-
ウタカタ
(病室を探索していると、重い足跡が近付いてくる、恐る恐る振り返ると──そこにいたのは全身血塗れの“鬼”だった)
-
ウタカタ
……“かくれんぼ”は終わり、って事かな？
(もはや隠れる場所も逃げる場所もありはしない。彼は覚悟を決めるとその剛腕の化け物に立ち向かった──) -
ウタカタ
泡沫夢幻……果たして、僕はどこまで飛べるかな (淡い色の玉が弾けて消えるのを見届けて、しかし感傷に浸る事無く歩き出し)
-
ウタカタ
なんだか、貴方とは縁があるみたいですね。尽く出会っては繰り返し (そう語る彼の額にもまた『三ツ目』が開き、男の動きを捉えている) ですが──
-
ウタカタ
その悪縁は、今日限りで断ち切らせてもらう。
-
ウタカタ
(一瞬の隙を縫って大きく踏み込み、『鬼腕』の一撃を叩き込む。力を得た彼にはもはや男の力は脅威にもならず)
-
ウタカタ
ふう……これではまるで、本物の化け物だな、僕も…… (赤く変色し血管の浮かび上がる両腕を見て、一つ溜息を吐く)
-
ウタカタ
そういえば最初の頃にも、こんな事があったな…… (しみじみと呟きながら、襲い来る相手をものともせず跳ね飛ばす。強い力で叩きつけられた相手はやがて、動かなくなった)
-
ウタカタ
……色々と、変わってしまった。
それが良いことなのか悪いことなのか、僕には分からないけれど。 -
ウタカタ
(──気付けば、物騒な道具を持った住民達に包囲されている) えっと……僕に何か、用ですか (じり、と後退る、しかし逃げ場は何処にも無い)
-
ウタカタ
あの、用が無ければ、僕はこれで── (素知らぬ顔で会釈して切り抜けようとした彼の腹を、ざくり、鋭い何かが貫く)
-
ウタカタ
(それを皮切りに包囲していた住民たち皆が次から次へと彼を突き刺し──瞬く間に串刺しとなった)
-
ウタカタ
……気のせい、かな (辺りを見回すが、やはり自分しかいない事を確認し)
-
ウタカタ
は……？ ま、待ってくれ、なんでまた、 (然しもの彼も動揺した、その光景はつい先日見たばかりだ) なあ、話せば分かるよ、だから──
-
ウタカタ
(慌てて弁解しようとした彼の胸を凶器が貫く、続く言葉は掻き消えて鮮烈な赤色だけが溢れ出た)
-
ウタカタ
っ、これ、は…… (両腕に力を込めると、鎖はいとも簡単に引きちぎられて) うん、外せる、大丈夫……
-
ウタカタ
……今回は、“かくれんぼ”はさせてくれないんですね (目覚めて間もなく現れた襲撃者に、表情は変えぬまま皮肉めいた言葉を投げかけ) まあ、どうせ話なんて聞いてくれないんだろうけど……
-
ウタカタ
でもお生憎さま、僕もあなたと同じ“腕”を持ってるんです。だから――ただでやられるつもりは、ありませんので
-
ウタカタ
……いたた。全く、なんでこんな事に (今まで様々な“起床”を経験してきたが今日はまた一段と風変わりだな、と思い)
-
ウタカタ
……はい、綺麗ですね (──その言葉に色は無い、ただ相槌を返す為の“音”でしかない、男の様子を気にも留めず彼は無表情で佇んでいる)
-
ウタカタ
(男が彼に襲いかかろうとしたその次の瞬間、ごきり、と鈍い音が響いて。男の首はあらぬ方向へねじ曲げられていた)
-
ウタカタ
すみません、悪気はないんですが、まあ殺されたくないもので (動かなくなった男の身体を捨てながら淡々と告げる、彼は何事も無かったかのようにその場を後にした)
タップで続きを読む
