第4章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それから、しばらく。
討伐は続いていた。
前方、斜め右。リヴァイ兵士長が一体を斬り伏せるのを視界の端で捉えながら、私は周囲を見ていた。
「クソ……今日は数が多いな……。」
低く吐き捨てる声。
確かに、多い。想定の範囲内ではあるけれど、流れは少しずつ重くなっている。
でも私の意識は、そこに向かなかった。
どうしても最初に見つけた"あの巨人"が、頭から離れない。
まだ距離はある。進路上でもない。
それなのに視界に入るたび、胸の奥がざわつく。
私は無意識に首を巡らせ、辺りを確認していた。
風。地形。そして──遠方。
「ユニ。」
不意に、声が落ちてきた。
隣に並ぶ位置から、リヴァイ兵士長がこちらを見る。
「……何かあったか。」
「いえ……。」
一瞬、言葉に詰まる。確信は、まだない。説明も、できない。それでも──
「……あの巨人が……。」
視線を遠くに向けると、リヴァイ兵士長の視線も自然と、そちらに向く。
「……あの巨人は、まだ距離がある。」
冷静な声。
「わざわざ今、討伐する必要はねぇ。」
正論だ。私も、分かっている。
それでも、目を離す事ができなかった。
視線の先で巨人が──立ち止まっている。
いや。止まっている、というより……立ち尽くしている。
進まない。暴れない。こちらを追う様子もない。
ただ、壁のある方角を向いている。
「……気になる挙動でもあるのか。」
低く、探るような声。私は、周囲にも視線を走らせた。
さらに遠く。別の方向。
──いた。
同じだ。
複数の巨人が、同じように動かずに立っている。
その姿を見た瞬間、胸の奥で、何かが噛み合った。
(……これ……、)
思い出す。
──あの時の。
以前の壁外調査で見た、"違和感のある挙動"。
討伐対象にならなかった。だが後になって状況を一変させた、あの時と──
声には出さない。けれど、確信に近いものがあった。
私は、深く息を吸う。
「……リヴァイ兵士長。」
呼びかけると、視線がこちらに戻る。
「エルヴィン団長の元へ、行かせて下さい。」
一瞬、空気が張り詰めた。
戦況の最中。無駄な移動は、避けるべきだ。それでも。
リヴァイ兵士長は、私の顔をじっと見る。
数秒。その沈黙の間に、こちらの意図を測っているのが分かった。やがて──
「……行け。」
短く、それだけ。
理由は聞かれなかった。判断を、委ねられた。
「はい。」
即座に頷く。
「すぐに戻ります!」
私は即座に手綱を引き、進路を変える。
視線の先には、エルヴィン団長の位置。
近い。だからこそ、一刻も早く伝えなければならない。
私は踵で馬腹を蹴り、速度を上げた。
背後で続く討伐の音を、意識から切り離す。
今は──感じた"違和感"を、言葉にする役目だ。
それが今の私にできる最優先事項だと、はっきり分かっていた。
───────────────
はるか遠く。
隊列の進行方向から、わずかに外れた位置に──一 1体の巨人が佇んでいる。
動かない。こちらを追ってくる様子もない。徘徊しているわけでもない。ただ、立っている。
(……立ち止まっている……。)
視界の端に捉えたその姿に、胸の奥で、嫌な感触が広がる。
思い出す。あの時だ。
討伐対象にならず、異常とも断定されなかった。
だが結果的に──戦況を大きく揺るがした、あの挙動。
私は、無意識に手綱を握り直していた。
その時──遠くの方から一騎、こちらへ向かってくる影が見えた。
速い。迷いのない走り。
──ユニだ。
単独行動。それだけで、異常だと分かる。
ユニ自身の判断か、それともリヴァイの判断か。どちらにせよ──
リヴァイ班のユニが、ここまで来た。
それは、いつもの状況ではない。
馬が減速し、私の横に馬をつけた。
「エルヴィン団長!」
息は上がっているが、視線は揺れていない。
「……確信はありませんが、巨人の挙動に、違和感が……!」
私は、遠くの巨人へと視線を戻す。
やはり、動かない。
「……やはりか。」
静かに、そう言った。
「あの時と同じ、だな。」
ユニの表情が、一瞬だけ強張る。
「……はい。」
短い返答。
だがその声には迷いよりも、覚悟があった。
ユニの観察眼は、確かだ。
勘の鋭さも、入団してから何度も壁外調査を重ねる中で、十分に研ぎ澄まされている。
リヴァイも私も、それを何度も確認してきた。
そして何より、私自身も今、同じ違和感を感じている。
前線を駆け回り、間近でそれを捉え、わざわざここまで来た。
──違和感を、放っておく理由はない。
「……撤退する。」
即断だった。
ユニが、わずかに目を見開く。だが、否定はしない。
私は、信煙弾を取り出す。ためらいはない。空へ向けて、打ち上げる。
緑の煙が、静かな空に広がっていく。
「班へ戻れ。」
指示は、簡潔に。
「……はい!」
ユニは、力強く頷いた。
すぐに踵を返し、再び前線へと駆けていく。
その背を見送りながら、私は小さく息を吐いた。
まだ、何も起きていない。だが、起きてからでは遅い。
──判断は、揃った。
それでいい。
それが、私達の仕事だ。
───────────────
緑の信煙弾が上がってから、数分。
隊列を維持したまま状況を見極めていると──戻ってきた。
ユニだ。
馬を寄せ、こちらを見る。
「既に知ってると思うが、撤退だ。隊列に戻れ。」
「はい。」
それだけ。余計な確認も、説明もいらない。
ユニの観察眼は、確かだ。
勘の鋭さも、入団してから何度も壁外調査を重ねて、十分に研ぎ澄まされている。
さっきの様子を見る限り、あいつは──見過ごせない違和感を抱いた。
だから、エルヴィンの元へ行った。そしてエルヴィンは、その言葉を信じた。なら、俺も信じる。当たり前のことだ。
ユニは、隊列へ戻っていく。
俺は視線を前に戻し、短く息を吐いた。
──撤退だ。
判断は、間違っていない。
そう、思える。
2/2ページ