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ウタカタ
なんだか、前にもこんな事があった気が…… (薄暗い屋台の中で記憶を辿ると、確かに思い当たってぽんと手を叩き) そうだ、あれは僕の身体が半透明だった時──
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ウタカタ
色々あったから忘れてた……そう、確かこの先にお化け役の人が (曲がり角の先に手を出して、そこに開いた“目”で状況を確認すると彼は一つ息を吐き)
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ウタカタ
それじゃあ、“本物の怪物”を見せに行こうか
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ウタカタ
────、 (彼は目を閉じてその音に聴き入っている……)
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ウタカタ
とても綺麗な音だ。ありがとう (口元に僅かに笑みを浮かべると、対価を支払いその場を後にした)
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ウタカタ
確か、前にもこの屋台で会いましたよね (問いかけると“情報屋”の男は彼の顔を覗き込んだのち、ばつが悪そうに笑って誤魔化した)
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ウタカタ
あいにくなんですが、手持ちが今これで最後なんですよ。それで……あなたには前に奢りましたし…… (彼が言葉を濁すと男は落胆した様子を見せたが、それ以上食い下がる事もなく身を引いて)
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ウタカタ
すみません。それじゃあまた、どこかで (彼は男に向け会釈をするとその場を後にした──)
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ウタカタ
やった。大当たりだな。たぶん (賽子の出目を見て小さくガッツポーズをすると、手に持っていた最後の硬貨を差し出して)
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ウタカタ
……お小遣いが無くなっちゃった。お祭りはもう、終わり…… (遠のく意識に身を委ねるように、目を閉じた──)
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ウタカタ
…………、 (彼は複雑そうな表情を浮かべた後、全身に目一杯の力を込めて拘束具を破壊した)
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ウタカタ
あれは……鬼じゃ、ない？ (近付いて来る足音がよく聞くそれと違う事に気付くと、彼は部屋の片隅に身を潜めた)
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ウタカタ
(『百目』を使って様子を伺うと、毒々しい色をした錠剤を他の患者に飲ませている姿が見える……)
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ウタカタ
……ここは、大人しくしていた方が良さそうだな……
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ウタカタ
……やっぱり、こうなるんだな (彼は溜息を一つ吐くと、拳を握り身構えた──)
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ウタカタ
……白い花……うーん (それが何の為だったのか、思い出そうと頭を悩ませていると──)
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ウタカタ
あっ、おい！ 勝手に食べるなよ！ (──腹部の『複口』が花をペロリと平らげてしまった)
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ウタカタ
…………、 (彼は僅かに顔を顰めた、確かに以前ここでその老人と戦い、同じように三ツ目をこの身に宿していた)
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ウタカタ
──けれど、お生憎様。
今の僕の“目”は三ツ程度じゃ足りませんよ (全身に開いた『百目』で老人の姿を捉えると、彼はその腕を振りかざした──) -
ウタカタ
……ん……？ (すやすやと寝息を立てていた彼は僅かに身じろぎをするが、また直ぐに眠りに落ちていく──)
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ウタカタ
ぼくの……なまえ……
……しってる……？ -
ウタカタ
そうだね、たまにはこういう日があってもいい (彼は頷くと、女性に促されるまま小屋の中に入り、衣服を脱いだ)
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ウタカタ
ふう……暖まる……けど少し“目”にしみるかな？ (湯船でくつろぎながら、全身の『百目』の端から僅かに泡が零れた)
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ウタカタ
うわっ、またコイツか!! (突如として襲う不快感に身じろぎし、慌てて『竜尾』を振り回す)
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ウタカタ
(ぐちゃり、という気味の悪い音と共にそれは動かなくなった) まったく、もう……急に出てくるなよ
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ウタカタ
そうですか (女性の怨嗟の声を気にも留めず、彼は淡々と歩み寄ると『鬼腕』を振り下ろした)
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ウタカタ
……、 (目下に広がる赤色を見て、彼は何思うか)
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ウタカタ
いいえ、必要ありません (詰め寄る少年の頭を掴みあげると、彼はそれを傍らの池に深く沈めた)
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ウタカタ
(やがて少年の体が動かなくなった事を確認すると、深い溜息を一つ吐く)
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ウタカタ
はぁ……いつまでこんな事を、続けなければいけないんだろうか……
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