第2章
夢小説設定
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扉を叩く音で、意識が跳ねた。
──コツ、コツ。
一瞬で、目を開ける。心臓が、早く打つ。
……え?
ここは──執務室。リヴァイ兵士長の。壁際の椅子。リヴァイ兵士長の背中。
……あ。私、また……?
身体を起こそうとして、動きを止める。
音を立てたら、まずい。
扉が開く。
「失礼する。」
低く、よく通る声。
エルヴィン団長だ。
「……ユニ。いたのか。」
一瞬だけ、こちらを見る。
気づかれてる。
何か言わなきゃと頭では思うのに、声が出る前に、話はもう次へ進んでいた。
「報告書は目を通した。概ね、想定通りだ。」
リヴァイ兵士長が、短く返す。
「そうか。」
それだけで、会話は続いていく。
配置。今後の動き。兵の再編。
私は完全に、挟まる隙を失ったまま──ただ、座っている。
……私。
また、寝てた。
最後の記憶は、「……はい」と答えたところ。
そこから何があったのか、まるで抜け落ちている。
ゆっくり、視線を動かす。
リヴァイ兵士長は、一度もこちらを見ていない。
けれどさっき、名前を呼ばれた気がした。
……気のせいじゃ、ない。
ということは──気づいてた、よね……。
胸の奥が、少しだけきゅっとする。
迷惑じゃなかっただろうか。勝手に、眠ってしまって。
言い訳したい。謝りたい。
でも今は──そのどれも、できない。
私は背筋を伸ばしたまま、静かに呼吸を整える。
起きている。今度は、ちゃんと。
……たぶん。
そう思いながら、私は2人の会話を聞いていた。
自分の心臓の音だけが、やけにはっきりしていた。
エルヴィン団長が退室すると、執務室の空気が元に戻った。
紙の匂い。インク。遠くの足音。
私は少し遅れて、自分の鼓動を意識する。視線を伏せたまま、胸の奥が僅かにざわついた。
リヴァイ兵士長は、何も言わない。責める気配も、呆れた気配もない。それが逆に──少し、不安だった。
私は椅子の肘に手をかけ、ゆっくりと立ち上がろうとする。
「……あの、」
声を出す前に、一度、息を整える。
「まだ、十分に休息が取れていませんでした。ここにいてもご迷惑ですし……」
言葉を選びながら続けようとした、そのとき。
「座れ。」
低い声。短い。だが、はっきりしている。
私は、動きを止めた。
視線を上げると、リヴァイ兵士長がこちらを見ていて、指先で、ソファの方を示す。
「迷惑じゃねぇ。そこで、休んでろ。」
命令口調。いつもと変わらないはずなのに──どこか、逃げ道を塞ぐ言い方だった。
私は返す言葉を探して、一瞬、黙る。
けれど結局、何も見つからない。
「……了解しました。」
小さく答えて、示されたソファへ向かう。
腰を下ろすと、身体が正直に重さを主張した。
背もたれに、ほんの少しだけ体重を預ける。
……だめだ。
意識が、また下へ引かれそうになる。
それでも、ここにいていいと言われた事実が──確かに支えになっていた。
視界の端で、リヴァイ兵士長が机に向き直るのが分かる。
距離はある。触れてもいない。それなのに。
1人じゃないという感覚だけが、はっきりと残っていた。
私は目を閉じる前に、小さく、息を吐く。
今度こそ──少しだけ、休もう。
ここなら。
……ここなら、大丈夫だ。
────────────────
部屋に、音がない。
書類を置き、視線だけを横にやる。
ソファ。
背を預けたまま、ユニは動かない。呼吸が一定だ。
……寝たな。
肩の力が、完全に抜けている。無理に保っていた姿勢が、ようやく許されたみたいに。
俺は、声をかけない。起こす理由はもうない。今は──起こす方が間違いだ。
机に戻り、書類を1枚ずらす。紙の音を、必要以上に立てない。
さっきまで、立ち上がろうとしていた。
「自分の部屋に戻る」と言いかけて、それでも、目の奥が限界だった。だから止めた。
迷惑じゃねぇ。そこで休んでろ。
言葉にしたのは、それだけだ。理由は──言う必要がない。
視線を、もう一度だけやる。
眠りは浅くない。戦場で削った分を、今、取り戻している。
……よくやった。
口には出さない。出す必要もない。
ここにいる。それで十分だ。
俺は、また机に向き直る。
部屋の空気を、動かさないように。眠りを、邪魔しないように。
今は──それが最優先だ。