第4章
夢小説設定
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作戦は、つつがなく進んでいた。
当初の指示通り、巨人を壁際へと誘導し、街中を何度も往復する。
緊張が解ける暇はない。常に次の一手を考えながら動き続ける。
……そして。
空に、信煙弾が上がった。
作戦成功の合図。
胸の奥が、一瞬だけ、フッと緩む。
──終わった。
そう思った、その直後。違う、と気づく。
ここはまだ、巨人の領域だ。
向こうの作戦が達成されたとしても、被害の全容は分からない。
市民の状況も、兵の損耗も。
それに──私達は壁外調査から戻ってそのまま、この作戦に合流している。
体力も、集中力も、確実に削られてきている。
周囲を見る。
誰も弱音は吐かない。だが、動きは僅かに重い。
だから──
「全員、一旦退避。」
声を張る。
「下に注意を向けつつ、急がず、焦らず、確実に壁に戻ります。」
「了解!」
返答が、即座に返る。
それを確認してから、ようやく自分の呼吸を意識した。
……上手く、できただろうか。
すぐに、その考えを打ち消す。
違う。今考える事じゃない。
それより──リヴァイ兵士長は、無事だろうか。
きっと、大丈夫だ。私が心配しなくても、あの人なら。
そう思いながらも、視線は無意識に、向こうの方角を探していた。
壁に辿り着き、ようやく一息つく。
班員達を見回す。
全員、いる。怪我も、致命的なものはない。
……リヴァイ班は、無事。
それだけで、胸の奥に溜まっていたものが、少しだけ下りた。
「全員、ガスと刃の補充をしたのち、待機。少しでも、体を休めましょう。」
「……助かった。ありがとう……。」」
駐屯兵の、掠れた感謝の言葉。
その声を聞いた瞬間、ようやく実感が追いつく。
──失望させずに、済んだ。
リヴァイ兵士長に。託された判断に。
私は、深く息を吐いた。
まだ、終わってはいない。
でも、今はただ──ここまで来られた事を、静かに受け止めていた。
───────────────
ユニと別れてから、迷いはなかった。
向かうべき場所はひとつだ。
門の方角へと駆ける途中で、嫌でも状況が目に入る。
──いた。
地面に座り込む、巨人。
その巨体は動かず、まるで力を失ったかのように項垂れている。
そして、その傍ら。寄り添うように立つ、訓練兵の少女。
……これが、この作戦の、要か。
遠くに視線を上げる。
壁の上。エルヴィンがいた。
壁を隔てて、向こうと、こちら。
向こう側にも、巨人がいる。しかも、数は少なくない。
壁外調査から戻ったばかりだ。負傷者も多い。ガスも、刃も、万全とは言えない。
それでも、エルヴィンは全体を見ている。
「エルヴィン。」
呼びかけると、すぐに視線が合った。
無駄な前置きは、いらない。
「……あの巨人。今は、あいつを守らなきゃならねぇらしい。」
視線を、地上の巨人へ向ける。
「ここの門は、間もなく塞がる。あの大岩でだ。」
一拍。
「外にいる兵は、どうなってる。」
エルヴィンはほんの一瞬だけ思考を巡らせてから、答えた。
「……前と同じだ。ストへス区の門を開けてもらえるよう、交渉している。」
声は、落ち着いている。
「岩で塞ぐなら、ここからの出入りは不可能になる。私は下の兵を率いて、すぐにストへス区へ向かう。」
そして、こちらを見る。
「こちらは、頼んだ。」
……話が早い。
状況の共有は、それで十分だった。互いに、これ以上言葉を交わす必要はない。
エルヴィンは壁上で指示を飛ばし、俺は地上へと意識を戻す。
それぞれの役割へ。
◇
作戦は、成功した。
それが分かった瞬間、頭の中で思考が切り替わる。
……ユニ。
無事か。向こうの状況は。リヴァイ班は。
ガスは残り少ない。穴が塞がった今、無理をして巨人を倒す必要はない。
本当なら、今すぐウォールローゼまで戻りたい。
だが──それをぐっと堪える。
今はまだ、ここに残る兵がいる。
全員が戻るまで、目を離すわけにはいかねぇ。
意識を、再び下へ。最後の1人が安全圏に入るまで。
それが、俺の役目だ。
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