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ウタカタ
……これくらい、警戒する程でもないな (彼は『鬼腕』を振り翳すと躊躇なくそれを振り下ろした。地に伏す怪物に更に『竜尾』を叩き付ける)
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ウタカタ
(怪物が完全に沈黙した事を確認すると、彼はその場を後にした)
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ウタカタ
お生憎様、それは──こちらも同じなんですよ (彼の全身にぎょろりと『百目』が開く、怯んだ相手の隙をついて腹部の『複口』が相手の半身を抉りとった)
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ウタカタ
──ご馳走様でした。
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ウタカタ
う……だれ…… (彼は自身に触れるそれの正体を確かめようと身をよじる、が、瞼が重く開かない)
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ウタカタ
……むにゃ…… (或いは平時の疲れからか、抵抗する間もなく彼の意識は眠りへ落ちていった)
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ウタカタ
ん？ あ、ヤバッ…… (けたたましいエンジン音から殺意を感じ取ると同時に踵を返して走り出すが、急加速してきた車両は間もなくして彼の身を捉えた──)
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ウタカタ
……甘い (もごもごと舌を動かして口内をまさぐるが、肝心のそれそのものは既に無く)
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ウタカタ
え……と、話し合いで解決する空気では、なさそうですね？ (彼は両手を上げて投降の意思を表しながら会話を持ち掛けよぅとするが、自警団らがそれに応える様子は無い)
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ウタカタ
まさかとは思うんですけど、その武装は、僕を殺す為にわざわざ用意したものでは── (緊迫した状況に息を呑みながら言葉を続けていると、不意に、彼の胸を何かが貫き──)
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ウタカタ
いッ── (痛みに身動ぎした瞬間、それを皮切りに次々と自警団らの攻撃が彼を襲う)
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ウタカタ
(もはや言葉を発する事も叶わず、ただ手を伸ばすがそれを取るものは無く、彼は原型留めぬ無惨な肉塊に成り果てた)
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ウタカタ
(がさごそと音を立てながら箱から半身を乗り出して) ……僕は、捨て猫じゃないと思うんだけど。
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ウタカタ
橋を……そういえばそんなもの、どこかで見た気が、 (額を押さえて考え込むが、鈍い頭痛によってその思考を阻まれる)
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ウタカタ
あの場所さえ思い出せれば、この町から、出られる気が……するのに…… (記憶の中を遡ろうとするほど頭痛は強くなり、暫くして彼は首を左右に振った)
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ウタカタ
うわっ、なに？ 気持ち悪…… (湿った感触に思わず足を引こうとするが、その何かが絡み付いて中々離れない)
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ウタカタ
ちょ、ちょっと、邪魔!! (焦った彼は側溝から伸びる腕に『竜尾』を叩き付けた、すると足元から小さく悲鳴が聞こえ、湿った腕は直ちに離れて引っ込んだ)
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ウタカタ
な、なんだったんだ、今の…… (彼は首を傾げながらもそそくさとその場を後にした──)
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ウタカタ
かに……かに？ (思わず二度見する、それは確かに沢蟹だ。そして楽しげな祭囃子がどこからか聞こえてくる)
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ウタカタ
縁日……かな。よく分からないけど、行ってみようか (彼は頷くと音の聞こえる方向へと歩みを進めた──)
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ウタカタ
──あれ？ 僕、いつの間にこんなものを、 (違和感を感じて手を開くと、そこに見知らぬ硬貨がある)
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ウタカタ
えっと……これがここでの通貨、って事でいいんだよね (彼は首を傾げながらも、屋台が並ぶ雑踏の中に踏み込んでいった──)
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ウタカタ
うん、綺麗だな。折角だから赤い林檎にするよ (彼は硬貨を差し出して、釣り銭と赤いりんご飴を受け取った)
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ウタカタ
んむ……美味しい (りんごの表面を覆う飴を舐めながら、口の中に広がる甘みに頬を緩ませる──)
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ウタカタ
うーん、残念、はずれだ。でもありがとう (賽子の出目を見て小さく笑いながらも飴細工を受け取った)
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ウタカタ
……飴が二つになってしまった (両手にりんご飴と飴細工を持った彼は、困ったような顔をしながらもクスクスと笑っていた──)
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