたそうに眉を下げるが、キバナはすぐに用意された服を物色し始めその声は聞こえない
「ん〜色白いからな…こっちの方が似合うかもな」
候補を手に持つ彼はやっとナマエを見るといそいそと試着室へと連れ出し中へと押し込んだ
『え?待ってください!』
「いいから、それに着替えてみろよ」
服を無理矢理押し付けられたと思えば試着室のカーテンを勢いよく閉められた
困りながら自分のパーカーの汚れ具合を鏡で確認してみる、確かにこのまま歩くには恥ずかしいものがあるが今日初めてあった男性に服を準備されるとは思わなかった
『(そうだ!着換えたらあたしがお金を先に払えばいいんだ!)』
自分で買うなら問題ない
名案だと思い渡された服を着替えてみると、薄いピンク色のパーカーは彼女の肌や髪色とよく似合っていた
『(………可愛い)』
袖はふんわりと膨らみわざと大きめに見えるデザイン、今履いていた短パンとの相性もよく気に入った
『(あ…ちょっとヒリヒリすると思ったら赤くなってる)』
首元を引っ張り中を覗き込むと胸元がほんのり赤くなり軽い火傷をしていたようだ
『(ん〜でも…このくらいの火傷なら我慢できるか)』
鏡へと視線を戻し横から見た姿や後ろ姿を確認していると
「着替えた?」
カーテンの向こうから声をかけられ鏡からカーテンへと体の向きを変えるとナマエは作戦通り料金を早く払ってしまおうと身構えカーテンを開けた
「お!似合うじゃん」
カーテンを開けばそこには腕組みをしたキバナと店員の女性が待っていた
彼は自分の見立てが間違いなかった事に機嫌を良くしふにゃりとヌメラのように微笑む
元々整った顔をした男性だが笑った顔は何処か親しみを感じナマエは見惚れそうになる自分に気がつくと慌てて声をあげた
『あっありがとうございます!あの店員さん!この服のお金なんですが、いくらですか?』
「そちらの商品は既にキバナさまがお支払いなさいました」
『えっ!そんなっあの!あたし払います!』
「あ〜いいのいいの、オレさまが自己満足の為にやってるだけだからさ」
着替えている隙に会計をすませていたようだ
女性の扱いに長けている彼らしいスマートな行動は、普段男性に慣れていない彼女には落ち着かないものがある
なんとか払おうと策を考えているとキバナは試着室に脱いであった汚れた服に手を伸ばし
「これクリーニング出しとくわ」
『っ!いえっ本当に大丈夫ですからっ』
「急ぎでよろしく、後さっきオレが見たやつも包んどいて」
「畏まりました」
何から何まで先に手を打たれナマエは上手く動けず頭の中がぐるぐると混乱していく
『(何かっ、何かっしないと!)…っ、あの!』
思ったより大きな声が出てしまうが今は仕方ない、ナマエはこれ以上彼が何かしないようにとキバナの服を掴み
『コーヒー!奢ります!あたしの服が貴方のコーヒー飲んじゃったからっ』
咄嗟に出た提案だったが若干変な事も口走ってしまった
まだ頭が混乱しているのだろう
必死に声をあげた彼女にキバナは口元を片手で隠すと吹き出して笑った
「ふはっ!飲んじゃったって、っ、ハハッ!なんだそりゃ、フフッ、くっ、…はぁ……あ〜確かに飲んじゃったわな?」
喉奥でククッとまだ笑う彼に彼女は今更恥ずかしくなり顔を真っ赤にさせ掴んだ服から手を離そうとするが、その手を褐色の大きな手が掴んだ
「いいぜ、じゃあお茶を御馳走になるかな?」
その後は近場の喫茶店によりテイクアウトでコーヒーを二つ買い服屋へと戻る道すがら会話を楽しんだ
プレゼントされた数枚分の洋服にクリーニング代、それらと比べると釣り合わないがキバナがコーヒー以外受け取る気はないと先に言い放ち今に至る
「え?お嬢さんチャレンジャーなの?」
『はい、ポケモンを持ったのも最近なんですが…昔から憧れてたので』
苦笑いして見せる彼女を見下ろしキバナは改めて彼女を観察した
「(小せぇけど…年いくつだ?最近トレーナーデビューしたならオレさまには辿り着く可能性は低いな)」
ついトレーナーとして相手を見てしまう自分に嘲笑いしてしまう
観察をやめようかとすると、ふと彼女の顔が赤い事に気がついた
「ちょいストップ」
『どうしました?』
足を止めさせるとキバナはじっと彼女を見つめる、青い瞳は海のように美しく見つめられるとどうしたらいいのかと緊張しぎこちなく唇を結ぶ
「…………オマエさ」
同時に伸びてきた大きな手のひら
何をされるのかと身構え首をすくめると彼の手はナマエの額に優しく触れた
『ん?』
「やっぱりな…熱あんぞ?だからコーヒーぶっかけられても熱さに鈍かったんじゃね?」
呆れながら言う彼は直ぐ様手を離すとスマホロトムを呼び寄せ何処かへと電話しようとしていた
『何処に電話するんですか?』
「あ?受付スタッフ、こんなんじゃ開会式出れねぇだろ?一人欠席するって連絡いれんだよ」
『いやです!開会式は出たいんです!これくらい平気ですから言わないでっ!』
咄嗟に彼のスマホを操作する手を掴み懇願するとキバナは片眉を吊り上げじっと彼女を見つめ返した
「本当に出んのか?ぶっ倒れたらシャレになんねぇぞ?」
『大丈夫です!終わるまで倒れませんから!』
何処からの自信なのか、鼻息荒く断言する彼女にそういう問題じゃないだろうと頭の中で突っ込みを入れつつキバナは肩を上下に揺らし大袈裟にため息をしてみせた
「ったく、お嬢さんは真面目っつーか…頑固だな」
『ぅっ、…そうですかね?』
手を離しコーヒーの紙コップを両手で持ち直した彼女は居心地悪そうに視線を彷徨わせてしまう
「ガラルでは珍しいタイプだな?さっきもだけど服の金払おうと必死になったりする女の子なんてオレ初めてだわ」
『そうなんですか?ちょっとあたしには分かりません』
キバナが知る女性といえば
物を買ってやれば喜んで受け取り、体が弱れば自分に擦り寄り甘えてくる者が殆どだった
勿論違うタイプもいるが、付き合えば皆同じようになり結果的にキバナに依存してくる
自分は金もルックスもあるから仕方ないと思っていたが……彼女は何処か違うようだ
「…………そういえばお嬢さんの名前聞いてないよな?」
『あ、すみません!あたしはナマエといいます!』
「ナマエちゃんね?覚えたぜ!」
ニッコリと微笑んだ彼は操作しかけたスマホをポケットへとしまいこみ、代わりに自分の小指を彼女へと向ける
『なんですか?』
「黙っててやるからオレさまと約束してくんない?助けが欲しくなったら遠慮なくキバナに言うって」
背中を丸め視線を合わせようとしてくれる彼にナマエは緊張した顔から漸く表情を柔らかくさせ心から微笑んだ
『ふふっ…分かりました、約束します!』
「ん、素直でよろしい」
グローブをつけていない方の手で小指を絡ませ合うと数回上下に揺らし約束を交わす
「(…ナマエちゃんにはオレさまの悪い癖出ないといいけどな)」
何気ない約束だが、キバナはこの約束をその後一生忘れられなくなる事になる