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ころ、す (精々絞り出したのはその一言、もはや呪詛を並べ立てる気にもならずただ宙に吊られて早く死ねと祈るばかり)
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(──ああ、この老婆も自分のような“怪物”を殺せるならきっと本望なのだろう、と諦念に似た思いすら抱き始め。もはや自分が何の為に生きていたのかも思い出せず──)
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ふ ざ け る な !!!
(──拘束具は瞬く間に砕け散った、そのまま彼は力任せに手術室を破壊した) -
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はぁ、はぁーっ……クソ、病院は嫌いだ、昔ッからな……!!! (何かの薬品の瓶を踏み砕きながら彼は荒い息を吐く)
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……どうやら今回は“鬼”に会わなくて済んだようだが、これはこれでまあ物々しい雰囲気だな…… (鼻を突く鉄錆の臭いに眉を顰め、行先を阻む瓦礫を軽々と除けていき)
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正直、あまり進みたくはないけど……見つけたからには一度くらい、足跡を残しておくか…… (一つ深呼吸をすると、腹を括ってその先へと歩みを進め──)
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うっ、何だこれは…… (暗い病棟に足を踏み入れた直後、鉛のように重くなる手足に思わず立ち止まり) 流石に、これは……気分が、悪い……
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……嫌だ、ここにはあまり、居たくない…… (そう告げるのは彼の本能か、それとも──)
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(その身を襲う倦怠感からふらふらと歩いていた彼は、小さな玩具が散らばる部屋の中で身を隠すように小さく蹲り──そして、)
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──ひっ!?
(自分以外の“もの”がバラバラにされている事に気付くと、青ざめた顔で身を震わせた) -
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(まるで身体が泥にでもなったように重く溶けゆく意識の中──ふと悪寒が走り、慌てて飛び起きた) っぶねえ!!!
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あのまま寝てたら間違いなく永眠してた……俺には分かる……!! (額の冷や汗を拭いながら、重い体を起こしてその場を立ち去った)
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うわ……なんだこれ、誰がこんなものを……!! (思わずカルテを投げ捨てて後退る、その得体の知れなさに身の毛がよだつのを感じた)
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だめだ、やっぱりここは“だめ”だ、早くここから出たい…… (両手で頭を抱えながらうずくまる、殺意と憎悪で生きてきた筈の彼が“恐怖”を感じている──)
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また……この部屋、か…… (つい先日の事、バラバラにされた玩具達を思い出す──)
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(できればもうこんな所で休みたくはない、しかしその身に満ちる疲労感と倦怠感には抗えず、彼はぬいぐるみの腹に顔を埋めるように倒れ込んでしまった……)
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(──目が覚めると、彼が抱いていたくまのぬいぐるみには首が無く、かわりに大きなハサミが突き立てられていた。切り取られた首は部屋の入り口に、まるで彼を見つめるように鎮座している)
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ええ……こわ…… (薄気味悪いとばかりに小声で呟きながらくまの首を跨いで部屋を出た)
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ヒッ……く、車椅子??? (上擦った声を上げながらそれを見る、何かされるのかと身を強ばらせているが特に異変は訪れない……)
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な、何も用がないならっ、俺は行くが、 (恐る恐る後退り距離をとると、彼は一目散に走って逃げ出した)
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くらげ……クラゲか…… (暫し、じっとそれを見る。水底に何かキラリと光るものが見えるが、)
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泳いで取るには鱗でもない限り無理だな…… (諦めてその場を立ち去った)
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うわ、できれば飲みたくねぇ……けど、喉乾いてるしな…… (透明な液体を見て暫く考え込むが、意を決してその液体を飲み込んだ──)
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……あ、大丈夫だこれ。飲めるやつだ。……美味しい (ほっと一息、胸を撫で下ろす。束の間の休息を得た)
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(──身体が重い、怠い、暑いような寒いような不快感が身を蝕む。彼は鉛のように重い手足を引きずりながらソファに倒れ込んだ)
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(このまま寝たら恐らく、いや間違いなく目覚められなくなる、しかしそれに抗う事ができない──)
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──……もう、限界、だ……おやすみ……──
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……病院じゃない (最早見慣れた光景に、俄かに安堵した)
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──ッ、 (不意を突かれ跳ね飛ばされるが、受け身を取り地に足をつける) またか……お前にはもう用はないんだが、まあ、いいだろう
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俺が殺された数だけ殺し返す、というのも悪くない (にたり、と不敵な笑みを浮かべながら『鬼腕』を振り翳し──)
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…………、 (宙に吊られた彼は、もう何も語らない。其れは諦めか、それとも──)
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うそつき…… (何度も見たその言葉を、まじまじと眺めては)
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……俺が“うそ”なら、
“ほんとう”は何処にあるんだ……？ -
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(その爪痕を見て──彼は思い出した、それは確かにかつて彼の身を切り裂いたもの、皮膚を割かれ骨を砕かれる激痛も、臓腑が零れ落ちる不快感も、バラバラになった手足が吹き飛ぶ光景も、その全てを鮮明に)
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(──全身が凍るような恐怖と共に、僅かな喪失感が胸に焼き付いた) ……今、何かを失くした……何をだ……??
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…………、 (プールの縁に立ってそれを見ている、手を伸ばそうとするが濡れた足元が滑りそうで慌てて引っ込めた)
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あれは、下駄箱の……もし水の耐性があれば……、
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……機会があれば考えておくか (珍しく神妙な面持ちで考えた後、その場を後にした)
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──懲りないな (ひしゃげたフェンスの前で立ち上がる、土埃を払ってからその身を巨大化させ『鬼腕』を振り下ろした)
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以前はあれだけ戮されたっていうのに、力を得てからはまあ、呆気ないものだな…… (それは落胆か嘲笑か、息を一つ吐くと壊れたフェンスを乗り越えて校庭を出た──)
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