第4章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最初の野営を終え、隊列は再び動き出した。
夜明けから、それほど時間は経っていない。空は明るく、春の光がゆるやかに地表を照らしている。
馬の足音。装備の金属が触れ合う、乾いた音。
それらが、一定の間隔で続いていた。
──順調だ。
少なくとも、今のところは。
前方に現れた巨人は、想定通りの数。
リヴァイ班は流れるように対応し、無駄な動きはない。
「問題なし。」
前方から、短い報告が届く。
「了解。」
誰かがそう返し、隊列は速度を落とさずに進む。
私は馬上で、周囲に視線を巡らせていた。
地形。風向き。草の揺れ方。
リヴァイ兵士長たちが動きやすい位置を保ちつつ、死角になりやすい方向を、意識して見る。
こういう時は──何も起きないのが、一番いい。
そう分かっている。分かっている、はずだった。
だからこそ、視界の端に映った"それ"に自分の視線が吸い寄せられた瞬間、僅かな違和感を覚えた。
……遠い。
かなり離れた場所に、巨人の姿がある。
進路からも外れているし、今すぐ接触する距離じゃない。
普通なら、「後回し」で済ませる対象だ。
それなのに──
(……あの巨人……、)
私は、目を逸らせなかった。
特別な特徴があるわけじゃない。大きさも、歩き方も、よくある範囲。
なのに胸の奥が、じわりとざわつく。
理由は、分からない。
ただ、見落としてはいけない、という感覚だけが残る。
私は、無意識に背筋を伸ばした。
手綱を握る指に、少しだけ力が入る。
「……ユニ?」
近くから、声がかかる。
「はい。」
短く返事をして、視線は前に戻す。
今はまだ、誰かに伝えるほどの確信はない。
警戒を強めるほどの材料もない。
それでも──遠くで、その巨人が一歩、動いた。
ゆっくりと。だが、迷いのない動きで。
その瞬間、春の風が、妙に冷たく感じられた。
(……気のせい?)
自分に問いかける。
けれど胸の奥の違和感は、消えなかった。
私は、視線を外さない。
隊列は、何事もなかったように進み続ける。
報告も、警告も、まだ不要だ。
それでもこの感覚だけは、無視できない。
まだ誰も、この違和感が何を意味するのか、知らない。
けれど私は、はっきりと感じていた。
──これは、ただの勘じゃない。
説明はできないけれど、"見ておけ"と告げられているような、そういう種類の感覚だ。
私はもう一度だけ、遠くの巨人を確認する。
春の空の下、世界は何事もないように回っている。
──あまりにも、静かに。
その静けさがこれから壊れる前触れである事を、この時の私は、まだ言葉にできずにいた。