……うさぎ、 (可愛い、と思う気持ちを押し止めながら話を聞く) もちろん、助けてやりたいのは山々、だが……恐らく、俺では (苦虫を噛み潰すような顔で絞り出す、あまりにも力不足だと──)

すまない、……本当に、すまない (どうか次会う者は力ある者であるように、そう祈って別れを告げた)

──はっ!? (街角を歩いた先、訳も分からぬまま有刺鉄線に巻かれて、身に突き刺さる棘のせいで暴れる事もできず) っま、待て待てまて!! 俺をよく見ろ！ ほら、『怪物』じゃないだろ!!?

(慌てて弁解をする、自警団達は顔を見合わせるが確かに彼は『まだ人間』だ) なんだよ……この町こんなのばっかりなのか？ (やれやれ、と溜息を零した)

(怪物の吐息を真正面から受け、身震いする) いや……弱い……見ての通り、何の「力」も持たないんだ…… (息を呑む。怪物は彼が無力である事を知ると、興味が失せたように立ち去って行った)

……誰だ、お前は── (言い終わるか否か、男が喉元に喰らい付いてきた。鋭い牙で肉を抉られ、おびただしい量の血が噴き出してくる) いﾞッ……テメェ!! はなっ、離せ!!

が、ぁっ── (抵抗しようにも男の力は存外に強く振り解けない、そして──何かの折れる音と共に、彼の意識は途絶えた)

……これ、は (暫し、瞬いて状況を探る。消毒薬と鉄錆の臭いが辺りに漂っている) 病院、なのか？ それにしてはあまりにも……異様だな (拘束服の中でもがくが今の力では壊せそうにもない。これから来るであろう事態を想像して苦笑した)

…………、 (病室の扉が開き、現れたモノを見た。強烈な血の臭いに顔を歪ませる) ──そうか。そういうことか。なら、さっさとやるといい (血肉に塗れた腕を振り上げる鬼を見て、皮肉げな笑みを浮かべ、ゆっくりと目を閉じた)

……墓場 (ぽつりと呟く、誰の物とも分からぬ墓に囲まれている事に気付くと忌々しそうに顔を歪め) クソが……！ 死人は大人しく寝ていろ!! (持っていた桶を投げ捨てた。澱んだ水が零れ散った)

橋か……それは重要な情報かもしれない (と、徐ろにメモを取り出してペンを走らせた) こんな世界の事だ、いつ記憶を失くすとも分からない。取り敢えず書き留めておこう……

──君は、自分が何者だったか、まだ覚えているんだな (目の前の“少年”は頷く。そして「君が望むならこの力を分けてあげる」と答える) ああ……うん。恐らく今の俺には“力”が足りない。だから、分けてもらおうか──

──ッ (ガチャガチャ、と拘束具を鳴らす。しかし容易には破壊できそうにない) おい……これ……どうするつもりだ？ (手術台の上で思わず笑みを零す、それは恐怖からか、それとも)

…………、 (もはや言う事は無い、と判断したのか、彼は一度息を呑むと目を閉じて身体の力を抜いた。直後、強烈な痛みが襲い来るが声を上げる事も叶わず息絶えた)