第2章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
本部の廊下で、書類を抱えて歩いていたときだった。
「──ユニ。」
低い声。
振り向くと、そこにリヴァイ兵士長が立っている。
相変わらず、用件だけを切り出す距離感。
「エルヴィンが呼んでる。」
一瞬、足が止まった。
「……エルヴィン団長が、ですか?」
「そうだ。」
それ以上の説明はない。理由も、補足も。
でも──この人が何の根拠もなく名前を出すはずがないのは分かっている。
「……分かりました。」
そう答えると、リヴァイ兵士長は短く頷いた。
「行ってこい。」
それだけ。
背中を見送られながら、私は少しだけ呼吸を整える。
何か、あった。それだけは確かだ。
◇
団長室の前に立ち、軽く、ノックをする。
「入れ。」
中に入ると、エルヴィン団長は机から顔を上げた。
そしてほんの一瞬だけ、意外そうに目を細める。
「……呼ぶ前に来たか。」
私は、思わず足を止める。
「え……?」
一拍。
「リヴァイ兵士長が、エルヴィン団長がお呼びだと……。」
言いながら、少しだけ戸惑う。
呼ばれたと聞いた。だから来た。それだけのはずなのに。
エルヴィン団長は私の表情を一度だけ確認してから、小さく息を吐いた。
「なるほど。彼らしい。」
否定もしない。肯定もしない。ただ、事実として受け取っている。
「……あぁ、間違ってはいない。」
そう言って、机の上の書類に視線を落とす。
「少し、話がある。立ったままでいい。」
私は、背筋を伸ばした。
「はい。」
エルヴィン団長は、1枚の文書を手に取る。
その紙には、見覚えのある形式と、見覚えのない重さがあった。
「中央から、正式な文書が届いた。」
その言葉で、胸の奥が静かにざわつく。
「君の所属についてだ。」
……やっぱり。
ここに来る前から、どこかで覚悟していた言葉。
エルヴィン団長は、私の反応を急かさない。
淡々と、だが、逃がさずに続ける。
「結論から言おう。」
一拍。
「ユニ・クラインは本日付で──」
視線が、こちらに戻る。
「正式に、調査兵団所属となった。」
……一瞬、頭が追いつかない。
中央。保留。再検討。
あれほど聞かされてきた言葉が、音もなく遠ざかる。
「条件はない。」
エルヴィン団長は、はっきりと言った。
「管理権も、指揮権も、すべてこちらに移っている。」
私は、息を吸って──ゆっくり、吐いた。
「……そう、ですか。」
声は、思ったよりも落ち着いていた。
エルヴィン団長は私の様子を見て、静かに頷く。
「選ばれたわけじゃない。中央が手放したんだ。」
言い訳でも、慰めでもない。ただの、事実。
「そして──」
一瞬だけ、表情が柔らぐ。
「君は、もう"戻る場所"を考えなくていい。」
私は、指先をぎゅっと握った。
「……ありがとうございます。」
その言葉に何を含めたのかは、自分でも分からない。
エルヴィン団長は、それ以上深くは踏み込まなかった。
「リヴァイには、もう伝えてある。」
やっぱり。
胸の奥で、何かが静かに落ち着く。
「現場での扱いはこれまで通りだ。だが──」
視線が、まっすぐ向けられる。
「君はもう、"預かりもの"じゃない。」
私は、小さく頷いた。
「……はい。」
それだけで、十分だった。
エルヴィン団長は机に戻りながら、いつもの声で言う。
「以上だ。戻っていい。」
私は一礼して、団長室を出た。
廊下に出た瞬間、ようやく息を吐く。
……終わった。
いや。終わった、というより──始まった、のかもしれない。
そしてなぜか、一番最初に浮かんだのは──リヴァイ兵士長の顔だった。
「呼んでる。」
あの一言は、もう知っていた、という事。
それでも、私に直接は言わなかった。
──彼らしいな。
私は少しだけ口元を緩めて、歩き出した。
調査兵団の廊下を。
今度こそ、"帰る場所"として。