第3章
夢小説設定
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鏡の前で、私は立ち止まっていた。
肩。襟。腰の位置。
どれも、ぴたりと合っている。
新しく仕立てられた調査兵団の制服は、余計な余白がなく、それでいて、窮屈でもない。
──ちゃんと、私のためのものだ。
無意識に、口元が少しだけ緩む。
にこり、ではない。声が出るほどでもない。ただ息が柔らぐような──そんな微かな、微笑み。
……あ。
気づいた瞬間、その表情がはっきりと自覚されて、私は僅かに目を見開いた。
笑っている。
制服を着て、鏡に映る自分を見て──理由を考えなくても、分かってしまう。
この変化を引き起こしたのは、場所でも、服でもない。
人だ。
浮かぶのは、低い声。短い言葉。無駄のない距離。それから──背中。
私は小さく息を吐き、視線を鏡から外した。
考えすぎると、足が止まる。
今日は、点呼がある。
扉を開け、廊下に出る。
朝の本部は、まだ完全には目を覚ましていない。
靴音が、規則的に響く。
その角を曲がったところで──視線が、合った。
「おはよう、ユニ。」
先に声をかけてきたのは、エルヴィン団長だった。
歩幅を揃えるように、自然に並ぶ。
「おはようございます。」
それだけのやり取り。なのに、不思議と落ち着く。
廊下を歩きながら、他愛のない話を二言、三言。
業務の確認。今日の予定。
会話は淡々としているのに、どこか柔らかい。
点呼場所が近づき、別れ際。
エルヴィン団長は一度だけ、私の制服に視線を落とした。そして──
「すっかり、調査兵団だな。」
評価でも、確認でもない。事実を、そのまま言っただけの声。
私は一瞬だけ間を置いてから、小さく頷いた。
「……はい。」
その言葉が、前よりも軽く出たことに──自分で、少しだけ驚いた。
エルヴィン団長はそれ以上何も言わず、人の流れへと歩いていく。
残された廊下で、私は背筋を伸ばした。
制服の重さは、もう分かっている。
それでも、今は──その重さが、嫌じゃなかった。