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ウタカタ
黄昏、黄昏…… (そこにあるはずもない名前を、元より失っている筈の自分の名を探して) そういえば、僕の名前は何だっけ？ あれ、元々ない……？
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ウタカタ
……思い出せない事に変わりはないけど、逆に考えたら、取り戻す方法もあるんじゃないか……？ (首を捻りながら、本来の自分は何だったのかと今一度思考を巡らせて)
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ウタカタ
──ッ、またお前か…… (冷静にそれを見据える、“力”を得た今の彼にとってそれは脅威足りえない──)
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ウタカタ
邪魔だ……あくまでやる気なら、力ずくでそこを退いてもらう……!!
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ウタカタ
……、 (目を凝らしてその向こうを見る、それを隔てる“何か”があるようだが彼にはそれが捉えられない)
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ウタカタ
この壁みたいなのを壊せば、向こうに行けるんじゃ── (何度か殴ろうとしてみるものの空振りが続く、しかし向こうへ通る事はできない、曖昧で柔軟な結界が彼を阻む)
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ウタカタ
通れないんじゃ、仕方ないな。他を当たろう (息を一つ吐くと彼はその場を後にした、その先に続くものが“出口”とは知らないまま──)
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ウタカタ
あの封筒、いかにも怪しい……もしかしてこの身体なら、泳いで行けるかも (自身の身体に生えている『鱗』を撫でると、衣服をいくつか脱いで溜め池に飛び込んだ──)
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ウタカタ
(──暫くして、封筒を持って池から上がった彼は、身体を乾かしながらも封を切ってその中身を見た) ……うわ、
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ウタカタ
札束……、あからさまだなぁ……でもまあ、住民一人くらいなら買収できるかな (半ば絶句しながらも、使い道があると判断したそれを荷物に加えた)
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ウタカタ
う、わっ、あれはっ、ヤバイ!! (慌てて駆け回りながらもその姿を確かめる) 竜尾と鬼腕はこっちにもあるけど、くそっ、デカすぎる……!!
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ウタカタ
(彼は額の冷や汗を拭いながら『三ツ目』で辺りを見渡した) あれだけ大きいなら、逆に狭い場所に身を隠した方が……っ
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ウタカタ
(幾度か角を曲がった先で道端のダストボックスに身体を滑り込ませ、息を潜めて祈った。地を轟かせる足音が、徐々に遠のいていく……)
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ウタカタ
……良かった、やり過ごせたみたいだ…… (恐る恐ると通りに顔を出しながら、ほっと胸を撫で下ろした)
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ウタカタ
役場……ここなら何か、情報があるかも…… (何気なく立ち入ろうとした彼の両脇で、重い音が鳴り響く) ──えっ？
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ウタカタ
(住人たちが門を閉めている、このままだと挟まれる──と理解するが早いか) そ、そうだ!! これだ!! (彼は札束の入った封筒を投げ捨てた)
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ウタカタ
(地に落ちた衝撃で封筒が破れ、中の札束が辺りに散らばる、住人たちは思わずそれに目を奪われ──)
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ウタカタ
よ、よし、今のうちに……!! (大金をめぐって口論を始める住人たちを尻目に、彼はその場を逃げ出した)
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ウタカタ
(すっかり人の居なくなった役場入口に戻ってきた彼は、息を潜めながらこっそり門をくぐろうとする──)
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ウタカタ
(──が、やはり左右から重い音が鳴り響き、今度こそ彼の身を挟み込んだ) う、ぐッ……!! やっぱダメ……
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ウタカタ
待っ、て、折れ、る── (まるで万力のように凄まじい圧力で挟まれた彼は、抵抗するすべもないままに自身の体が砕け散る音を聞いた)
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