第2章
夢小説設定
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翌日の訓練は、屋内での基礎動作確認だった。
立体機動装置は使わない。刃も出さない。ただの、体捌きと反射の確認。
だからこそ、油断が出やすい。
私は、列の後方で順番を待っていた。
視線は、床と、前の兵の背中。
意識は、深く沈める。
……けれど。
「次。」
声が掛かった瞬間、横から一人、動線を誤った兵士が踏み込んできた。
ぶつかる──そう思った、その一瞬。
腕を引かれた。
強くはない。けれど、迷いのない力。
身体が半歩、後ろへ引き戻される。
私の前を、風が抜けた。
「──チッ。」
低い舌打ち。
視線を上げると、そこにいたのは──リヴァイ兵士長だった。
いつの間に、ここに。
私の腕を掴んだまま、リヴァイ兵士長はぶつかりかけた兵士を一瞥する。
「動線、見ろ。」
短い一言。
責めるでもなく、声を荒げるでもない。ただ、事実だけ。
「……すみません!」
兵士は慌てて頭を下げ、列に戻る。
その場に残ったのは、一瞬止まった空気と──
私と、リヴァイ兵士長。
掴まれていた腕が、離れる。
「怪我は。」
問いかけというより、確認。
「……ありません。」
そう答えると、リヴァイ兵士長はそれ以上何も言わず、私の立ち位置をほんの少しだけ調整した。
前に出すぎない。かといって、下げすぎない。
「ここだ。」
それだけ。そして、もう私を見ない。
次の指示を出すために、視線は全体へ戻っていた。
──ほんの、数秒。
起きた事は、それだけだった。
けれど周囲の空気が微かに変わったのを、私は感じてしまった。
視線。
さっきまでの、ひそひそとしたものとは違う。
探るような、測るような、「今の見たか?」
そんな気配。
私は、何も言わない。表情も変えない。ただ教えられた位置で、次の動作に備える。
胸の奥が、静かに温かい。
助けられた、というほど大げさじゃない。庇われた、と言うほど派手でもない。
でも、あの一瞬。
この人は、迷わず私を引いた。
それを、皆が見た。
それだけで──今日の空気は、少しだけ違っていた。
今日の訓練は、屋内での基礎動作確認。
立体機動は使わねぇ。刃も出さねぇ。
だからこそ──動きの粗が、はっきり出る。
俺は全体を見渡しながら、列の流れを追っていた。
足運び。間合い。視線の向き。
……一人。
ほんの一瞬、視線が落ちた。集中が、半拍遅れた。
「──」
次の動作に入る直前、横から一人、動線を誤った兵士が踏み込んだ。
距離。角度。速度。
──ぶつかる。
そう判断した瞬間には、もう身体が動いていた。
腕を掴む。引く。
力は要らねぇ。半歩で十分だ。
風を切って、別の兵士が前を抜ける。
「──チッ。」
舌打ちは、癖だ。
俺は、動線を乱した兵士を一瞥する。
「動線、見ろ。」
それだけ言えば足りる。
「……すみません!」
兵士は慌てて列へ戻った。それ以上、構う必要はねぇ。
問題は、もう処理した。
掴んでいた腕を離す。
「怪我は。」
確認。それ以上でも以下でもない。
「……ありません。」
即答。声は乱れていない。
俺は、そいつの立ち位置を見る。
半歩、前に出すぎている。だが下げすぎれば、今度は別の事故を呼ぶ。
靴先で床を示す。
「ここだ。」
位置を、ほんの少しだけ修正する。それで終わりだ。
視線を戻す。次の動作へ。
俺の中では、それだけの出来事だった。
だが──空気が、止まったのが分かった。
視線が集まる。探るような、余計な間。
……くだらねぇ。
俺は気にしない。訓練は訓練だ。
見てる兵士がいようが、勝手な解釈をしようが、関係ねぇ。
必要だから、引いた。危ないから、止めた。
それだけだ。
次の号令を出しながら、列の中の一人を、意識の端で捉える。
姿勢は、崩れていない。呼吸も、戻っている。
問題なし。
──それでいい。
訓練は続く。俺は、全体を見る。
ただそれだけだ。