第3章
夢小説設定
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夜は、静かだった。
消灯の時刻は過ぎている。廊下には、もう足音もない。
俺は自室の椅子に腰を下ろしたまま、しばらく窓の外を見ていた。
半刻ほど前。
ユニの部屋の窓から、灯りが消えた。
……寝たな。
確認する必要もない事を確認してからでないと自分の部屋に戻れないあたり──我ながら、どうかしている。
机の上には、明日の装備表と、最終確認の書類。すべて、整っている。
配置。役割。指示系統。
誰が欠けても、誰が遅れても、判断が崩れないように。
──判断は、できている。
今回も、私情は挟んでいない。
ユニを特別扱いしない配置。危険度は、均等。誰かを守るために、誰かを犠牲にする選択もない。
兵士長として、正しい。正しく、抑えた。
……それなのに。
視線が、また窓へ戻る。
もう灯りは点かない。当然だ。明日は、早い。
寒くはないか。無理はしていないか。眠れているか。
──考える必要はない。
兵士は、全員同じ条件で出る。
それを徹底するために、俺はここにいる。
……分かっている。分かっている、はずだ。
それでも、抑えた。判断した。正しかった。
だが胸の奥に残るこの静かな違和感は、どこにも行かない。
俺は椅子の背にもたれ、目を閉じる。
壁外調査の前夜は、いつも、こんなものだ。
覚悟。確認。切り替え。
今までと、何も変わらない。
……変わらない、はずだ。
小さく息を吐く。
「……それで、いいのか。」
声に出したのは、その一言だけだった。
答えは、まだ要らない。
明日外に出れば、考える暇もなくなる。
判断する。動く。生き残る。
それだけだ。
俺は立ち上がり、灯りを落とす。窓の外は、暗い。
だがその暗さを、今夜はやけに強く感じた。
……寝るか。
そう心に決めて、肩の力を抜いた。
答えは、まだ出さない。
出発の夜に、それを決めるつもりはなかった。