-
ウタカタ
(何処かから、甲高い笛の音のようなものが聞こえてくる、ここからそう遠くはないだろう)
-
ウタカタ
向こうに誰かいる……？ 一応、様子を見てみるか
-
ウタカタ
そう……ですね。多分、強いですよ (表情を変えること無くただ淡々と告げる、しかしその目は敵を真直ぐに捉えている)
-
ウタカタ
これは……、厳しい戦いになりそうだ。でも多分──僕が勝つよ (その冷静さを裏打ちしているのは、圧倒的な強さ。彼の持つ“力”が彼に自信を与えている──)
-
ウタカタ
へえ、……でも僕には、もう十分な力がありますしね (にこり、と微笑んで見せるがその目は笑っていない。彼の両腕が“鬼”のそれである事に気付くと男は逃げ去っていくだろう――)
-
ウタカタ
っ、は、馬鹿な…… (肩に刺さった矢を乱暴に引き抜くが、既にその身は毒に侵され始めていて)
-
ウタカタ
く、そっ、やめ、 (彼の動きが鈍ってもなお自警団らの攻撃が止む事は無く、弄ぶように降り注ぐ矢の中を走れば走るほど手足の感覚が失せて行き──)
-
ウタカタ
(ようやく矢の届かない場所まで逃げた、と思った瞬間には彼の意識は闇に落ちていた)
-
ウタカタ
……僕は、嘘なんて吐いてない (覚えのない胸のざわめきを感じながら、自身の両手を見て)
-
ウタカタ
ッ、出たな、ドラゴン──!! (吹き飛ばされつつも受け身を取り相手の巨体を視界に捉え)
-
ウタカタ
──今日こそ、その力、貰い受ける！
-
ウタカタ
猫…… (誘うように鳴くそれを見ながら、恐る恐ると塀の隙間を覗き込んだ) ──ここから、出られるのかい？
-
ウタカタ
そうだね、いっそ猫にでもなれたら楽だったんだろうけど、 (ふと自身の身体を見下ろす、そこには人とも獣ともつかない“異形”の力が並んでいる──)
-
ウタカタ
──あぁ、どうやら僕は、少なくとも“猫”ではなかったようだ。
-
ウタカタ
──え？ (彼がその事態に気付いた次の瞬間には、身体が宙を舞っていた)
-
ウタカタ
(強烈な力で跳ね飛ばされた彼の身体は、地に叩きつけられた後に鉄の塊によって轢き潰された)
-
ウタカタ
……どうして、また……！ (つい先日見たばかりの光景に思わず苛立ちを覚え始め、自身が座っていた机を乱暴に叩き壊し)
-
ウタカタ
……ちょっと、埃っぽいな (すん、と鼻を鳴らしながら本棚を順に追っていく) 僕は、どんな本が好きだったっけ……？
-
ウタカタ
(──ふと、机の上に置かれっぱなしになっている本に視線が落ちる、何故かその本には埃が一切積もっていない)
-
ウタカタ
『不思議の国のアリス』……誰かここに置いていったのか？ (周囲を見回すが当然人の気配はない、置かれている本を本棚に戻すとその場を後にした……)
タップで続きを読む
